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飲酒、喫煙より健康に悪影響…「孤独・孤立感」は人と一緒にいるほうが増幅してしまうという意外すぎる真実

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プレジデントオンライン

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simpson33

 

孤独・孤立化は飲酒、喫煙、肥満、運動不足よりも健康にマイナスの影響があることがわかっている。

 

ではどうすれば孤独・孤立化を防げるのか。

 

拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「最新の研究では孤独感が強い人ほど、人との交流が逆効果になる可能性が示された。

 

孤独の問題は一筋縄ではいかず、慎重な対応が必要になる」という――。

 

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■他者との交流で孤独は改善されるのか 

 

 私たちの住む社会は、昔と比較してさまざまな面が良くなっています。

 

しかし同時に、新たな問題も出てきています。

 

  その1つが人々の孤独・孤立化です。

 

  日本では高齢化による独居世帯の増加や、コロナウイルスの感染拡大によって注目を集めました。

 

前回の記事でも紹介したように、実は孤独・孤立化は、飲酒、喫煙、肥満、運動不足よりも健康にマイナスの影響が大きいことがわかっています(*1)。

 

背景には、孤独を感じると体内で炎症反応やホルモンの過剰分泌が発生してしまい、体のバランスが崩れてしまうというメカニズムがあります(*2)。

 

また、これ以外にも孤独・孤立を感じるほど、冠動脈疾患や脳卒中の発症が増えるという研究もあります(*3)。

 

  社会的な動物である人間にとって、孤独・孤立化は健康への脅威であり、私たちが直面する新たな課題の1つだと言えるでしょう。

 

  この孤独・孤立化への対処方法として真っ先に思いつくのは、他者とのつながりを持ち、交流を増やすことです。この答えに多くの人が「そうだよね」と納得するかもしれません。

 

  しかし、実は最新の研究で「孤独・孤立によるマイナスの影響は、他者との交流で改善されない場合もある」ことがわかってきました。

 

 ■他者との交流で孤独・孤立感が和らぐ=バッファー仮説

 

  「他者との交流で孤独・孤立によるマイナスの影響が本当に緩和されるのか」という疑問について検証を行ったのは、オランダのティルブルフ大学のオルガ・スタヴロワ准教授とアメリカのエモリー大学のドンニン・レン氏の研究です(*4)。

 

  この研究では2つの仮説を提示しています。

 

  1つ目が「バッファー仮説」というものです。

 

これは、他者とつながりを持ち、交流することで、孤独・孤立感のマイナスの影響を緩和できると考える仮説です。

 

  これまでの研究から、他者とのつながりや交流は、人々の幸福度や生きがいに大きな影響を及ぼすことがわかっています(*5)。

 

家族や友人との良好な人間関係は、幸せの実感や生きがいへとつながっていくわけです。

 

また、他者とのつながりや交流は、健康や長寿だけでなく、さまざまなストレスを緩和する効果があることもわかっています(*6)。

 

例えば、学校や職場で嫌なことがあったとしても、友人・家族・同僚との交流で、そのストレスが忘れられるといった具合です。

 

  このように他者とのつながりや交流は、私たちの心理面にプラスの影響があります。

 

このため、孤独・孤立感のマイナスの影響を他者とつながりや交流によって緩和できるというわけです。

 

この仮説は、多くの人がすんなり受けいれられる内容でしょう。

 

■他者との交流で逆に孤独・孤立感が悪化=増幅仮説

 

  続くもう1つの仮説が「増幅仮説」です。

 

この仮説では、孤独を感じている人が人と交流しても、逆効果になるのではないかと考えています。

 

  人との交流が逆効果になるのには、2つの理由があります。

 

1つ目は、孤独・孤立感を抱いている人にとって、他人との交流が「怖いもの」になっている可能性です(*7)。

 

  もし孤独・孤立の原因が人間関係の失敗に起因するものである場合、他人との交流はできるだけ避けたいものになるでしょう。

 

また、慢性的な孤独感は、他人との交流を望まなくなるだけでなく、より「一人になりたい」という傾向を強めてしまうこともわかっています(*8)。

 

これらが当てはまる場合、孤独・孤立を感じる人は、人と会わないことを選択し、仮に他人と交流することがあっても負担に感じるだけで、「一人になりたい」という思いを強める恐れがあります。

 

  2つ目の理由は、孤独・孤立感を持っている人ほど、うまく他人とコミュニケーションすることが難しく、結局人との交流を苦痛に感じてしまうというものです。

 

 ■人間不信のまま交流してもうまくいかない

 

  実は過去の研究から、孤独を感じている人ほど、皮肉、不信感、拒絶や裏切りというネガティブな考えを持って他人と交流する傾向があるとわかっています(*9)。

 

要は人間不信に陥っている状況であり、このまま人と交流してもうまくいかないでしょう。

 

この結果、他人と交流するのは大変だし、結局一人のほうが楽となってしまうわけです。

 

  また、他人から孤独・孤立に陥っていると認識されると、それがスティグマ(差別・偏見)へとつながり、周囲から否定的に捉えられ、不当な扱いを受けるようになるとも指摘されています(*10)。

 

欧米の研究では、孤独な人は他人から否定的に認識されるだけでなく、社会適応力の低い人だと考えられる傾向があります(*11)。

 

