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膨大な資料が突然届き…開業医を困らせる「患者家族」の振る舞いとは?

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ダイヤモンド・オンライン

写真はイメージです Photo:PIXTA

 

 難治性の疾患を抱えた患者の家族にとって、現在のはかどらない治療にもどかしさを感じる場面は多々ある。

 

そんなときは、別の医師に意見を求めたくなるものだが、「セカンドオピニオン」にあたっては、気をつけるべき点がいくつかあるようだ。

 

※本稿は、松永正訓開業医の正体 患者、看護師、お金のすべて』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋・編集したものです。

 

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● 意見を求められるのは ほぼ助からないケースばかり

 

  セカンドオピニオンを求められて、1回だけ意見を述べて終了した患者家族もいたが、一方で、治療の全経過を母親がリアルタイムでうちのクリニックにファックスしてくることもあった。

 

その患者のデータはかなり膨大でファイルケースに収めて、院長室の書棚に今でも保管している。

 

そういう患者家族は強烈に今でも覚えているし、忘れようがない。

 

  そもそもセカンドオピニオンを求めて千葉まで来るのだから、治療がうまくいっていない症例がほとんどだった。

 

小児固形がんは再発するとほとんど助からないし、標準的治療を行っても腫瘍が消えない場合、逆転の一手というのはまずない。

 

がんの治療の目標は、「救命」と「延命」と「生活の質の向上」の三つである。

 

だからぼくの意見は後者の二つにフォーカスが当たっていた。

 

  すると、半年とか、1年とかすると訃報が届いたりする。

 

開業医になって子どもの死の報せを聞くのは本当につらい。

 

ぼくは大学病院時代におよそ100人の子どもの死に接してきたが、開業医になってから接する死の方が精神的にはきつかった。

 

  結局ぼくにとってセカンドオピニオンは、人助けであり、また自分が頼られるという自己肯定のプロセスだったように思う。1回に3万円もお金を取らなくて本当によかった。

 

そんなことをしていたら、自分は商売人になってしまっていただろう。

 

● 電話も手紙もなくいきなり封書で 膨大な資料が届くのは困る

 

  それを考えると、普段うちのクリニックに「先生のセカンドオピニオンを聞きたくて」と受診する患者家族に「本当は保険診療じゃないんですよ」と心の中でつぶやく必要はないのだろう。

 

かかりつけ小児科医は何でも相談屋だから、そういった患者家族のためにぼくらは存在しているのかもしれない。

 

  ただちょっと言っておきたいのは、この何年かの間にセカンドオピニオンを求めていきなり封書を送りつけてくる家族がいるのだが、それはちょっとどうかと思う。

 

せめて電話をしてからとか、「セカンドオピニオンを受けてくれるか」と手紙で問い合わせをしてからならば分かる。

 

ところがある日何の前触れもなく、レターパックに膨大な資料を詰めてクリニックに送ってくる人がいる。

 

  当然内容はハードで、小児がんの難治症例や先天性疾患の難しい病気だったりする。

 

いや、それはどうなのかな。自分の子どもが生きるか死ぬかの状態ならば、電話の一本、あるいは手紙の一通も書いて、まずセカンドオピニオンを受けてくれるか聞くものじゃないかな。

 

ぼくが返事しなかったらどうするのだろうか。もちろん謝金を受け取ったことは一度もない。

 

  うーん、やっぱりこれもぼくの使命みたいなものなのだろうか。

 

で、結局膨大な資料をすべて読み込み、返事を書いてしまう。

 

若干複雑な気持ちが残らないわけではないが、やはり人のために役立てるなら……という思いになる。

 

妻に意見を聞いたら、「それは頼りにされているってことでしょ?頼られるうちが華だよ」と諭された。

 

  最近は華が去ったのか、セカンドオピニオンの数は年々減っている。特に小児がんに関する問い合わせはほとんどなくなった。

 

今はもう完全に第一線から退いているので、お願いされてもちょっと無理なので、これでよかったと思っている。

 

● 大学病院から開業医に紹介状? 変わりゆくセカンドオピニオン

 

  ただ、やはり本の影響は大きいのか、『発達障害に生まれて』(中公文庫)を書いたあたりから、発達障害に関する問い合わせが増えている。

 

先日も東京から患者家族がお見えになって1時間話をした。

 

ぼくは児童精神科医ではないので、専門的な話はできないのだが、最低限の助言をするだけでも1時間はかかる。

 

  東京都にはいくらでも専門の開業小児科や病院がありそうなものだが、重い自閉症の子どもを抱え、どこへ行って何をすればいいのか全然分からないという医療難民のような人たちがいることに意外な気がする。

 

情報が溢れすぎると、却って自分のほしい情報がその他雑多な情報に隠れて見えなくなってしまうのだろうか。かかりつけの先生はどうしているのだろうか。

 

  セカンドオピニオンという言葉が広く一般の人に知られるようになって20年くらいだろう。

 

確かに当初はセカンドオピニオンのハードルは高く、「保険は利きません!1回3万円です」の世界だったろう。

 

でも今は自然と垣根が低くなっている時代に入ってきているのかもしれない。

 

そう言えば、2年くらい前に大学病院から紹介状が届き、先天性染色体異常の赤ちゃんに関して「先生の意見を聞かせてあげてください」とお願いがきた。

 

  これも考えてみれば、セカンドオピニオンの紹介であろう。それも大学病院から開業医へ……である。

 

確かにぼくが地元病院でがんの診断を受け、セカンドオピニオンを求めて東京の国立がん研究センター中央病院に行けば何万円も取られるだろう。

 

だけど、今の時代は、開業医が患者の身近に存在していて、杓子定規(しゃくしじょうぎ)の「保険医療の利かないセカンドオピニオン」などという高いハードルはないのかもしれない。

 

  セカンドオピニオンを巡る患者家族と開業医の関係はこれからも変化を遂げていくのではないか。

 

ただ、まったくの初診で、お互いの顔も知らない関係で、いきなり意見を求めるのは少し考え直す余地があるように思う。

 

別にぼくはお金がほしいと言っているわけではないので、最低限のコミュニケーションは取りましょうとお願いしたい。

 

松永正訓

 

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