【以下ニュースソース引用】

「80歳の壁」を越えるには 著者の和田秀樹さんに南美希子さんが聞きました

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Reライフ.net

11月19日国際男性デー健康フェスタ〈3〉「80歳の壁」を前に

 国際男性デーにちなんで男性の健康を考える「11月19日国際男性デー健康フェスタ2023」(主催・朝日新聞社、共催・日本メンズヘルス医学会、日本抗加齢医学会、日本抗加齢協会)が、東京・丸の内で昨年11月19日に初めて開催されました。

 

  プログラムの一つ、「『80歳の壁』を前に」では、ベストセラー「80歳の壁」をはじめ、多くの著書がある精神科医・作家の和田秀樹さんに、元気にのびのびと年を重ねていくコツを、フリーアナウンサー・エッセイストの南美紀子さんが聞きました。日頃から親交のあるおふたりが、楽しくざっくばらんに語り合いました。

あれダメ、これダメ、より、60歳からの人生は楽しんだ者勝ち

和田秀樹さん

 

 南 なぜこれだけ「80歳の壁」が多くの方々に支持されたのでしょう。

 

年を重ねて衰えると「あれダメ、これダメ、これしちゃダメ」というのが医者の定番です。

 

けれども、和田先生は「とにかく食べたいものを食べて、行きたいところに行って、薬はなるべく減らす。

 

60歳からの人生は楽しんだ者勝ち」というふうにおっしゃっています。

 

そのあたりが人々の心をとらえのではと思いますが。

 

  和田 コロナ禍のときに「お年寄りのために、みんな自粛しましょう」とか「お年寄りはもう外に出ちゃいけない」とかいわれたわけです。

 

しかし結局、そのせいで足腰が弱ってしまった人や脳が弱ってしまった人を、僕はいっぱい見てきているんですよ。

 

医者の言った通りにすると大体元気がなくなるということに、皆さん気がついて、それでこの本が売れたんじゃないかなと思います。

心の健康は免疫力を上げる。食べる楽しみはなくしてはいけないと思います

南美希子さん

 

 南 和田先生のご本に「食べたいものはがまんしない」とあり、非常にインパクトがありました。

 

  和田 食べることはたぶん、一番の幸せだと思うんです。

 

例えば、大金持ちになって10億円ぐらいの老人ホームに入れたとします。

 

すごく立派な施設で、すてきなアメニティーがある。

 

でも、管理栄養士が「塩分を控えて、油も控えて、甘いものを控えて」といって全然味のない食事をずっと出してきたら、「何のために金を出したんだ」という気になると思いますよ。

 

私は精神科医なので、年を取ってから大事なのは心の健康だと考えています。

 

心の健康は免疫力を上げる。食べる楽しみは絶対になくしてはいけないと思いますよ。 

 

 南 年を取ると、お漬物とご飯であっさり済まそうということもありますが、和田先生は「とにかく栄養豊富なものを食べなさい。肉を食べなさい」とおっしゃっています。

 

  和田 日本の高齢者は、たとえば骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の薬を飲んだら胃の調子が悪くなって食欲が落ちることがある。

 

そのためカルシウムやたんぱく質をとらなくなり、骨がスカスカになって、筋肉も落ちる。

 

そういった人たちを僕はいっぱい見てきています。

 

アメリカで「心筋梗塞(こうそく)の原因になるから肉を減らせ」と言い出したのは1980年代のこと。

 

そのころアメリカ人は1日に300gの肉を食べていたんですよ。

 

当時の日本人は70gしか食べていなかった。

 

それなのに日本の医者たちは「肉を減らせ」と言ったんです。

 

300g食べている人は減らしたほうがいいけど、今でも日本人は100gしか肉を食べていないんです。

 

たんぱく質は肌の材料になるし、筋肉の材料になるし、血管の材料にもなる。

 

そういうものをとらないのは、とても危険なことだと思いますよ。

 

  南 プロスキーヤーの三浦雄一郎さんと10年ほど前に対談したときに、400gのお肉を週に2、3回召し上がると聞いて、びっくりしました。

 

やっぱり元気な方は違うんだなと。

 

  和田 作家の瀬戸内寂聴さんも、105歳の長寿だった医師の日野原重明さんも、みんな肉好きでした。

 

無理に食べることはないが、食べられるのだったら、やっぱりたんぱく質はとっていただいた方がいいと思いますね。

食材にも食事の場所にもバリエーションを持たせて 運動は続けることが大事

和田秀樹さん

 

 南 「食事の場所にバリエーションを持たせなさい」とも和田先生はおっしゃっています。 

 

 和田 脳の刺激になるので、脳の老化防止に影響があると思います。

 

それに、バリエーションというと、食材の種類も多いほどいいんですよ。

 

足りなければサプリメントでもいい。

 

いろんなものを食べて栄養面で足りないものをなくしていく。

 

これを、ぜひ心がけていただければと思います。

 

  南 運動についてはいかがでしょう。

 

  和田 過度な運動はよくありません。

 

体が痛くなるぐらいの運動は筋肉に炎症を起こしやすい。

 

