【以下ニュースソース引用】
「人はなぜたき火にひかれるか」…キャンプ好き脳科学者が体当たり検証、癒しや脳覚醒を確認し書籍化
配信
人はなぜたき火にひかれるのか――。
キャンプを愛好する九州大の脳科学者が、たき火が脳に与える影響を科学的に検証したユニークな本を出版した。
キャンパス内で炎を眺めながら、自らを実験台にデータを解析。
たき火に癒やしだけでなく、脳を覚醒させる効果もあることを導き出した。
「たき火が思索を促すことを示した世界初の研究」としている。
(江口朋美)
出版したのは、九州大基幹教育院准教授の岡本剛さん(48)(システム神経科学)。
2022年4~6月と10~12月、福岡市西区の九大キャンパス内で計14回、実験した。
自分の頭に19個の電極を付けて脳波を測定。
「眠気」「リラックス」「疲労感」などの心理状態や、「炎の大きさ」「匂い」「音」といった環境評価の合計19項目を、5分おきに3~7段階で紙に記録した。
1回当たり32分間行い、たき火がある場合とない場合を比較した。
その結果、脳波では脳が活発な状態にある時に小さくなる「アルファ波」の低下を観測。
心理面ではリラックス感や快適感が上がり、眠気や疲労感が下がったことを確認した。
気温や風速、体感温度なども含めて分析し、たき火は考え事をするのに向いていると結論づけた。
岡本さんは「炎の暖かさや揺らぎに安心感を覚える一方、大きな炎や火の粉、冬の寒さは緊張感を伴う。
これらが重なり、癒やされつつも頭がさえる状態になるのでは」と考察する。
脳科学の分野でエアコンの風の快適性やにおいに関する研究に取り組んできた岡本さん。
新型コロナウイルス禍でアウトドア人気が高まる中、お笑い芸人・ヒロシさんのソロキャンプ動画を見て、キャンプにはまりだした。
キャンプでたき火を楽しむうち、「人はなぜたき火にひかれるかを脳科学的に調べたい」と思うようになった。
ただ、研究資金の確保は難航。
キャンパス内での実験許可を大学から得たり、福岡市消防局などに注意点を確認したりするのに1年かかった。
対象実験のため、冬場にたき火がない中、30分以上じっと座り続けると寒さで手足がかじかんだ。
今回の実験について、脳波解析に詳しい佐賀大理工学部の杉剛直教授(生体医工学)は「1人分のデータということは差し引かないといけない」としながらも、「実験手法やデータの取り方、解析方法がしっかり吟味されている。
結果も納得できる、非常におもしろい研究」と評価する。
ヒロシさんも本の帯に推薦文を寄せた。
岡本さんは「たき火が好きな人、脳科学に興味がある学生など幅広い層に読んでもらえれば。
たき火の効果を生かした交流の場づくりにも取り組みたい」と構想を膨らませる。
「焚(た)き火の脳科学 ヒトはなぜ焚き火にハマるのか」(九州大学出版会)は四六判248ページ、税別1600円。
原因火災 年3000件
たき火を楽しむ際には火事にならないよう十分な注意が必要だ。
総務省消防庁によると、「たき火」が原因となった火災は2022年には3105件あり、「たばこ」に次いで多かった。
福岡市内でも過去5年で、たき火から火がテントに燃え移る事例が発生しており、市消防局は「周辺環境や気象状況に注意し、火から目を離さないようにしてほしい」と呼びかける。
同市を含む多くの自治体では、火災と間違われやすい煙や炎を発生するたき火を行う際には、事前に管轄の消防署に届け出ることを条例で定めている。
岡本さんは実験を行うにあたって「安全に焚き火を行うためのガイドライン」をまとめ、著書で紹介。▽火の粉が飛ぶ範囲を予想して立ち木の近くは避ける▽消火用具を用意する▽「火災気象通報」が出ていない――などを挙げている。
【関連記事】