【以下ニュースソース引用】
肉厚で強い甘み 野田村のホタテ
すし職人
しもやしき・あけみ 1986年、盛岡市鉈屋町出身。盛岡や東京で約12年間修業を積み、2016年、 …
朝日新聞記者
みうら・ひでゆき 1974年、神奈川県相模原市出身。2000年に朝日新聞入社後、南三陸駐在やアフ …
東北地方の三陸沖は、世界有数の漁場として知られます。
沿岸の漁港に水揚げされた新鮮で豊かな魚介を味わうことは、この地域を訪れる楽しみの一つです。
そんな三陸地方の四季折々の海の幸を、全国すし技術披露会で金賞を受賞し、盛岡市で予約制の店「すし心明(しんめい)」を経営する下屋敷明美さんが紹介します。
今回は、肉厚で、強い甘みが特徴の岩手県野田村のホタテです。
加熱でうまみ凝縮 鍋やフライもお勧め
今回は三陸の貝の定番、ホタテです。
子どもから大人まで大人気のネタですが、北海道や三陸などの各産地により、大きさや甘さ、食感などに違いがあること、ご存じでしょうか?
実は私の師匠が野田村出身で、修業中、「野田産のホタテは日本一だ。大きさの割に肉厚で、甘みも強い」とよく自慢されました。
その後、様々な産地のホタテを使ってきましたが、確かに、野田村のホタテは小さめでも膨らみが大きく、甘くておいしいと感じます。
師匠の故郷への思いが、私にすり込まれているのかもしれませんが……。
殻付きの生きたホタテを仕入れ、注文を受けてからむきたてを食べてもらいます。
殻を外すと、外側から、貝ひも、内臓、貝柱となっており、刺し身の場合、内臓を取り除き、ひもと貝柱をサッと洗ってお出しいたします。
貝柱を繊維に沿って縦に切ると、食感が良くておすすめです。
しょうゆを塗って貝柱を軽くあぶり、お餅のようにノリで挟んで食べて頂く「磯辺焼き」も、当店自慢の逸品です。
稚貝もよく使います。
おいしいだしが出るので、みそ汁やお吸い物、冬が旬のタラやカキなどと一緒に寄せ鍋にするのもいいですね。
三陸の海の幸を使った「磯ラーメン」にも入っています。
個人的には、半生に揚げた貝柱のフライが大好きです。
もともと甘みのある貝ですが、少し加熱することでうまみと甘みがぐっと凝縮されて、ホタテのおいしさが倍増いたします。
震災乗り越え生まれた「荒海ホタテ」
岩手県野田村のホタテは「荒海ホタテ」と呼ばれ、外海で育つため、肉厚できれいなホタテになると言います。
朝日新聞の三浦英之記者が訪ねました。
「海は荒れてますから、その覚悟で来てください」。
取材を申し込んだ直後、担当者に釘を刺された。
今回の取材先は、野田村で「荒海ホタテ」を養殖する漁業集団「荒海団」だ。
「荒海」だけでも荒々しいのに、「団」が付くと、さらに威圧的な感じを受ける。
午前7時。港に現れたのは、野田村漁協の小谷地勝組合長(55)と、地域おこし協力隊で漁業見習いの嶽間沢(がくまざわ)貴さん(45)。
言葉少なに、漁船に乗り込む。
沖合3キロ。船は波を切って進む。小谷地さんが強風の中で言う。
「ここは外海だ。波は四方八方から来るぞ」
ホタテの養殖は通常内海で行われる。
しかし野田村に穏やかな湾はなく、あるのは、荒れた太平洋のみ。
「俺たちには、荒海しかないんだ。人間には厳しいが、ホタテには良い」
「荒海ホタテ」はその名の通り、荒れた外海で養殖される。
ラーバ(ホタテの赤ちゃん)を沖合で採取し、固定せずにカゴの中で育てる。
自由に動くことができるため、身がきれいで肉厚なホタテが育つ。
荒海での作業は危険と隣り合わせだ。
波が高くて船が出せない日が多く、風が強くて燃料費もかかる。
他方、外海は潮の流れが速く、水質が良い。
ホタテのエサとなるプランクトンも、豊富に存在している。
きっかけは、東日本大震災だった。
かつて約220あった船は、津波で3隻しか残らなかった。
一方、野田村に入ったボランティアたちは、ホタテを食べて目を丸くした。
「うまい!」。
ボランティアや広告会社などの手を借りて、「荒海ホタテ」のブランド名が生まれ、「荒海団」が結成された。
「『荒海団』は漁師だけじゃねえ。ホタテを支える村人みんなが『荒海団』なんだ」
低気圧が激しく海をかき乱す。荒海団の冬が来た。
文・写真:三浦英之(朝日新聞記者)
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