無理なことをすると、転んだり骨を折ったり、悲惨なことになる。

 

だから簡単にできて程度は軽く、しかも続けられる運動が大事です。

 

散歩は、外を歩いているうちにいろんなものを見るわけで、脳の刺激になってとてもいいと思います。

 

  実は自慢じゃないが、私はつい5年前まで、全く歩かない人間だったんですよ。

 

ほとんどタクシーと自分の車で動いていた。

 

すると、ある日突然、ものすごくのどがかわき、それが1週間ぐらい続いた。

 

血糖値を測ってみたら660あったんですね。

 

これはまずいなと思い、歩くのとスクワットで300まで下げました。

 

今でも歩くことだけは続けています。

足も頭もまず使いましょう 日光に当たると「幸せホルモン」が出ます

 南 私も毎日8千歩あるくようにしています。

 

高齢者は歩かないと、歩けなくなるということもありますよね。

 

  和田 これが怖いですよね。

 

80代でも若い人と同じように歩ける方は大勢いらっしゃいます。

 

ところが、そういう人でも病気で1カ月ぐらいベッドで寝ていると、歩けなくなってしまうんですよ。

 

若い時期との一番の違いは、筋肉などを使わなかったときの衰え方が激しくなることです。

 

足にしても頭にしても、「まず使う」ということを大事にしてもらいたいと思います。

 

  南 歩くことのもう一つの効用は日光に当たることだそうですね。

 

  和田 日光に当たると、脳に「セロトニン」という神経伝達物質が出ます。

 

これは「幸せホルモン」といわれるものです。

 

逆に、セロトニンが足りなくなると、不安感が強くなったりイライラしたり、ひどいときはうつ病になったります。

 

もう一つ都合がいいのは、夜になるとセロトニンが「メラトニン」というホルモンに化けて、ぐっすり眠れるようになること。

 

日の光に当たるのは相当大事な習慣だと思います。

いつもと違う道を歩きましょう あえて普段と違うことをして前頭葉を使いましょう

南美希子さん

 

 南 「いつもの道を歩かない。ルーティンを破ろう」ともおっしゃっていますね。

 

  和田 そうなんです。

 

脳の「前頭葉」というところは、意外なことや想定外のことが起こったときに対応する場所です。

 

つまり、普段と違うことをするときに働く。

 

前頭葉は年を取ればとるほど、いちばん最初に縮む場所です。

 

だから前頭葉が衰えてくると、普段と違うことを避けようとする。

 

行きつけの店しか行かない。

 

同じ著者の本しか読まない。

 

そういうことになりがちなんですよ。

 

だから、あえて普段と違うことをして前頭葉を使うようにしていただければと思います。

会話は大事な脳の老化予防 会話をして、相手に笑ってもらいましょう

「80歳の壁」を前に

 

 南 会話をすることでも脳が活性化するそうですが。

 

  和田 一番いいのは会話の相手に笑ってもらうことなんです。

 

笑うと免疫力が上がる。

 

笑ってもらえるというのは、相手から見て、意外なことを言っているときなんですよ。

 

だから、相手を笑わせるような会話をできる人は、自分の脳の使い方としても良いし、相手の脳のためにもなっている。

 

言葉のキャッチボールである会話は一番大事な脳の老化予防策です。

選択するのは自分 自分の元気がなくなるような医者とは付き合わなくていい

和田秀樹さん

 

 南 お医者さまとの関わり方について、和田先生は「嫌な医師とは付き合わない」とズバリおっしゃっていますが、その心は。

 

  和田 この医者と付き合っていたら、かえって自分の元気がなくなるというような医者とは付き合わなくていいと思いますよ。

 

例えば「薬で血圧を下げたら脳卒中にならない」とみんなは思っている。

 

けれども、そういう薬を飲んでいる人と飲んでいない人を比べた大規模比較調査は、海外にはありますが、日本の調査はない。

 

だから日本では「多分そうなんだろう」ということなんです。

 

  ここで考えなければいけないのは、薬を飲んで気分が悪くなるとか、あるいは血圧や血糖値が高いときの方が頭がさえて、低いときの方が頭がぼんやりすることが多いということです。

 

そうした状態でもいいから1秒でも長生きしたいという人は、その生き方を選べばいい。 

 

 けれども「もう残りの人生は、頭がさえている方がいいよ」とか「うまいもん食いたいよ」とか、そういうものは選択だと僕は思います。

 

その選択はやっぱり自分がするわけであって、医者が決めるものじゃないと思うんですよ。

数値に一喜一憂せず、自分の体の声を聞いてみましょう

南美希子さん

 

 南 年齢を重ねると、どうしても臨床検査の数値がどこかで引っかかるようになる。

 

でも、和田先生は「数値に一喜一憂してはいけない」とおっしゃっています。

 

  和田 そうですね。

 

まず一つは、例えば肝機能のGOTとかGPTという数値の基準値は、健康な人を1万人なら1万人集めてきて、その平均や標準偏差をもとに決めている。

 

