【以下ニュースソース引用】
パンの町に登場! 有名ホテルのシェフが立ち上げた「町のパン屋さん」/エトヌンク 代官山
「パンラボ」主宰
ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰。日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッド …
ホテルのシェフならではの美しい仕事
レベルの高いパン屋が軒を連ねてきたパンの町・代官山に、4月23日「エトヌンク」が新登場した。
パンの開発を務めるのは、“パンのおいしいホテル”として知られるパレスホテル東京の星敏幸シェフ。
ホテルらしいオーセンティックさは保ちつつ、しっかり“町のパン屋さん”をやっている。
長く伸びたカウンターに並んでいるのは、「ホテイチ」にある手土産用の高級パンではなく、食パンやバゲットやクロワッサンなど日常のパン。
皇居外苑を臨むホテルで腕を振るう星シェフに、突然“町のパン屋さん”の立ち上げを命じる辞令が下った。
「『僕でよければ全力で力になる』と話をしたんですよ。
大変なことは覚悟して、この仕事に臨みました。
僕にも、一度は自分の店を持ちたいという夢がありましたから」と星シェフ。
「日本を元気にしたい、小麦農家さんを元気にしたい」と、テーマはオール国産小麦。
職人気質の星シェフ、ハードルは高いほうが燃えるタイプだ。
「単一品種による国産小麦は(ロットごとに)ブレやすい。
職人仕事が要求されることは、国産小麦の最大の魅力でもあり、面白さでもあります」
全国の国産小麦を使いまくり、それぞれの個性にふさわしいパンと製法を見つけ出した。
パレスホテル東京が戦後すぐの創業時代から作りつづけるシグニチャー「コーンブレッド」。
ホテルでは、パウンドケーキ型の大きなサイズで作られていたが、代官山ではスコーンのようなワンポーションで。
星シェフが選んだ国産小麦は、意外にも菓子用粉ではなく、ハード系に使用される三重県産ニシノカオリ。
ぷわぷわっとした歯触り、しっとりした舌触り、それでいてほろほろとほぐれる心地よさ。
清らかな甘さは、北海道産のコーングリッツの香りを邪魔せず、噛(か)むごとに膨れ上がらせる。
さらに、後味にほのかに感じる、ナッツのような香りこそ、ニシノカオリの偉大なる個性だ。
「いろいろ試した中で、ニシノカオリが、いちばんパウンドケーキのようなケイク系の食感が出る。甘さもありますね」
チャバタには北海道産小麦キタノカオリを。
噛むとふにゅっ。なんてやわらかさ、しっとり感。
粒コーンからあふれだすコーンスープ。
それは、キタノカオリにあるコーンのようなニュアンスとの相乗効果で、甘い香りを高め合う。
「キタノカオリを使えばなんでもおいしくなる。
それぐらいのポテンシャルがあると思う。
水分をキャッチしてくれる感じです。クラストもできるだけ薄く、水分が飛ばないように焼いています。
今回こだわったのが、ガスオーブンを入れること。
しっとりと焼きあがるガスオーブンは国産小麦に合っています」
ばりっばりっ。
クロワッサンの破裂感覚がたまらない。
皮目の香ばしさと一転、ふにふにとやわらかな中身から北海道産バターらしい元気な甘い香りが。
それは国産小麦のコクによってさらにブーストされる。
まさにホテルのシェフならではの美しい仕事だ。
クロワッサンの上皮がめくれあがり、層が独立するほどボリュームが出ているのは、丁寧な折り込み(生地とバターを交互にはさみこむ作業)ゆえ。
軽さと小麦の風味を両取りしている。
「どれだけ小麦の香りがするクロワッサンを作れるのか?
国産バターの香りを残しつつも油っぽくせず、オーソドックスなクロワッサンのような軽い食感にもしたくて。
国産小麦をバランスよくブレンドし、折り数も相当試作して、3×4の12層にたどり着きました」
イートインでは数種類のサンドイッチがオンメニュー。
パン オ ルヴァンに野菜をのせたのが「春野菜のタルティーヌ」。
まるで春の野原だ。
ブロッコリー、いんげん、アスパラ、グリーンレモン、さらにはグリーンピースのソースが青い香りを撒(ま)き散らす。
そこに自家培養したルヴァンが土っぽい香りを放つと、春の草原の匂いそのものになる。
この盛り付け、この手の込みよう。一流料理人の手によるものだと思ったら、星さん自らのレシピ。
「ホテルにいると、実力あるシェフたちがたくさんおり、悩んでいると、こうした方がいいよああした方がいいよとアドバイスをくれる。
本来だったら料理として提供されるようなものを、パンの上に載せています」
パンブームと呼ばれるほどの、町のパン屋さんの快進撃によって、一流ホテルを手がける企業が町のパン屋さんを出店する時代に。
さらにそれは、ホテルの技術を町のパン屋さんへ還流させ、パン全体のレベルアップにつながるだろう。実によい流れではないか。
東京都渋谷区代官山町20番23号「Forestgate Daikanyama MAIN棟」内
03-5422-3604
9:30~18:30
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「このパンがすごい!」紹介店舗マップ(店舗情報は記事公開時のものです)