【以下ニュースソース引用】

南の海でダイナミックな避寒クルーズ MSCベリッシマ・沖縄発着(前編)

ESSAY

 

パイナガマビーチとMSCベリッシマ=沖縄県宮古島市、上田英夫撮影
上田寿美子

上田寿美子

 クルーズジャーナリスト

日本旅行作家協会会員、日本外国特派員協会会員。クルーズ旅行の楽しさを伝え続けて30年余り。外国客 …

 

 

昨年4月、日本にやって来たMSCベリッシマは、総トン数17万1598トン、乗客定員5568人の最新鋭大型客船。

 

主に横浜港発着のクルーズを多数実施し、2023年に延べ10万人以上の集客を成し遂げた人気客船です。

 

本年1月から3月は、その舞台を沖縄に移し、那覇発着で宮古島、台湾・基隆、石垣島などを訪れる南の島巡りクルーズを実施。

 

広々とした船内で多彩な娯楽を楽しみながら、2月とはいえハイビスカスの花咲き乱れる美しい南の島で、寒さも忘れるクルーズを満喫しました。

 

 

連載「上田寿美子 クルーズへの招待状」は、クルーズ旅の魅力や楽しみ方をクルーズライターの筆者がご紹介します。

船をホテル代わりに那覇観光

今回のMSCベリッシマ那覇発着クルーズの特徴の一つが、出発地の那覇港に1泊すること。

 

翌日の最終帰船時間は19時半、その後20時の出航だったので、船をホテル代わりに利用し、ゆっくりと沖縄観光が楽しめるのです。

 

そこで、2日目は、朝9時に観光に出発。

 

最初に国宝であり、世界遺産にも登録された玉陵(たまうどぅん)を訪れました。

 

1501年、尚真王(しょうしんおう)が父尚円王(しょうえんおう)を改葬するために築き、その後、第二尚氏王統の陵墓となった聖なる場所です。

 

(左)尚氏の陵墓だった玉陵=上田英夫撮影(右)玉陵にまつられる人々を記した石碑=上田寿美子撮影
(左)尚氏の陵墓だった玉陵=上田英夫撮影(右)玉陵にまつられる人々を記した石碑=上田寿美子撮影

 

奉円館(券売所)の地下は資料室で、尚氏の系図、内部の解説、家形骨つぼなどが展示されていました。

 

そして、この地域には、一度遺体を部屋に安置したり、土葬したりし、一定期間過ぎた後、人骨を海水や酒で洗い、再度埋葬する「洗骨」という葬制があったことを知りました。

 

ガジュマルの並木を通り、石塀をくぐると三つにわかれた墓室が現れました。

 

中室は洗骨前の遺骸を安置する部屋、東室は洗骨後の王と王妃が眠り、西室は庭の玉陵碑に記された家族だけが葬られているそうです。

 

板ぶきだった当時の首里城を模した石城の墓は、現代にまで琉球王国の栄華と風習を伝えています。

 

静寂に包まれた玉陵から、国際通りへ移動するとモダンな景観と大勢の人のにぎわいに、まるでタイムカプセルに乗ってワープしたよう。

 

そのそばにある「壺屋やちむん通り」を散策しました。

 

やちむんとは沖縄の焼き物のことで、店のショーウィンドーには、皿、カップなどのお土産に適した什器(じゅうき)から、シーサーや家形の骨つぼなどの沖縄らしいものまで。焼き物を見ながらブーゲンビリアの咲く通りを歩けば一足早い初夏の香りを感じました。

 

ブーゲンビリアの咲くやちむん通り=上田寿美子撮影
ブーゲンビリアの咲くやちむん通り=上田寿美子撮影

 

国際通りに戻り、今度は那覇市伝統工芸館で琉球漆器体験に挑戦。

 

14世紀ごろから琉球王国で造られた琉球漆器は、高温多湿の気候と、デイゴやガジュマルなどの良質な木材素地の採取が可能なこの地域の環境が合致し発展して来ました。

 

加飾技法は、堆錦(ついきん)、花塗り、沈金、箔絵(はくえ)、螺鈿(らでん)など多数あるそうですが、今日体験したのは、堆錦。漆に顔料を混ぜた堆錦餅を薄く延ばし、型で抜いて、下地を塗った器に貼り付け、装飾を立体的に表現する方法です。

 

