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精神科医・和田秀樹が教える、健康長寿の人がやっている「2つの習慣」とは?

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ダイヤモンド・オンライン

写真はイメージです Photo:PIXTA

 

 うつ病というと心の病というイメージが先行するが、高齢者がうつ病になると、食欲不信や脱水を起こしたり、免疫機能が低下するなどして、からだの疾患リスクへと直結してしまうという。

 

うつ病予防に有効なセロトニンの分泌を促す習慣を、“高齢者専門”精神科医が解説する。

 

本稿は、和田秀樹『老いたら好きに生きる 健康で幸せなトシヨリなるために続けること、始めること、やめること』(毎日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

 

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● メンタルヘルスを良好に保てば がん細胞が減って長寿につながる

 

  私の本業は、高齢者を専門とする精神科医です。

 

  アンチエイジングや内科診療について書いたり話したりすることもありますが、アンチエイジングは自分の老化予防のため、内科はあまりに高齢者に対する治療がステレオタイプで、ひどいと思うので勉強を続けていますが、本職はあくまでも精神科医です。

 

  精神科医として高齢者の心の問題を取り上げているのは、高齢になるほど心と体の結びつきが強くなるためです。

 

要するに高齢になるほど、心が弱ると体も弱りますし、逆に体が弱ると心も弱ってしまうのです。

 

  うつ病に罹患して亡くなる際の原因は、若い人の場合、自死がほとんどですが、高齢者の場合、体力の低下が原因で亡くなってしまうということも珍しくありません。

 

なぜなら、高齢者がうつ病になると食欲不振になり、簡単に脱水を起こしてしまうからです。

 

  脱水というのは血液中の水分が足りなくなる状態で、血液濃度が高くなるため脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなりますし、脱水症状があると免疫機能も落ちて肺炎も起こりやすくなります。

 

その結果、最悪死に至ることもあり得るというわけです。

 

  精神神経免疫学という分野において、かなり前から、心の状態が悪くなると免疫機能が低下することは問題になっています。

 

  たとえばシドニー・ジズークという精神医学者(現・カリフォルニア大学サンディエゴ校精神科教授)の研究では、うつ病になるとNK(ナチュラルキラー)細胞の活性が半分程度に下がるとされています。

 

  このNKというのは体内にできた出来損ないの細胞を掃除してくれる免疫細胞で、この細胞の活性が高ければがんになりにくいとされています。

 

ところが順天堂大学医学部特任教授の奥村康先生らの研究では、この活性が40代になると20代の半分、70代になると10分の1に落ちるというのです。

 

  もともと免疫活性が低い高齢者ほど心の具合が悪くなることは危険です。

 

免疫活性がさらに下がり、そのダメージは大きいからです。

 

  アメリカのように死因の第1位が心臓病ではなく、がんで亡くなる人が多い日本では、メンタルヘルスを良好に保つことががん細胞を減らし、確実に長寿につながると私は信じています。

 

● 75歳を過ぎたら認知症よりも 「老人性うつ病」の方が危険

 

  メンタルヘルスの重要性について、もう少しお話しします。

 

  日本に限らず、世界中の統計で年をとるほど自殺率が上がっていることが知られています。

 

仕事を失うこと、親や配偶者との死別、自分がなんらかの障害(脳梗塞の後遺症など)を抱えることが増えるなど、高齢者には次々とストレスフルな状況が押し寄せますが、さらにいうと、年をとるほど神経伝達物質が減るのでうつ病になりやすいのです。

 

  世界各地の住民調査によると、うつ病は成人人口の5%程度の有病率ですが、65歳以上になるとそれが10%に上がります。

 

  前述したように、高齢者は心と体の結びつきが強くなるため、心が弱ると体が弱るように、体が弱ると心も弱ってしまいます。

 

  私が以前勤務していた高齢者専門の総合病院、浴風会病院で経験したことですが、高齢者の一般科(精神科以外)の入院患者の2割程度がうつ病に陥っていました。

 

当時の浴風会病院は300床の入院病棟に対して、精神科の常勤医が4人もいましたので、ちょっと心の具合が悪くなると精神科医が併診(内科や整形外科の主治医のほかに診療)していました。

 

高齢者をきちんと診る体制があれば、入院患者の2割程度にうつ病が見つかるのです。

 

  アメリカのいくつかの研究でも、高齢者が入院すると2割程度の患者がうつ病になるとされています。

 

  ということで、うつ病というのは高齢者にとっては身近な病気なのですが、その怖さは意外に知られていません。

 

うつ病が自殺につながることもあります。

 

自殺は65~69歳では死因順位の7位です(2022年)。

 

年をとるほどほかの病気で死ぬことが増えるので、70歳以上では死因順位のベスト10からはずれますが、自殺の死亡率はほかの年代より実は高いのです。

 

