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食事と運動を気にかけるよりも効果的…ハーバード大80年超の研究でわかった「健康と長寿」に効く要素

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プレジデントオンライン

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Lari Bat

 

健康で長生きするために必要な要素は何か。

 

拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「最近の研究で、食事や運動よりも健康にプラスの効果がある要素が判明した」という――。 

 

【図表】友人、同僚、または社会的グループの他の人々とまったく、あるいはほとんど時間を過ごさない割合 

 

■食事と運動よりも重要な健康・長寿の要素

 

  「健康でありたい」「長生きしたい」。

 

こう思うのは人間の自然な本能です。

 

この願いを叶えるべく、これまで医学を中心にさまざまな研究が行われてきました。

 

  この中で、「どのようなライフスタイルが健康や長寿につながるのか」という点が分析されてきました。

 

健康づくりの王道といえば、やはり食事と運動です。

 

このため、「太らないようにする」「お酒を飲みすぎない」「タバコを吸わない」「適度な運動をする」といったことが啓蒙されていきました。

 

  しかし、実際にさまざまな研究結果を整理してみると、意外な事実がわかりました。

 

  なんと、先ほど挙げた食事と運動に気を付けるよりも、人とのつながりを多く持ち、交流するほうが健康にプラスの効果が大きかったのです(*1)。

 

  実は、つながりが少なく孤独感を抱くほど、生理学的にマイナスの反応が起こり、健康を阻害してしまいます(*2)。

 

また、つながりが多い人ほど、さまざまな健康に関する情報や支援を得るチャンスが多いだけでなく、そのつながりが新たなつながりを生み、人間関係を豊かにするというプラスの効果もあるのです(*2)。

 

  私たち人間は社会的な動物であり、孤独・孤立は思っている以上に健康に悪いというわけです。

 

 ■ハーバード大80年超の研究で明かされたこと

 

  実は同じような結果が幸福度研究からも得られています。

 

ハーバード大学のロバート・ウォールディンガー教授とブリンマー大学のマーク・シュルツ教授は、80年以上続くハーバード成人発達研究から、「人とのつながり、特に心の通う人間関係が人生や老いのつらさから私たちを守ってくれる」と指摘しています(*3)。

 

  これらの研究結果が示すように、人とのつながりは、私たちに大きな影響を及ぼします。

 

  では、どのような人が孤独・孤立に陥りやすいのでしょうか。

 

日本における孤独・孤立の現状について見ていきたいと思います。

 

■常に孤独を感じる人が約550万人

 

  日本では、2021年2月より孤独・孤立対策担当大臣が任命され、政府として孤独・孤立の問題に対応しています。

 

この背景には、コロナウイルスの感染拡大によって人々の交流が制限され、孤独・孤立に陥る人が増えたのではないかと考えられたためでした。

 

  政府では孤独・孤立に陥る人の現状を把握するためにも、2022年に全国の16歳以上の2万人を対象とした調査を行っています(*4)。

 

この調査から、日本ではどのような人が孤独・孤立に陥っているのかを見ていきたいと思います。

 

  調査では孤独に関して、「あなたはどの程度、孤独であると感じることがありますか」という質問を用いています。

 

この質問に対して「しばしばある・常にある」と回答した割合は、全体で4.9%でした。

 

  常に孤独を感じているのは、全体の約5%というわけですが、日本の2022年の16歳以上人口は約1億900万人であり(*5)、この5%となると、約550万人です。

 

これは無視できない数だといえるでしょう。

 

 ■中年男性と若年女性の孤独感

 

  次に年齢別に孤独の状況を見ると、意外な結果が見えてきます。

 

年齢別で常に孤独を感じている割合が高かったのは、30代(7.2%)、次いで20代(7.1%)でした。

 

2022年と言えばコロナの影響もまだ無視できない状況でしたが、若年層ほど孤独を感じていたわけです。

 

  ただし、男女別に分けると、また別な姿が見えてきます。

 

男性の中で常に孤独を感じている割合が最も高かったのは、50代(7.3%)でした。

 

  中年男性は、孤独を感じやすいというわけです。

 

  これに対して女性の場合、常に孤独を感じている割合が最も高かったのは、30代(7.9%)でした。

 

女性では20代の値も高く(7.1%)、男性よりも相対的に若い年齢層で孤独感が高くなる傾向があります。

 

■若い世代で孤独を感じる割合が高い

 

  この孤独感に関して、他の属性との関連を見ていくと、次のような姿が見えてきます。

 

まず、配偶状態を見ると、未婚や離別した人ほど、常に孤独を感じている割合が高くなっていました。

 

また独居者ほど、孤独感が高くなっていました。

 

仕事や所得面については、失業していたり、世帯年収が100万円未満である場合に孤独感が高くなっていたのです。

 

