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会話になっているようで、話がかみ合わない…自閉スペクトラム症の子が直面している困難と、対処法

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 いつの時代も、会話によるコミュニケーションは重要です。

 

しかし、コミュニケーションに困難を抱え、学校でうまく会話ができずに悩んでいる発達障害の子がたくさんいます。

 

相手の受け答えを聞かずに熱弁をふるってしまったり、相手の話を最後まで聞けなかったり……。 

 

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 発達障害の子は、ほかの多くの子とは異なる、ユニークなコミュニケーションのスタイルをとっています。

 

彼らに合った場面で、同じ波長の仲間となら、気持ちよく話ができることもあります。

 

ですから、「うまく話すことより、楽しく話すこと」を目標にしてサポートしたいものです。

 

  ここでは、『発達障害の子の「会話力」を楽しく育てる本』(藤野博監修、講談社刊)のエッセンスを、全8回にわたって紹介。

 

発達科学の知見に基づきながら、発達障害の子が楽しく会話力を伸ばしていくためのヒントを探っていきましょう。

 

今回は、おもに自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが、会話でどんな困難に直面しているのかと、その対処法をお伝えします。

 

  発達障害の子の「会話力」を楽しく育てる 第4回 

全体より細部に気を取られがち

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 多くの人は「スプーンとはこういうもの」といった常識をもとにして話しますが、発達障害の子のなかには、そういった常識を理解するのが苦手な子がいます。

 

彼らは独特の視点で、世の中のものをとらえています。

 

スプーンひとつをとってみても、その素材や形状をこまかく観察し、区別していたりするのです。

 

  たとえば、「スプーンは金属製」といった情報を学ぶと、それを原則のようにとらえます。

 

そのこだわりをなかなか解消できず、「世の中にはいろいろなスプーンがある」という常識を理解できなくなります。

 

そのため、友達の家で、自宅のスプーンとは素材の違うものをみて、混乱してしまうのです。

 

  同じものについて話しても会話がすれ違うわけですが、それは発達障害の子の視点が多くの子と違うというだけです。

 

発達障害の子は、ものごとの全体像を把握して、情報を取捨選択するのが苦手です。

 

とくにASD の子は全体よりも細部に気をとられがちで、注目しているポイントが多くの子とは違います。

 

それが論点のずれにつながります。

 

  スプーンをみたとき、形をおおまかにながめてスプーンだと認識する子もいれば、先の例のようにまずは素材を確認するという子もいます。

 

子どもによって「解像度」は違うのだと考えましょう。

 

文脈や相手の意図を読み取るのが苦手

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 ASDの子は、会話でも文章を読むときでも、言葉の表面的な意味にとらわれ、文脈や相手の意図を読みとれないことがあります。

 

たとえば、友達に「また遊ぼう」と言われると、その言葉の通りに何度も誘ってしまいます。

 

  社交辞令やお世辞のような、言葉の裏の意味を考える視点がなかなか身につかず、相手が困っている様子でも、それが意識に入りにくいのです。

 

つまり、相手の表情や仕草、口調といったふるまいから、意図を想像することが苦手ということです。

 

  そのように、場面に合った言葉の使い方を考える言語学の分野を「語用論」といいます。

 

ASDの子の感じ方や考え方を理解するには、語用論的な視点をもつことが重要です。

 

そして、まわりの人も言葉を慎重に扱うとともに、言葉には裏の意味もあることを子どもに少しずつ伝えていきましょう。

 

     また、ASDの子は人に話を合わせるのが苦手です。

 

会話で協調性を働かせるには、話の質や量、関連性などを整える必要がありますが(=「協調の原理」)、ASDの子にはその原理が働きにくいのです。

 

話し相手との関係性やその場の状況に合うよう話を整えることがうまくできず、趣味や住所などのように場面や相手によって調整すべき情報を、いつでも誰に対しても極端にくわしく答えてしまったりします。 

 

 こうしたタイプの子の場合、協調性が相手との人間関係ではなく、言葉や規則のほうに向いていると考えましょう。

 

相手と協調する気がないのではありません。

 

住所の例でもわかるように、相手の言葉は理解しています。

 

質問の意味や適切な受け答えを説明し、言葉で理解をうながせば、すれ違いは減らせます。

家族や友達にも敬語で話しかけてしまう理由

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 「丁寧さ」の調節が苦手でも、先生のように、つねに敬語で話せばよい相手との会話では、それほど問題が起こりません。

 

難しいのは友達のように、親しくなるにつれて必要な「丁寧さ」が変わっていく相手です。

 

知り合った頃は丁寧にやりとりをしていたのに、徐々に言い方がくだけていくという変化に、なかなか対応できません。

 

  丁寧に話すのは基本的にはよいことですが、それが度を越すと、かえって失礼になる場合もあります。

 

ASD の子のなかには、家族や友達にも敬語で話しかけ、相手を驚かせたり、怒らせたりしてしまう子がいます。

 

話し方があまりにも丁寧なせいで、ふざけているようにみえてしまうのです。

 

そのいっぽうで、同級生だというだけで、親しくない子にも「タメ口」で親しげにしてしまったりする子も。

 

  子どもによって対応力は異なりますが、「丁寧さ」の調節が極端に苦手な場合には、無理にくだけた表現をさせず、丁寧な話し方をベースにして日常会話を整えていくのもひとつの方法でしょう。

 

  過度な敬語は見直す必要がありますが、対応はその程度で十分です。

 

敬語が使える子は、年上の人にかわいがってもらえることがあります。

 

丁寧な話し方を長所として、人間関係を広げるのもよいでしょう。

 

  会話力を育てるには、子どもと会話を楽しむのもポイント。

 

そこで次回は、『発達障害の子の「会話力」を楽しく育てる本』(藤野 博 監修)から、子どもの個性を活かしながら会話力を育てるコツを具体的にご紹介します。

 

  次回記事『「正しい」よりも「楽しい」がポイント発達障害の子の会話力を育てるコツ』はこちらから。

 

  『発達障害の子の「会話力」を楽しく育てる本』(藤野 博 監修)講談社より発売中! 

 

藤野 博

 

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