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“自分は特別”と思いこみ、対人関係でトラブルに「自己愛性パーソナリティ障害」にどう対処する?

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yoi

 

一人一人異なるパーソナリティの大きな偏りによって、本人や周囲に悩みごとが生まれてしまう「パーソナリティ障害」。

 

今回は精神科医の藤野智哉先生に、自分を特別視してしまいがちな「自己愛性パーソナリティ障害」の特徴や困りごとについて伺いました。

 

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「自分は特別」と思い込むことで弱さを補完する「自己愛性パーソナリティ障害」

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――今回取り上げる「自己愛性パーソナリティ障害」とは、どんなタイプですか?

 

  藤野先生 自分の重要性を、実際よりも大きく思い込むタイプですね。

 

本当は自尊心がもろくて自信がない部分を、「自分は特別だ」と思うことで補完しているので、ちょっとした批判にもすごく攻撃的になったりします。

 

人口の1~6%にみられるともいわれます。

 

 【自己愛性パーソナリティ障害の特徴】

 

 ●「自分は特別な人間だ」と強く思い込み、賞賛の言葉や特別待遇を求める

 

 ●相手の気持ちを尊重せず自己を優先することがある

 

 ●社会的なルールより、自分のルールを優先してしまうことがある

 

 ●自分以外の人を、自分より劣った存在、利用すべき存在として扱ってしまうことがある

 

 ●挫折に非常に弱い

 

 ●自己を強化するために、富や名声を追求し空想する

 

 ●自分より優れている人に対して嫉妬する

 

 ――例えば自分よりも実力や知名度がある人に対しては、どうなるのでしょうか。

 

 藤野先生 自分よりも力のある人がいる場合、それを利用しようと近づくこともあります。

 

自分より優れている人を素直に受け入れられない側面もありますが、そういう人たちのグループに入ってしまえば、「自分たちは特別だ」と自分を高められますから。

 

同じ理由で、「自分とその家族は特別だ」と考える人もいます。

 

 ――特徴を見ていると、対人関係でのトラブルが生まれやすそうですね。

 

 藤野先生 人間関係が保てなかったり、壊れたりしやすいので、対人関係では困りごとが非常に生じやすくなります。

 

自分では特別だと思っていても、実際は特別扱いされないことのほうが多いですよね。

 

このタイプにとって、そういった現実とのギャップがいちばんのストレスです。

 

 ですから、自分が否定されると、「自分の価値は彼らにはわからない/高みにいる人しかわからない」と合理化してしまう場合があります。

 

そこが根本的な偏りなのですが、プライドがつぶれないように正当化してしまうのです。

 

「自己愛性パーソナリティ障害」は、周囲との関係性によって変化していくことも

――それは、挫折に弱いということも関係しているのでしょうか。

 

  藤野先生 そうですね。

 

このタイプは、尊大な自尊心を持ちながらも打たれ弱いので、気分が沈みやすく抑うつ的になりやすい方もいます。

 

特にミッドライフ(40~50代)に入ると、性別を問わず、わかりやすい外見的な魅力は失われていくものですが、本人はそんな自分に耐えられなかったりします。

 

 ――でも、年齢を重ねて外見などが変化していくことは避けられませんよね…。

 

 藤野先生 そうなんです。

 

幼い頃は誰もが心のどこかに「自分は特別だ」という思いを抱きますが、成長するにつれて「自分は特別な存在ではなかった」と気づきます。

 

そして、少しずつそんな自分を受け入れていきます。

 

 自己愛性パーソナリティ障害の人は、基本的に相手を自分より下に見ることが多く、相手の気持ちを考えたり共感したりすることが少ないタイプです。

 

それでも、どこかで他者と深く関わることで「他の人にも対等に人権があって、自分と同じようなことを感じる」と気づける経験があると、少しずつ落ち着いていったりもします。

 

 ――時間はかかるかもしれないけれど、少しずつ変化する可能性もあるということですね。

 

 藤野先生 パーソナリティはある程度固定されますが、人間性は何歳になっても関係性によって変化します。

 

人って、自分が思っているよりも変わるものなんですよ。

身近な人が「自己愛性パーソナリティ障害」かもしれないと思ったら?大切なのは、相手を変えようとしないこと

――身近に当事者がいる場合は、どんなふうに接したらいいのでしょう?

 

 藤野先生 パーソナリティ障害は基本的に周囲が「巻き込まれる」ものです。

 

このタイプは自己愛のために人を利用することも多いので、周囲がどれだけ自己愛を満たしてあげようとしても、本人が満足できなければ否定されたり激昂されたりするし、見返りもありません。

 

ですから、実は上手な距離をとることが大事なんです。

 

 家族やパートナーが当事者で、それを変えてあげたいと思ったときに、先ほどお話ししたような「相手にも感情があること」「見返りや損得だけではないものがあること」などの気づきを与えられたらいいのですが、それには相当の覚悟が必要です。

 

日々巻き込まれ、消耗してしまうので。

 

 ――かといって、心理学的カウンセリングに連れて行こうとしても、おそらく本人は納得しないので難しいでしょうし…。

 

 藤野先生 「パーソナリティの偏りを変える」というのは、「今まで生きてきた大好きな自分が間違っていた」ということなので、それを本人が認めるのはすごく難しいと思います。

 

また、周囲が困るからといって、本人が困っていないものを「病気」として診断や治療する、ということがそもそも許されるのかという重大な問題でもあります。

 

 ――自分のパーソナリティを突然「障害だ」と言われても納得できませんよね。

 

本人が関心を持ってくれるような声がけの仕方はあるものでしょうか。

 

 藤野先生 「あなたのパーソナリティが原因だ」と伝えるのではなく、例えば「あなたが毎回そんなにつらい目にあって、しんどい思いをするのはなぜなのか、そこをひもとくためにも一度カウンセリングを受けてみるのはどう?」と、起きている状況にフォーカスするのはありだと思います。

 

そして、身近な人にできることはそこまで、ということも知ってほしいと思います。

 

 ――自分たちだけでサポートしようと思うのは、かえって危険ということでしょうか。

 

 藤野先生 先ほどもお伝えしたように、パーソナリティ障害は周囲が巻き込まれやすい疾患なので、身近な人が過介入すると完全に巻き込まれてしまいます。

 

そして、本人の意思で変わる可能性はありますが、人は他人を変えられません。

 

 他人を変えようとしないって、めちゃくちゃ大事なことなんです。

 

身近な人ほど必要以上に介入したり、言葉をかけたりして、疾患が悪化する可能性があるので。

 

 ――どこまでが自分にできることなのか、相手のためにもちゃんと線引きを持っておいた方がいいのかもしれませんね。

 

 藤野先生 まさしく相手のために、ですね。

 

相手のことを思うのであれば、専門家につなぐことに専念してほしいと思います。

 

 精神科医・産業医・公認心理師 藤野智哉先生 幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。SNSやメディアを通じ、障害とともに生きることで学んできた考え方と精神科医としての知見を発信。著書に『「自分に生まれてよかった」と思えるようになる本 心が軽くなる26のルール』(幻冬舎)、『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス)、『精神科医が教える 生きるのがラクになる脱力レッスン』(三笠書房)など、最新刊に『「誰かのため」に生きすぎない』ディスカヴァー・トゥエンティワンがある。 

 

構成・取材・文/国分美由紀

 

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