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認知障害と診断された大物俳優が語る「自分で認知症に気づく方法」ー認知症専門医も絶賛の心も持ち方
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『白い巨塔』('78年)をはじめ、テレビドラマや映画、舞台で活躍してきた俳優の山本學さん(87歳)が一昨年、「軽度認知障害」と診断された。
受診のきっかけは「幻視」が見えたことだったという。
いったい山本さんにはいま世界がどのように見えているのか。
そして病について、これからの人生についてどのように考えているのか。
山本さんの主治医で認知症治療の権威である朝田隆先生と対談してもらった。
山本學(俳優)× 朝田隆(認知症専門医) 前編記事「あの大御所俳優が告白『先生、ぼく認知症みたいなんですが、どうすればいいでしょう? 』」では俳優の山本學さんと認知症専門医の朝田隆さんの対談を通して、「怠ける病気」認知症に対する向き合い方を紹介してきた。
続くこの後編記事でも引き続き紹介していく。
怒りっぽくなるのは「脳の許容量」がないから
朝田 では「知・情・意」の情、すなわち感情についてはどんな変化を感じていますか?
山本 やはり怒りっぽくなりましたね。
他人の言っていることに忍耐力がなくなるというか、すぐに反論したくなるんです。
朝田 でもそれを意識して、反省されているのはいいことですよね。
山本 これは役者の教えが役に立ちました。歌舞伎のある役者さんに「人の芝居が下手に見えた時は、自分が下手になっている時だと思え」と言われたんです。
駄目な人ばかりに目がいって、上手い人に目がいかなくなったら、自分の感性が落ちているんだと。
同じように人の駄目なところばかり気になるのは、自分の「脳の許容量」がなくなっているからだということに気づいたんです。
朝田 ご自分で気づかれるのは素晴らしい。
普通は、なかなかそうはいきません。
だからこそ人とのコミュニケーションが必要なんです。
それもできるだけ身近すぎない人。
奥さんに「怒りっぽくなった」と言われて屁とも思わなくても、久々に会った娘さんなんかに「お父さん、怒りっぽくなったね」と言われると、相当効くみたいですよ。
人間は足から死んでいく
山本 やはり自分で意識して環境を変えていかないとダメですね。
僕は毎日1時間、6000~7000歩ほど歩くようにしています。
毎日歩くと決めていれば、出かける理由にもなりますからね。
朝田 医者の世界では「人間は血管から老化する」という有名な言葉があります。
でも100歳を超えて生きたきんさん・ぎんさんは「人間は足から死んでいく」とおっしゃったそうですね。
近年はウォーキングに代表される有酸素運動だけでなく、筋肉に抵抗を加える「レジスタンス運動」、いわゆる筋トレも大事だと言われるようになりました。
山本さんにも、うちのクリニックのプログラムでやっていただいてますね。
山本 たとえば椅子に腰掛けて、足を宙に浮かせて止めるんです。
そうすると足が震えて痛くなってくるじゃないですか。
その痛みに集中して「脳で感じてください」と言われるんです。
現代人は脳から命令して手足を動かすことばかりやっている。
これはその逆で、手足からの刺激を脳に送る。
やってみると頭がスッキリするんですよ。
朝田 神経が痛みを感じて、それが脳に刺激を与えて活性化させると言われています。
靴を揃えて、便所掃除して、「生ききる」
山本 やっぱり先に身体を動かすことが大事なんですね。
人間、晩年になると認知症になることとか、死ぬことを恐れて、くよくよ悩んで内向きになっていきますから。
でも父と母、妻の3人を看取った私から言わせてもらうと、死は日常だし、認知症になるのは当たり前のこと。
ご飯を食べるのと一緒で、食べられなくなったら死ぬ、それだけです。
朝田 何か「無常観」にも近い考え方ですね。
人生、いっときとして同じ瞬間はない。いつ来るかわからないという意味で、死は日常の中にある。
山本 だから死ぬことなんか考えてないで、認知症になっても靴を揃えて、便所掃除して、「生ききる」んです。
朝田 またもや名言が出ましたね。
山本 僕だってそのために、朝田先生のクリニックに週3回も通って、筋トレしてるわけだから。
朝田 正直、あのきついトレーニングを週3回はやりすぎなんです。
山本 あれ、前にもそんなこと言われましたっけ。忘れちゃったな。
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やまもと・がく/'37年大阪府生まれ。俳優座養成所を経て、'59年劇団新人会に所属。舞台『雁金屋草紙』『晩菊』で第18回菊田一夫演劇賞受賞。テレビや映画でも活躍
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あさだ・たかし/'55年島根県生まれ。
東京医科歯科大学客員教授、筑波大学名誉教授、医療法人社団創知会理事長。アルツハイマー病を中心に認知症の基礎と臨床に携わる ---------- 「週刊現代」2024年5月11日号より 【もっと読む】突然、看護師が「遺体の肛門」に指を突っ込んで…人が「死んだあと」に起こる「意外なやりとり」
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