【以下ニュースソース引用】

NYから7時間。ハプニングあり、再発見ありのロンドン旅

LIFE

 

小学校時代、ロンドン郊外の家。玄関へと続く前庭では季節ごとのお花を愛でることができました
久保純子

久保純子

 フリーアナウンサー

1972年、東京都生まれ。小学校時代をイギリス、高校時代をアメリカで過ごす。大学卒業後、NHKに …

小学校時代を過ごした思い出の街・ロンドン

「えっ? えーーーーーーーっ? 携帯がない!」。

 

顔面蒼白(そうはく)の私。

 

休みを利用して、娘とともに懐かしのロンドン——小学校時代を父の転勤で過ごした思い出の街——を訪れていた2日目に、その悲劇は起こった。

 

NYから7時間。ハプニングあり、再発見ありのロンドン旅
大きな芝生のお庭は格好の遊び場で、池のオタマジャクシを観察したり、ブルーベリーやラズベリーを摘んだり、初めてづくしの経験でした

「ママ? 本当にないの?」そう娘に話しかけられた時にはもう全身汗だく、冷や汗。

 

人間の機能、条件反射はすごいなどと冷静に考えながら、一方で、頭はパニック状態。

 

時すでに遅し。

 

ない、ない、ない。

 

私の携帯電話は、ダウンの右ポケットから連れ去られ、どこかに消えてしまっていた。

 

急いで、5分前に買い物をしていたイギリスの老舗デパート「リバティ」に戻った。

 

店員さんに尋ねたが、もちろんあるわけもなく(涙)。

 

「ロンドンはスリが多いからね」という店員さんの言葉には、暗に「貴女(あなた)、諦めなさい」というメッセージが含まれている気がした。

 

ルンルン気分で可愛いお土産にうつつをぬかしていた時に違いない。

 

スリにはおそらく浮かれた観光客=格好の標的に映ったのだろう。

 

まさに「ピックポケット(ポケットから抜き出すスリ)」。まさか海外に慣れているはずの私に限ってという油断があったのかもしれない。

 

こうして始まったロンドン珍道中。ひとまず、冷静さを取り戻して、携帯電話の中身をすべて遠隔で消去し、警察に被害届を出した。

 

良くも悪くも、「前向き」な性格だけが取り柄(え)の私。

 

「覆水盆に返らず」「前進あるのみ」と自分をなだめて、始まったばかりのロンドン旅を全力で楽しむことを心に決めたのだ。

NYからは国内旅行の感覚で行ける

ニューヨーク(NY)からロンドンまでの飛行時間は7時間ほど。

 

NYからカリフォルニアへも6時間と考えると、東海岸に住むアメリカ人にとっては、ヨーロッパは国内旅行のような感覚で訪れることができる人気の旅先なのだ。

 

こちらに移り住んでからというもの、私も何度かロンドンを訪れているが、小学校時代と比べて、今は何から何まで驚くほど洗練されている。

 

空港からは、地下鉄一本で市内まで移動でき、2階建ての名物バスは、クレジットカード(電子マネー)で乗車することができる。

 

「40年前(昔すぎるけど)は、バス後方が吹き抜けになっていて、飛び乗ると車掌さんが首から下げたチケットマシンでチケットを販売していたのよ」なんていちいち娘に回顧録を披露しながら、3日間という短い滞在を堪能した。

 

ダイアナ妃ご成婚のパレードを見守った思い出のバッキンガムパレスから、お気に入りの映画が舞台のノッティングヒル、ミュージカル好きには外せないウェストエンド、そして目眩(めくるめ)く美術館たちまで、ロンドン市内をのんびりと見て回った。

 

NYから7時間。ハプニングあり、再発見ありのロンドン旅
「Cafe Cecilia」にて

 

何よりもグレードアップしていたのは、食事。

 

小学校時分にロンドンで食したものといえば、フィッシュ&チップス、ローストビーフに中華街の麺類くらいしか思い出せないが、ここ最近のロンドンは、おしゃれなエリアとして名高いショアディッチ、エンジェルの周りに、わざわざ足を運びたくなるような小洒落(こじゃれ)たレストランが軒を連ねている。

 

「Cafe Cecilia」は、コテージのような温かみのある内装が印象的なレストランで、足を踏み入れた瞬間、友人宅を訪れたようなぬくもりがある。

 

家具や飾ってあるお花に見とれる。

 

黒板には、シェフこだわりの日替わりメニューが躍っていて、すべて食したくなる。

 

「これは家では作れないおいしさだわ」と真心のこもったお料理の数々にホッとする。

 

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「Cafe Cecilia」で初めて食したこちらのお野菜(右)。ネギのようでネギではなく、なんとも言えない苦味が、ひよこ豆&トマトニンニクソースと絶妙な相性でした

ガーデニングの国の、日曜日のフラワーマーケット

今回一番楽しみにしていたのは、日曜日のフラワーマーケット。

 

ロンドン東部、ハガーストンの住宅街に突如として現れる「Columbia Road Flower Market」は、ロンドンっ子がこぞって訪れる週末のオアシスだ。

 

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「Columbia Road Flower Market」は、ロンドンっ子に大人気。昼過ぎには人であふれかえるから、と午前10時には行きましたが、すでにこの人だかり

 

さすがガーデニングの国だけあって、レベルが違う。

 

200mほど続く道沿いにびっちりと並んだお花や植木の屋台には、見上げるほど立派なオリーブの木から、色とりどりの可憐(かれん)な花たちが店先に並べられていて、どれも欲しくなる。

 

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勢いよく、真っ黄色の花をつけるミモザの花を見ると元気になります。3月8日の国際女性デーにはミモザを贈る習慣も
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他にも季節のお花がいっぱい。屋台によって少しずつ値段も種類も違うので、じっくり見て回ります

 

目にも鮮やかな黄色のミモザは、NYでは見かけたことのない大好きなお花で、迷わず購入。

 

何を合わせようかと娘と悩んで、青色のエリンジウムをチョイス。

 

さらに季節先取りの桜には、華やかなアマリリスをプラスした。

 

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フラワーマーケット周辺には、洋服や小物屋さんがいっぱいあります。イギリスを感じるパッケージやデザインに魅せられます

 

友人宅に戻って、娘とフラワーアレンジにいそしむひとときは、携帯を盗まれたことなど忘れさせてくれる(苦笑)この上なく幸せな時間だった。

 

NYから7時間。ハプニングあり、再発見ありのロンドン旅
友人宅でお花をアレンジ。ミモザの花言葉は、「優雅」「友情」。心に潤いを与えてくれます。大事ですね

 

さらに旅は続き、陸路で行くことができることを初めて知ったオランダのアムステルダムへ。

 

ユーロスターでわずか3時間ちょっと。

 

百聞は一見にしかず。こ

 

ちらの旅の様子はまた別の機会につづらせていただくことにしよう。

 

ハプニングからスタートした旅だったけれど、終わり良ければすべて良し。実際に五感で触れてみないとわからないことがたくさんあると再認識、エネルギーを補給した旅路だった。

 

来年は結婚25周年の銀婚式。

 

どこに行く?と今からジリジリ夫に迫っている。

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