【以下ニュースソース引用】

初海外の彼とのセブ島 宇賀なつみがつづる旅(53)

ESSAY

 

宇賀なつみ

宇賀なつみ

 フリーアナウンサー

東京都出身。テレビ朝日「報道ステーション」の気象キャスターとしてデビューし、「グッド!モーニング …

 

 

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。

 

見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。

 

「小さな彼」を連れたセブ島の旅では、宇賀さんにも初めての経験があったそうです。

 

「初めての旅 セブ」

初めての海外は2歳だった。


叔母の結婚式に参列するため、ハワイに行ったらしい。


もちろん記憶はないけれど、


チューリップ柄のドレスを着て、教会の庭で遊んでいる写真を、


よく両親に見せてもらった。

 

3月の終わりに、友人とその息子と3人でセブ島に行った。


アジアのリゾート地の中でも割と近いし、


のんびり海を眺めながら、ゆっくりするにはちょうど良いと思った。


今年2歳になる彼にとっては、初めての海外だ。

 

久しぶりに会った彼は、少し不安そう。


春休みを迎え大にぎわいの空港に、戸惑っているようだった。

 

卒業旅行らしき集団も多い。


彼らの中にも、初めて海外に行くという人はいるだろう。


大声ではしゃぐ姿を見て、こちらもうれしくなる。


いつだって、若者は元気な方がいい。

 

飛行機の中では、彼はぐっすり眠ってくれた。


その間は大人同士の会話ができる。


無事に入国審査も終えて、ホテルにチェックインする頃には元気になり、


早速着替えてプールデビューをした。

 

初海外の彼とのセブ島 宇賀なつみがつづる旅(53)

 

最初は怖がっていたけれど、少しずつ慣れて、


バケツやコップで水遊びを楽しんでいるようだった。


その横で私はいつものように、泳いだり休んだりしながら、


パソコンで細々した仕事を片付ける。

 

熱すぎず冷たすぎない、心地よい風が抜けていった。


そのうち日本にも夏がやってくる。


今年はどんな夏になるだろうか。

 

なかなか自分で歩こうとせず、抱っこばかりねだっていた彼も、


夜になる頃にはだいぶ慣れてきたようだ。


色鮮やかに咲く花や、小さな虫たちに、


理解できるようなできないような、彼なりの言葉で、何かを語りかけている。

 

3人で川の字になって寝た翌朝、


ビュッフェ会場で彼は、驚くほど食べた。


同じくらいの年齢のオトモダチがいると気になるようで、


恥ずかしそうにしながら見つめ合っていた。

 

子連れだと、いつもと違う旅になる。


無理に予定を詰め込まないし、


ゆっくり時間が流れていくので、一日が長い。


普段は気がつかないようなものが、自然と目に入ってくるから面白い。


私にとっても、初めての経験になった。

 

初海外の彼とのセブ島 宇賀なつみがつづる旅(53)

 

毎日、特に何も起きないぜいたくなバカンスも、いよいよ最終日。


海沿いのレストランで、のんびり食事をした。


宿泊客もスタッフも、小さな彼を見つけると手を振ってくれる。


世界中どこにいても、子供は大人を笑顔にする。

 

レストランの奥で、カラオケを楽しむ若者がいた。


テイラー・スウィフトやジャスティン・ビーバーなど、


誰もが知っている曲を、皆で合唱している。

 

次はブルーノ・マーズだ。


すると、小さな彼は急に椅子の上に立って、全身を揺らして踊り始めた。

 

思わず噴き出してしまうくらい、ノリノリ。


誰かに教わったわけでもないのに、


周りの目なんて気にせず、気持ち良さそうに音楽に身を任せていた。

 

初めてにかなうトキメキは、なかなかない。


彼にとっては、大冒険だった4日間。


きっと忘れてしまうだろうけど、いつか写真を見て思い出してほしい。

 

今年で38歳。


私もまだまだ、初めてを求めて旅をしよう。

 

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