  以上の内容を整理すると、「50代男性、30代女性、未婚者・離別者、独居者、失業者、低所得者が孤独感を感じやすい」といえます。

 

  これらの中でも特に気になるのが比較的若い層で孤独を感じる割合が高いという現状です。

 

常に孤独を感じている状態は、健康面にとってマイナスであり、仕事や学業にも何らかの障害をもたらしている可能性が考えられます。

 

 ■日本人の孤立に陥る割合は世界でトップクラス

 

  次に国際比較の視点から、日本の状況を見ていきたいと思います。

 

図表1はOECD加盟国において、友人、同僚、または社会的グループの他の人々とほとんど時間を過ごさない割合を見ています。 

 

 なんと日本人は、家族以外の人と社交のためにめったに付き合わない比率がOECDの中でも最も高くなっていました。

 

OECD諸国の中でも、日本人は人付き合いが少なく、社会的に孤立しやすいと言えるでしょう。

 

  ちなみに図表1のデータは2005年のものであり、今から19年も前のデータです。

 

その後の変化を国際比較したデータはないのですが、時系列的に日本人の人付き合いがどのように変化したのかを示すデータは存在しています。

 

  それが図表2であり、これは近隣の人との望ましい付き合い方がどう変化してきたのかを示しています。

 

  この図から明らかなとおり、近隣の人とは会った時に挨拶する程度の付き合いが良いと考える人が増え、逆に相談したり、助け合える付き合いが良いと考える人が減っています。

 

  日本人は、周りの人と深い付き合いを避け、ほどほどの付き合いが良いと考えるようになったといえるでしょう。

 

これは日本人の孤独・孤立化が進展していることを示唆するのではないでしょうか。

 

■アメリカでも孤独・孤立に陥る人が増加

 

  日本では孤独・孤立化が進展している可能性があるわけですが、最近の研究からアメリカでも同じ傾向があることがわかっています。

 

  ロチェスター大学のヴィジ・ダイアン・カナン博士らの研究では、2003年から2020年までのAmerican Time Use Survey(ATUS)というデータを用い、アメリカ人の孤独・孤立の推移を分析しています(*6)。

 

  この分析の結果、アメリカ人は誰とも関わらない社会的に孤立した時間が持続的に増えており、この傾向はコロナウイルスの拡大によってさらに顕著になったことがわかりました。

 

また同時に、家族、家族以外の人々、友人やその他地域の人々と過ごす時間も減少傾向にあることがわかりました。

 

  アメリカでは確実に一人で過ごす時間が増えています。

 

これは日本と同様であり、人々の孤独・孤立化は現代社会における一つのトレンドなのかもしれません。

 

 ■孤独・孤立に陥る人はさらに増える

 

  これまで見てきたとおり、日本では人付き合いが以前よりも希薄化しており、孤独・孤立に陥る人が増加している可能性があります。

 

  そして、この傾向は今後さらに強まる恐れがあるのではないでしょうか。

 

  理由として挙げられるのは、高齢化による独居世帯の増加と、未婚比率の増加です。

 

図表2のデータが示すように、ご近所付き合いも持続的な低下傾向にある点も考慮すると、日本人の孤独・孤立化は今後も進展し続けていくと予想されます。

 

  健康への大きなマイナスの影響がある点を考慮すると、この問題への対処は、現代社会における大きな課題の1つです。

 

この課題に対して行政を中心にさまざまな試みがなされていますが、私たち個人としても「つながりの維持・向上」を意識していくことが重要でしょう。

 

  ただ、新しく何かを始めたり、グループに入ったりするのは、やや億劫に感じてしまうかもしれません。

 

そんな時は、学生時代や地元の友人と久しぶりに連絡をとってみることから始めるのはいかがでしょうか。

 

あまり肩ひじ張らず、気軽な形でつながりを持つことが私たちの人生を豊かにするキッカケとなるかもしれません。

 

(*1)Holt-Lunstad J, Smith TB, Layton JB. Social relationships and mortality risk: a meta-analytic review. PLoS Med. 2010 Jul 27;7(7) 

 

(*2)村山洋史(2018)『「つながり」と健康格差 なぜ夫と別れても妻は変わらず健康なのか』ポプラ社

 

(*3)ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ(2023)『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』辰巳出版

 

 (*4)内閣官房(2023)「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年実施)」

 

 (*5)総務省統計局(2022)「人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)」

 

 (*6)Kannan VD, Veazie PJ. US trends in social isolation, social engagement, and companionship - nationally and by age, sex, race/ethnicity, family income, and work hours, 2003-2020. SSM Popul Health. 2022

 

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 佐藤 一磨(さとう・かずま) 拓殖大学政経学部教授 1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。

 

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拓殖大学政経学部教授 佐藤 一磨

 

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