先生の「自由にデザインしてください」の言葉に従い、首里城をイメージさせる朱色の堆錦餅を多めに使い魚を型で抜き、ピンセットで貼り付けていきました。

 

さらに、螺鈿の材料も出してくれたので光る貝殻も貼り付け、色とりどりの海底絵巻が出来上がりました。

 

琉球漆器の堆錦体験=上田英夫撮影
琉球漆器の堆錦体験=上田英夫撮影

 

那覇市おもろまち3丁目には「おきみゅー」の愛称で親しまれる沖縄県立博物館・美術館があります。

 

沖縄の自然・文化・歴史・芸術を一度に鑑賞可能な全国でもめずらしい博物館と美術館を併設した施設となっています。

 

博物館のイメージは、学術的なものを見学するちょっと堅いイメージがありますが、この博物館は観(み)る、学ぶ、触れることもできる楽しいミュージアムである点がユニーク。

 

城をイメージした沖縄県立博物館・美術館=上田英夫撮影
城をイメージした沖縄県立博物館・美術館=上田英夫撮影

 

たとえば、博物館の屋外展示にはシーサーが3体あるそうですが、それを探すには本館に入る前から目を凝らさねばなりません。

 

また、おきみゅーのオリジナルスタンプラリーは、スタンプを押していくと最後に絵が完成する仕掛けで、何が浮かび上がるのか、わくわくしながら押して回ることもできます。

 

博物館常設展示の自然史部門展示室にはヤンバルクイナの標本など固有種を有する独特の自然を振り返る「生物が語る沖縄2億年」のジオラマ。総合展示には、かつて首里城の正殿にかけられていた国指定重要文化財「旧首里城正殿鐘(万国津梁〈ばんこくしんりょう〉の鐘)」、琉球王国から中国へ渡る使者が乗った進貢船の模型など、琉球王国の歴史を学ぶ興味深いものも展示されていました。

 

さらに、ふれあい体験室では三線(さんしん)や、グスクの石積み技術等々を体験できるコーナーもあります。

 

今回は、時間の都合で博物館だけの見学となりましたが、美術館も含めおきみゅーは、収蔵資料数が県下ナンバー1。ぜひ再訪したい場所となりました。

 

(左)屋外展示の3体のシーサーのうちの一体(右)旧首里城正殿鐘(万国津梁の鐘)=上田英夫撮影
(左)屋外展示の3体のシーサーのうちの一体(右)旧首里城正殿鐘(万国津梁の鐘)=上田英夫撮影

 

船に戻り、ランチは「マーケットプレイス ビュッフェ」へ。

 

焼き立てのピッツァ。バラエティー豊かなサラダバー。

 

目の前で切り分けてくれる鶏の丸焼き。

 

ハムやサラミ。色とりどりのケーキやスイーツ。

 

そして、ちょっとめずらしい水ギョーザは、このクルーズに乗っている台湾のお客様に人気があるそうです。

 

色々な料理が並ぶビュッフェレストランのマーケットプレイス=上田寿美子撮影
色々な料理が並ぶビュッフェレストランのマーケットプレイス=上田寿美子撮影

 

船内には、複数のプールがありますが、暖かい日差しの下で、どのプールにも泳ぐ人の姿が。

 

2月の日本であることを忘れそうでした。

 

南の海でダイナミックな避寒クルーズ MSCベリッシマ・沖縄発着(前編)
(左)屋外のアトモスフィアプールで泳ぐ人々。2月であることを忘れそう(右)ファミリーも楽しいアリゾナアクアパーク=上田英夫撮影

船内の「ビバリーヒルズ」と「ダウンタウン」

MSCベリッシマの一画には専用のレストラン、専用のラウンジ、専用のプールに加えフリードリンク、コンシェルジュデスク、バトラーサービスなど特別なサービスが受けられるワンランク上のMSCヨットクラブという客室エリアがあります。

 

こちらの客室を申し込めば誰もが、専用カウンターでチェックインし、ヨットクラブカードをかざせばエレべーターも目的階までノンストップ。

 

その優位性は特筆ものです。

 

ヨットクラブ・デラックススイート客室=上田英夫撮影
ヨットクラブ・デラックススイート客室=上田英夫撮影

 

ヨットクラブディレクターによれば「お客様の中には『MSCヨットクラブは常連客だけの特権』と思っている人がいるのです。

 

しかし、それは誤解で、他の客室より高額にはなりますが、MSCヨットクラブの乗船券を購入すれば、初めての方にもこのぜいたく感を楽しんでいただけます。

 

