【以下ニュースソース引用】

上手に老いるには「嫌な人と付き合わなきゃいい。負担になることは避けたらいい」【養老孟司×和田秀樹】

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PHOTOGRAPH=杉田裕一

 

『80歳の壁』著者・63歳和田秀樹が、“長生きの真意”に迫る対談連載企画「医者ではなく、大先輩に聞け!」。

 

初回ゲストは解剖学者・86歳養老孟司。

 

『バカの壁』と『80歳の壁』。

 

記録的な大ヒット本を生んだ二人に共通する人生哲学とは。

 

話の随所から、楽に生きるためのヒントが飛び出てきます。

 

その第2回。

 

  【写真】元気に長生きするには、「無理しない。逃げる!」【養老孟司×和田秀樹③】

 

同調圧力という日本の病巣

和田 養老先生はお母様もお医者さんですか?

 

 養老 そうです。

 

父が戦争中の昭和17年(1942)に亡くなり、母が開業しました。

 

 和田 当時としては珍しいというか先進的で自立されてます。

 

 養老 誰もが生きるのに必死でしたから。

 

先ほど日本の同調圧力の話が出ましたが、僕は無理もないんじゃないかと思うんです。

 

つまり物理的な問題だと。

 

人が住める「可住面積」で人口密度を測ると、鳥取や島根がヨーロッパの平均なんです。

 

 和田 いわゆる過疎地ですね。

 

 養老 はい。

 

日本では過疎と言われる所が、ヨーロッパなら普通なんです。

 

それだけ人が寄り集まっているってことです。

 

こうなると、お互いの顔を見ながら調整しなきゃならないでしょ。

 

誰か一人が違うことしてると迷惑になるからね。

 

そうやって長い間に同調圧力みたいなものになっていったのだと思うんです。

 

 和田 僕はアメリカのカンザスに留学していましたが、隣の家まで5キロくらい離れていたりする。

 

アメリカはクルマ社会だからなんとかなるけど、日本では過疎の地域でも集落を作りたがります。

 

民族性なんでしょうね。

 

 養老 みんなで協力した方が都合はいいですから。

 

とくに水田耕作を千年以上も続けてきているので。

 

忖度とかも、仕方ない面があるのかもしれません。

 

ただ、時代は変わったのだから、いつまでもそれにこだわってるのはおかしいと思うんですよ。

 

 和田 仲間外れの恐怖感がすごく強いのだと思います。

 

僕は子供の頃から人と馴染めなくて、仲間外れにされても気にしなかった。

 

だから好きに生きてこられたような気がするのですが。

 

でも東大医学部でも村意識みたいなものを感じたんですよね。

 

小中高と物凄く勉強できて周囲から浮いてただろう人なのに、東大医学部村に入ったら、そこにしがみつく。

 

落ちこぼれたくないって雰囲気がありましたね。

 

養老先生の時代は? 養老 同じですよ。

 

僕が基礎医学を専攻したのも、それが理由の一つです。

 

学生の頃、東大病院で若い医師とすれ違うと、全員機嫌が悪いんだよね。

 

ちょっと上の先輩たちですよ。

 

だからもうこんな機嫌の悪い所は嫌だと思って(笑)。

 

 和田 序列というか。教授の機嫌を損ねたら飛ばされる、ということに神経を尖らせている。

 

 養老 そういう仕事なんだろうと思って基礎医学に行ったんです。

 

みんな辛抱して働いていたんだと思う。

 

僕が「辞める」と言ったらうらやましがられましたよ。

 

「お前は辞められるからいいよな」ってね。

 

いいなと思うなら辞めればいいじゃないか、と思うんだけど、それができないんですよ(笑)。

 

嫌なら逃げればいい

和田 医師免許があるのだから辞めて違う道を探せばいい。

 

 養老 そう。なのに辞めない。

 

 和田 東大病院の七不思議みたいなものですね。

 

辞めて開業すれば、一国一城の主として上に気を遣わず医療ができるのに。

 

だけど私立と比べて東大は開業医が少ない。

 

落ちこぼれとか負け犬っていう雰囲気がある。

 

 養老 というより向いてない。

 

母がよく言ってましたね。

 

母は女子医大(当時は女子医学専門学校)でしたけど「医師会にも東大出身の開業医が何人かいるけど、だいたい流行らないのよね」と(笑)。

 

 和田 営業力とかコミュニケーション能力が低いんですよね。

 

流行っている病院の先生って、めちゃくちゃ愛想のいい人が多いですから。

 

 養老 やっぱり好きなんですよ。

 

そうやって人と付き合うことが。

 

僕は不向きだけど。

 

 和田 僕もほぼ向いていない人間です(笑)。

 

養老先生は、お母様が開業医だったわけで、後を継ぐみたいなプレッシャーはなかったんですか?

 

 養老 全然ないですよ。

 

 和田 縛られなかったんですね。

 

そこはやはり今の養老先生の自由な生き方に繋がっているのかもしれません。

 

 養老 自覚はないけど(笑)。

 

 和田 今回のテーマに話を戻すと、やはり上手に老いるためには養老先生が仰る「人間のことに一生懸命にならない」ということは大事ですね。

 

仲間外れを恐れる側も人を阻害する側も、結局は、人を縛り自分を縛って生きている。

 

見直してもいいかもしれません。

 

 養老 ただ、そういうのが好きな人もいますから。

 

だから人に一生懸命になりたい人は、そうすればいい。

 

嫌な人は付き合わなきゃいい。負担になることは避けたらいいんです。

 

 和田 養老先生は子供の時、頑張ることの無意味さみたいなことに気付かれたし、僕は元々が人とうまく関われない人間です。

 

そんな僕でも、人間が大きく変わる出来事がありました。

 

 養老 それは? 和田 僕が精神科を選んだ理由は人を殺さない科だと思ったからです。

 

ところが浴風会という病院に就職してすぐ、患者さんが病棟で自死をした。

 

これは相当に堪えましたね。

 

精神科でも人は死ぬんだと。

 

以来、医者という仕事にかなり真面目になりました。

 

 ※3回目に続く

 

 養老孟司/Takeshi Yoro

 

 1937年鎌倉市生まれ。東京大学医学部を卒業後、解剖学教室に入る。東京大学大学院医学系研究科基礎医学専攻博士課程を修了。東京大学医学部教授、北里大学教授を歴任。東京大学名誉教授。『ものがわかるということ』など著書多数。

 

 和田秀樹/Hideki Wada

 

 1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。立命館大学生命科学部特任教授を経て、「和田秀樹こころと体のクリニック」院長に。老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。

 

TEXT=大城 稔

 

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