  自殺に至らなくても、意欲などがなくなってしまい、足腰が弱り、容姿もすっかり老け込むことが珍しくありません。

 

さらに記憶力も落ちるので、すっかりボケたようになってしまうのです。

 

  うつ病になると悲観的になり、自分が人に迷惑をかけているという罪悪感に苦しむことが多いものです。

 

また体がだるく、食べるものも味がしないという症状も続きます。

 

高齢者を長年診てきた私が、実は今後、最もなりたくないと恐れている病気がうつ病なのです。

 

● 太陽の光を浴びることが 「うつ」の予防に有用 

 

 うつ病になったら脳内のセロトニンを増やす治療を行うことから、うつ病になる前からセロトニンを増やしておくのは、うつ病の有用な予防といえるはずです。

 

セロトニンの材料はトリプトファンという「必須アミノ酸」ですが、肉や魚、大豆製品、乳製品、バナナなどに多く含まれています。

 

これらの食品を多めに摂ることで、ある程度うつ病の予防ができると考えられています。

 

  コレステロール値が上がることを心配し、肉類を敬遠する人がいますが、それが逆にうつ状態を悪化させると考えられます。

 

実はコレステロール値が高い人のほうが、うつになりにくいことも明らかにされているのです。

 

コレステロールにはセロトニンを脳に運ぶ役割があるとされていて、高齢になれば動脈硬化の予防より心の健康を優先させたほうがいいという考えから、私は肉を食べることをすすめています。

 

  もう一つ重要なのは、太陽の光を浴びることです。

 

  欧米では日照時間が少ない冬場(太陽が顔を見せない地域さえある)にうつ病が増えるといわれますし、高照度の光を当てる光療法という治療もあります。

 

それほど人間の体にとって太陽の光は重要なものなのです。

 

  太陽の光を浴びるとセロトニンの分泌が促されることは、もはや定説になっています。

 

さらにいうと、セロトニンは睡眠ホルモンのメラトニンの材料になるものですので、日光を浴びると眠りの質もよくなるとされています。

 

  もうひとつ、セロトニンを増やすとされているのが、リズミカルな運動です。

 

体を一定のリズムに合わせて動かすことに意味があり、動かす場所は咬筋と呼ばれる口の横の筋肉や、横隔膜など呼吸をする際に動かす呼吸筋など、どこでも大丈夫。

 

リズミカルな呼吸や咀嚼がセロトニンを増やすのです。

 

  本当にうつ病になってしまったら、このレベルのセロトニン増加法では不十分で、薬を飲んだほうがいいわけですが、予防の面でいえば、日常生活でセロトニンを増やすよう心がけることは、メンタルヘルスによい影響を与えるはずです。

 

● 高齢者には「引き算医療」 ではなく「足し算医療」を

 

  うつになったら薬など効かないと思われがちですが、高齢者では薬が効果を発揮することが一般的です。

 

  診察をしていると、脳梗塞の後遺症で片麻痺があり、手も震え、配偶者を亡くし、「私はもう生きすぎました」などと嘆く高齢者を前に言葉を失うことがありますが、うつ病と診断し、薬を処方すると「年をとるというのは、こんなものなのでしょうね」と笑顔も戻り、食欲も復活して驚くことがあります。

 

  新潟県の旧松之山町(現十日町市)では、新潟大学医学部精神科が中心になって自殺予防活動を行ってきました。

 

うつ病の程度についてスクリーニング検査をしたあと、診療所の医師や保健師からも情報を得て、うつ病の可能性のある人に面接を行い、診断を下します。

 

うつ病と診断された高齢者の治療方針、処遇は精神科医が決定し、保健福祉的ケアを保健師が担当しました。

 

  すると以前は10万人当たり434.6人であったこの町の高齢者の自殺率が、10年間の活動後には123.1人と激減したのです。

 

つまり、うつ病と診断されても、きちんと治療を受ければ自殺が7割以上も減るのです。

 

  実は、このうつ病という病気は若い人ほど心理的問題がからむとされ、薬が効きにくいといわれています。

 

日本うつ病学会でも25歳までは薬よりカウンセリングによる治療を推奨しています。

 

しかし、高齢になると脳内の神経伝達物質であるセロトニンが減少していくためか、薬が効きやすいのです。

 

  最近の研究では、うつ病を放置し、脳内のセロトニン不足が続くと、神経細胞に変性が起こりやすくなり、認知症にもなりやすくなるとされています。

 

  私は高齢になるほど検査の異常値を叩いてその値を落とす「引き算医療」より、ホルモンやビタミンなど体に足りないものを足していく「足し算医療」をすすめるようにしているのですが、脳内のセロトニンを増やすことは最も重要な足し算医療のひとつだと考えています。

 

和田秀樹

 

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