しかし、もともと健康な人を選んでいるのに、それを使って異常といわれるのはどうなのかなと思います。

 

  もう一つは、血圧、血糖値、コレステロール値に関して「この値より高いほうが、死亡率が上がる」というデータは、ほとんどが海外の調査研究によるもので、日本でちゃんとしたものはほとんどないことです。

 

正常値といっても、本当にそれが絶対正しい値かということはまずわからない。

 

   ただ一つ言えることは、個人差があることです。

 

たばこを吸っても100歳まで生きる人がいるように人間は個人差がある。

 

僕は血圧が170くらいになり、薬を飲んで140まで下げたことがあります。

 

だけど、気分が悪くなり、頭がぼんやりした。

 

僕は文筆業ですから、それでは仕事にならない。僕の場合は170でちょうどいいわけですよ。 

 

 個人個人、その人に合った数値があるはずなのに、日本の医者は個人差どころか、80歳の人にも20歳の人にも同じことをする。

 

だから僕は「体の声を聞く」というのがとてもいいことだと思いますね。 

 

 南 なるほど。

 

もちろん個人それぞれの事情があり、きちっと医者の言うことを聞かなければいけない場面もあるが、妄信をせず、窮屈なところに甘んじないということでしょうか。 

 

 和田 もちろん、医師が理由をちゃんと説明してくれるのだったらいいですよ。

 

脳のMRI(磁気共鳴画像)を撮って「あなたは脳に動脈瘤(りゅう)があります。

 

血圧を下げないと動脈瘤が破れてしまう」とかね。

 

それを聞いて「あ、そうか」と思う人は、やっぱり医師の言うことを聞いた方が多分いいと僕は思います。

 

だけど、そういう理由がないのに、今の基準値を超えているからというだけでパシパシやられてもなという気はしますね。

 

男性ホルモン・テストステロンは意欲やボランティア、記憶力と関係します

「80歳の壁」を前に

 

 南 11月19日は国際男性デーです。

 

男性の健康に目を向けてジェンダー平等を促すことを目的としている日ですが、健康に大きくかかわるという男性ホルモン「テストステロン」について、お話をうかがえますか。

 

  和田 これは男性の性欲をつかさどるホルモンです。

 

それだけではなく、足りなくなると意欲がなくなります。女性に対してだけではなく、人間に関心がなくなる。

 

人づきあいがおっくうになる。

 

だから奥さんのお尻ばっかりにくっついて、「ぬれ落ち葉」と言われるようになるわけですね。

 

男性ホルモンが減ってくると筋肉がつきにくくなる。

 

  また、男性ホルモンを女性に投与してあげると、ボランティアをしたい人の割合が増えるという報告があります。

 

男性ホルモンの高い人はどうも弱者に優しいらしい。

 

それから記憶力ですね。

 

40代50代で記憶力が落ちてきたら、男性ホルモンを1回調べてもらった方がいいと思いますよ。

食べ物、運動、試してみて、元気になるかどうか 自分の幸せにつながる元気を選んで

 南 最後に、会場の皆様にメッセージをお願いします。

 

  和田 今の政治とかマスコミは高齢者をヨボヨボにさせることばかりやっているわけですよ。

 

車の運転免許を取り上げるにしても、コロナ禍による自粛を長くするにしても、ちょっと性的なことに関しても、ピリピリピリピリやっている。

 

少子化対策なんて、うまくいったとしても、彼らが労働力になるのは20年後です。

 

その頃にはもうAI(人工知能)を積んだロボットがほとんど人間の仕事を取ってしまうとさえ言われているわけですね。

 

  今の日本を救うのは、高齢者に元気になってもらうことが一番です。

 

もちろん、人によって個人差はあると思うけれど、医者の言うことを聞いても10年後20年後に生きているかどうかの保証は全くないんですよ。

 

だけど、食べ物を増やしてみるとか、運動を増やしてみるとかして、自分が元気になったかどうかは1週間か1カ月でわかることです。

 

だから、「当てにならない長生き」よりも「当てになる幸せ」につながる元気をぜひ選んでいただければと思います。

 

 ◆写真はいずれも、2023年11月19日に東京都千代田区の丸ビルホールで開催された「11月19日国際男性デー健康フェスタ2023」で撮影されました。

 

 文・橋本聡、写真・伊藤菜々子

 

 和田 秀樹さん(わだ・ひでき)

 

 精神科医・作家 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。著書『80歳の壁』(幻冬舎新書)は2022年年間ベストセラー総合第1位。そのほか『70歳の正解』『ぼけの壁』(以上、幻冬舎新書)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想者新書)など著書多数。 南 美希子さん(みなみ・みきこ) アナウンサー・エッセイスト テレビ朝日アナウンサーを経て独立。以降TVコメンテーター、ラジオ、司会、講演、執筆等で活躍中。日本抗加齢協会公認のアンチエイジングアンバサダーであり、美容・アンチエイジング医療にも詳しい。また、東京理科大学オープンカレッジで「話し方講座」を担当している。近著に『「老けない人」ほどよく喋る』(ワニブックスPLUS新書)。

 

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