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養老孟司「人間のことに一生懸命にならない」。『80歳の壁』著者・和田秀樹が唸った“不良患者のススメ”

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PHOTOGRAPH=杉田裕一

 

養老孟司『バカの壁』と和田秀樹『80歳の壁』。

 

記録的な大ヒット本を生んだふたりに共通する人生哲学とは――。

 

話の随所から、楽に生きるためのヒントが飛びでてきます。

 

  【写真】上手に老いるには「嫌な人と付き合わなきゃいい。負担になることは避けたらいい」【養老孟司×和田秀樹】

”元気に長生き”の極意に迫る

和田 僕は養老先生には、一生頭が上がらないんです。

 

僕本当に出来の悪い学生で、臓器とか神経の名前が覚えられない(笑)。

 

でも養老先生は試験の前に「ここを出すぞ」って教えてくださったんですよ。

 

おかげで解剖学の単位が取れて進級もできた。

 

 養老 (笑)。

 

落とすともう1回試験しなきゃいけないでしょ。

 

それはとても面倒くさい。だから教えるんです(笑)。

 

 和田 おかげでスタート地点を生き延びて医者になれました。

 

ところで、今回のテーマが「長生きをより楽しく」なんですが、真っ先に思い浮かんだのが養老先生でした。

 

失礼ながら「老後の見本」みたいな方ですから。

 

 養老 (笑)。

 

 和田 世の中がどんどん窮屈になるなかで、養老先生は今でもタバコを堂々と吸う。

 

そして虫を捕りに世界各地に出かける。とても自由で素敵に見えます。

 

 養老 タバコを吸うのも大変です。

 

ホテルでも決まった場所に閉じこめられる。

 

だけどタバコって「今から吸います」というんじゃない。

 

なんとなく吸うものなんですよ(笑)。

 

 和田 禁煙したことは?

 

 養老 ありますよ。

 

ただね、僕はやめると太る。

 

1回やめると5キロ。

 

3回やめたので15キロ増えて、70キロが最高でした。

 

若い頃は、55キロが標準でした。

 

3年前にあまりにも体重が減るから病院に行ったら糖尿だった。

 

で、救急で入院してステント入れられ、半年拘束されました。

 

まあ入れても入れなくても、生活の状況は全然変わりません。

 

担当医には悪いから、そんなことは言わないけどね(笑)。

 

 和田 僕も糖尿病の積極的な治療には懐疑的です。

 

自分が糖尿病になり複数の薬を試しましたがどれも効果がない。

 

一番効果があったのは歩くことでした。

 

一時期、医師の言いつけを守り、血糖降下薬を飲んだんですが、僕の場合は頭がぼーっとする。

 

糖分は脳の唯一の栄養素なんだから、血糖値が高いほうが頭は冴えるのは当然です。

 

脳の専門家として、養老先生はどう思いますか? 養老 血糖値が高いと頭が冴えるかはわからない。

 

だけど低くなるとダメなことはわかります。

 

それと、医者の言うことを聞かないろくでもない患者というのは同じです(笑)。

 

 和田 あまり無理して薬とかを使うよりは、数値が高くても維持するのがいいと思ってます。

 

 養老 普通に生活してりゃいいんでね。

 

ただ、世の中が変わって甘いものが美味しくなった。

 

油断するとやたら食べちゃうから控えるようにしています。

 

人にも自分にも縛られない

和田 長年アクティブでいる秘訣みたいなものはありますか?

 

 養老 ひとつは、人間のことに一生懸命にならない、ですね。

 

ひとりでいることが悪いように言われるけど、年寄りはひとりでいるほうが楽なことも多いんです。

 

僕の場合、愛猫のまるが死に、親しい友達もだいたい死んでます。

 

それを寂しいと思っても仕方がないし、今さら新しい知人をつくっても疲れるだけでね。

 

 和田 高齢者は家族と同居しているほうが自殺率はずっと高いんです。

 

統計で明らかになっているのですが知られていません。

 

多くの人は「ピンピンコロリで死にたい」って言うけど、それは元気な人が突然倒れて死ぬってことです。

 

で、後日発見されるのが、いわゆる孤独死です。

 

 養老 歴史を見ると、西行も鴨長明(かものちょうめい)も松尾芭蕉も、死ぬ時は傍に誰もいなかったんじゃないかな。

 

孤独死ですよ。

 

 和田 日本はやたら同調圧力が強くて、孤独を恐れる風潮もそのひとつですよね。

 

でも周りの空気に合わせるほど、自分で自分の首を絞めることになる。

 

 養老 ひきこもりが多いのも周りがうるさいからでしょう。

 

社会の病気みたいなものですね。

 

 和田 とはいえ養老先生は社会的な仕事を続けています(笑)。

 

 養老 関わり合わないほうが面倒くさい。

 

多くは頼まれ仕事で、それを断るのが面倒なんです。

 

 和田 引き受けるのも面倒だし、断るのも面倒(笑)。

 

 養老 だから長く続きそうな仕事は最初に考えます。

 

途中で嫌にならないかな、とかね。負担にならないようにするんです。

 

 和田 年をとってからですか?

 

 養老 いや、昔からです。

 

僕は小学校2年で終戦を迎えたから。

 

戦中、大人は頑張ったでしょ。

 

若者も子供も渦に飲みこまれた。

 

国民全員が一億玉砕の雰囲気だったのに終戦でコロッと変わった。

 

ああいうのはやめたほうがいいと、肌でわかったんです。

 

 和田 養老先生が臨床ではなく、解剖に行かれたのも、人に合わせるのを嫌ったからですか?

 

 養老 患者さんを診るのが嫌なんだよ。

 

人間ですからね。

 

痛いの痒いのってうるさいでしょ。

 

で、時には死なれちゃう。

 

死なれるのが嫌なんです、僕は。

 

患者さんに一生懸命になればなるほど死なれると堪えますから。

 

 和田 人に縛られないということは、自分を縛らないことなんですね。

 

 養老孟司/Takeshi Yoro

 

 1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士、解剖学者。東京大学医学部卒業後、解剖学室へ。1995年東京大学医学部教授を退官後は、北里大学教授などを歴任。ベストセラー『バカの壁』のほか、『ものがわかるということ』など著書多数。

 

 和田秀樹/Hideki Wada

 

 1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て現職。30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。

 

TEXT=山城稔

 

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