この場合、コミュニケーションを取ったとしても、相手の反応は素っ気ないものとなり、交流するメリットは小さいものとなるでしょう。 

 

 このように、孤独・孤立感を抱いている人ほど、他人とのコミュニケーションに障害を抱えている場合があるため、他人とのつながりや交流を持つことがプラスではなく、マイナスにきいてしまう可能性があります。

 

■人と一緒に過ごすことが逆効果に

 

  バッファー仮説と増幅仮説の2つのうち、どちらが実態に近いのでしょうか。

 

  スタヴロワ准教授らの研究ではドイツのデータを使い、実際に分析を行った結果、増幅仮説のほうが妥当であることを明らかにしました。

 

一人でいるときよりも、他の人と一緒にいるときのほうが孤独のマイナスの影響はより大きかったのです。

 

  また、分析の結果、孤独を強く感じている人ほど、他人と一緒にいることが幸福に結びつかないことも明らかにしています。

 

孤独を強く感じている人にとって、他人といることがプラスになるわけではないのです。

 

  以上の分析結果は、他の人と一緒に時間を過ごすだけでは、孤独感の負担が軽減されるわけではなく、逆効果になる可能性があることを示しています。

 

 ■孤独・孤立の解消は一筋縄ではいかない

 

  孤独・孤立化は、私たちの社会の直面する新しい問題です。

 

この問題への解決策として、人とのふれあいを増やすという方法が真っ先に思いつきますが、状況によっては逆効果になる恐れもあります。

 

  実は孤独を解消するためにどのような対応すればいいのかを調査した研究でも、人と触れ合う機会を増やすことが必ずしも最適な方法ではないと指摘されています(*12)。

 

  その研究では、最も効果的な方法として、孤独を感じている人の考え方を修正・改善させるほうが望ましいと述べています。

 

孤独感を抱いている人は、他人が自分をどのように見ているかについて否定的な考えを持ちがちです。

 

また、どうしても自分に自信が持てず、他人との交流を怖いものと認識してしまう傾向があります。

 

  これらの否定的な考えを修正・改善させ、社会や自分に対する認識を変えることが孤独から抜け出す方法として望ましいというわけです。

 

孤独・孤立からの脱却は、私たちが思っている以上に一筋縄ではいかないものであり、その対応には慎重を期すべきでしょう。

 

  (*1)Holt-Lunstad J, Smith TB, Layton JB. (2010). Social relationships and mortality risk: a meta-analytic review. PLoS Med, 27;7(7): e1000316.

 

 (*2)Uchino, B. N. (2006). Social support and health: a review of physiological processes potentially underlying links to disease outcomes. Journal of Behavioral Medicine, 29(4), 377–87. 

 

(*3)Valtorta NK, Kanaan M, Gilbody S, Ronzi S, Hanratty B. (2016). Loneliness and social isolation as risk factors for coronary heart disease and stroke: systematic review and meta-analysis of longitudinal observational studies, 1;102(13), 1009–16.

 

 (*4)Stavrova, O., Ren, D. (2023). Alone in a Crowd: Is Social Contact Associated with Less Psychological Pain of Loneliness in Everyday Life? Journal of Happiness Studies, 24, 1841–1860. 

 

(*5)Lucas, R. E., & Dyrenforth, P. S. (2006). Does the existence of social relationships matter for subjective well-being? In K. D. Vohs, & E. J. Finkel (Eds.), Self and relationships: Connecting intrapersonal and interpersonal processes (pp. 254–273). Guilford Press.

 

 (*6)Stavrova, O., & Ren, D. (2020). Is more always better? Examining the nonlinear association of social contact frequency with physical health and longevity. Social Psychological and Personality Science, 12(6), 1058–1070. 

 

(*7)Hawkley, L., Preacher, K., & Cacioppo, J. (2007). Multilevel modeling of social interactions and mood in lonely and socially connected individuals: The MacArthur Social Neuroscience Studies. Oxford Handbook of Methods in Positive Psychology.

 

 (*8)Vanhalst, J., Soenens, B., Luyckx, K., Van Petegem, S., Weeks, M. S., & Asher, S. R. (2015). Why do the lonely stay lonely? Chronically lonely adolescents’ attributions and emotions in situations of social inclusion and exclusion. Journal of Personality and Social Psychology, 109(5), 932–948.

 

 (*9)Rotenberg, K. J. (1994). Loneliness and interpersonal trust. Journal of Social and Clinical Psychology, 13(2), 152–173.

 

 (*10)Cacioppo, J. T., Hawkley, L. C., & Thisted, R. A. (2010). Perceived social isolation makes me sad: 5-year cross-lagged analyses of loneliness and depressive symptomatology in the Chicago Health, Aging, and Social Relations Study. Psychology and Aging, 25(2), 453–463.

 

 (*11)Lau, S., & Gruen, G. E. (1992). The Social Stigma of loneliness: Effect of Target Person’s and Perceiver’s sex. Personality and Social Psychology Bulletin, 18(2), 182–189.

 

 (*12)Masi, C. M., Chen, H. Y., Hawkley, L. C., & Cacioppo, J. T. (2011). A meta-analysis of interventions to reduce loneliness. Personality and Social Psychology Review, 15(3), 219–266.

 

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 佐藤 一磨(さとう・かずま) 拓殖大学政経学部教授

 

 1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。

 

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拓殖大学政経学部教授 佐藤 一磨

 

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