いわばMSCヨットクラブは船内のおしゃれで優雅なビバリーヒルズ。

 

そのほかのエリアは明るく活気良いダウンタウンと表現するとわかりやすいと思います」。

 

確かに、バラエティー豊かな食事処、クールなバー、エキサイティングなショーやイベント、愉快なストリートパフォーマンスなど、ダウンタウンは快活で多彩なエリア。

 

こちらの客室は手ごろな料金で大いに楽しめます。

 

どちらを選ぶかはお客様のお好み次第。

 

MSCベリッシマは、客室の考え方も選択肢があるので、旅行の目的、人数や構成によって選べるのも魅力です。

 

2日目の夜はおしゃれを楽しむエレガントナイト。

 

夕食時にはバトラーが部屋までやって来てヨットクラブ専用レストランまでエスコートしてくれました。

 

スワロフスキーのクリスタルガラスをちりばめた階段を上っていくと、気分は最高潮。

 

(左)バトラーのエスコートで、クリスタルガラスの階段を上り専用レストランへ=上田英夫撮影
(右)ムーディーなヨットクラブレストラン=上田寿美子撮影
(左)バトラーのエスコートで、クリスタルガラスの階段を上り専用レストランへ=上田英夫撮影(右)ムーディーなヨットクラブレストラン=上田寿美子撮影

 

エレガントナイトのスペシャルメニューもエスカルゴやロブスターのごちそう。

 

デザートのクレープシュゼットはレストランマネジャーが、ワゴンでフランベし炎の演出も披露。

 

ショー劇場へ行くときも再びバトラーが現れ、エスコート。

 

とても丁寧で、ちょっと仰々しいサービスに、ここは本当に日本?と思うほどの豪華な日々。

 

MSCヨットクラブは身近にラグジュアリークルーズを楽しみたい人にはぴったりの船旅になるでしょう。

 

(左)立派なロブスターも登場=上田寿美子撮影(右)クレープシュゼットをフランベ=上田英夫撮影
(左)立派なロブスターも登場=上田寿美子撮影(右)クレープシュゼットをフランベ=上田英夫撮影

宮古島で透き通る海と大橋を望む

3日目の朝、MSCベリッシマは宮古島に到着しました。

 

沖縄本島から南西に約290キロメート離れた宮古島は南海のパラダイスと言えるでしょう。

 

この島での楽しみは、青い海との出会い。

 

そして、海の上を貫く大橋渡り。前回は伊良部大橋を渡ったので、今回は来間(くりま)大橋に行ってみました。

 

宮古島と来間島(くりまじま)を結ぶ1690メートルの来間大橋は1995年に開通。

 

歩いても通れる橋ですが今回は観光タクシーを利用し、宮古ブルーの海の上を走り抜けました。

 

宮古島と来間島を結ぶ来間大橋=上田英夫撮影
宮古島と来間島を結ぶ来間大橋=上田英夫撮影

 

来間島側につくと、竜宮城展望台へ。

 

乙姫様が出てきそうな城をかたどった展望台は、来島大橋に加え、天気が良ければ伊良部島や伊良部大橋まで見渡せる絶景スポットです。

 

見晴らしの良い竜宮城展望台=上田英夫撮影
見晴らしの良い竜宮城展望台=上田英夫撮影

 

次は平安名埼(へんなさき)灯台へ。

 

東平安名崎(ひがしへんなざき)の断崖絶壁に建つ白亜の灯台です。

 

白波の打ち付ける険しい崖、奇岩が並ぶ透き通った海。

 

春になるとこの一帯にはテッポウユリが咲き乱れ、息をのむ美しさだと聞き、再びその時期に訪れることを夢見ました。

 

そして、船に帰る途中、繁華街に近いビーチとして有名なパイナガマビーチに立ち寄ると白砂と青い海の向こうにダイナミックなMSCベリッシマが見えました。

 

平安名埼灯台。白い姿がまぶしい=上田英夫撮影
平安名埼灯台。白い姿がまぶしい=上田英夫撮影

 

いよいよ明日は日本をいったん離れ、台湾の基隆に行きます。

 

台湾最大の港町では、どんな見どころが待っているのでしょうか。

 

東平安名崎の奇岩=上田英夫撮影
東平安名崎の奇岩=上田英夫撮影

 

【取材協力】 MSCクルーズジャパン https://www.msccruises.com/int/japan

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