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「自分は運が悪い」と考えがちな人の心理的共通点 「自己愛が満たされないことが原因」と精神科医
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「自分は運が悪い」「不幸だ」と考えがちな人の心理的な背景とは……(写真:Graphs/PIXTA)
あなたは、自分のことを「優しい人」だと思いますか?
人に優しくすると、自分の気持も良くなります。
それによって、脳内にセロトニンなどの神経伝達物質が分泌されて、心身にいい影響が生まれることが科学的に明らかになっています。
しかし、世の中全体がギスギスとしていますから、どうしても自分のことを優先して考えるようになり、周囲の人を慮るような精神的なゆとりを見失いがちです。
こんな時代だからこそ、「優しさとは何か?」を考えることで、その意義を見つめ直す必要があるかもしれません。
精神科医である和田秀樹氏の新刊『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』をもとに、優しさの意味と意義を3回に渡り解説します(今回は第2回)。
■金持ちはなぜ喧嘩をしないのか?
日本には、「金持ち喧嘩せず」という諺がありますが、これは心理学的にも正しい考え方です。
金持ちが喧嘩をしないと考えられる根拠は、大きく分けて2つあります。
【根拠①】
「喧嘩には生産性がない」と合理的に判断している
お金を持っている人は、ムダなことや生産性のないことを嫌います。
些細なことで喧嘩をしても、誰の利益にもならないことを知っているから、何かトラブルに遭遇しても、喧嘩という手段を選択しません。
逆の見方をすれば、「意味のない喧嘩は避ける」という合理的な判断ができるから、金持ちになっているともいえます。
【根拠②】
生活の心配がないため、気持ちに余裕がある
金持ちが喧嘩をしないのは、気持ちに余裕があるからです。
お金の不安があると、焦りやイライラが募って、人に冷たくなりがちですが、経済的な心配とは無縁な生活をしていれば、メンタルが安定します。
気持ちに余裕があるから、人に優しくできるのです。
別の視点で見ると、金持ちは「自己愛」が満たされているから、人に優しくできる……と考えることもできます。
自己愛とは、自分で自分のことを愛せるとか、自分が人から愛されているという感覚を指します。
■優しさは自己愛の成熟度で決まる
現代精神分析学では、親の愛情をいっぱいに受けて育った人や、子どもの頃からほめられて育った人ほど、自己愛が満たされるとされています。
自己愛は年齢を重ねるごとに成熟すると考えられており、自己愛が成熟すると、自分以外の人にも愛情を注げるようになるといわれています。
オーストリア出身の精神科医ハインツ・コフートは、この状態を「成熟した自己愛」と呼んでいますが、私は金持ちにもこの理論が当てはまると考えています。
①経済的な不安がなく、焦りやイライラがない
↓ ②自己愛が満たされている
↓ ③気持ちに余裕がある
↓ ④人に優しくできる
自己愛が満たされていると、人に親切にしたり、優しくすることができるため、ますます人に好かれるという好循環が生まれます。
逆に、自己愛が満たされていないと、考え方がネガティブになって、人に対して厳しくなる傾向があります。
理論的にいえば、大金持ちの「富裕層」や、圧倒的な美貌を持つ「美人」、頭のいい「高学歴の人」というのは、自己愛が満たされており、自己肯定感も高いため、人に対して優しい傾向があるはずですが、現実的には、必ずしもそうではないケースが少なくありません。
あなたの周りにも、鼻持ちならない金持ちや、性格の悪い美人、人を見下すような高学歴の人が、1人くらいはいると思います。
なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?
その原因は、現在のような状態になるまでの過程で、さまざまな辛酸を舐めてきたことにあります。
ド根性で這い上がってきた金持ちの多くは、これまでに何度となく嫌な思いを経験していることで、「自分は運が悪い」と思っており、気迫と努力で勝ち抜いてきたという自負があるため、自己愛が満たされていません。
彼らの目には、「貧乏なヤツは努力をしないからだ」と映っているから、周囲の人に冷たい態度を取りがちです。
■美人や秀才が抱えるルサンチマン
圧倒的な美人の場合も、嫌な経験を何度もしてきたはずです。
たまたまルックスがいいというだけでイジメの対象にされたり、たくさんのダメ男に言い寄られるなど、不愉快なことばかりが続いていれば、必要以上に周囲を警戒するようになります。
いつしか自分のルックスが重荷に感じられて、自己愛を持つことができなくなってしまうのです。
周囲から「頭がいい」といわれて育った高学歴の人には、親に無理やりに勉強させられてきたという人も少なからずいます。
あらゆることを犠牲にして、つねにいい成績を取ってきたが、周りの連中は異性と遊んでばかり……という経験を繰り返してくると、東大を卒業したとしても、自己愛を満たすことができず、自然と人を冷ややかに見るようになります。
こうした感情をドイツの哲学者ニーチェは「ルサンチマン」(弱者が敵わない者に対して抱く怨恨や嫉妬)と称しています。
大金持ちや美人、高学歴など、圧倒的に恵まれていると思えるような人にも、それなりに何かしらの事情があることを知っておけば、彼ら彼女らに腹の立つような対応をされても、少しは優しくできるのではないでしょうか。
自己愛というのは、視点を変えれば、「人に愛されたい」とか、「人に褒められたい」という欲求でもあります。周囲の人に好かれたり、認められたりすれば、承認欲求だけでなく、自己愛も満たされている状況といえます。
逆に、そうした欲求が満たされなければ、自己愛も満たされることはありません。
自己愛が満たされない心の状態を、一般的には「欲求不満」といいます。
欲求不満の状態が慢性的に続くと、人に優しくしても、喜びや幸せを感じられなくなるだけでなく、相手は幸せなのに、なぜ自分は不幸なのだろう……とネガティブな方向に考えが傾いてしまいます。
自分は運が悪いと思ってる人は、自己愛が満たされてないことが原因です。
■自分だけ不運だと思い込んでしまう
最近は、通り魔的な凶悪事件が多くなっていますが、ほとんどの場合は、自己愛が満たされていないことが起点になっています。
「自分はなぜ、これほど社会にいじめられなければいけないんだ」とか、「俺は仲間はずれにされている」と思い込んで、自分は運が悪いから、もう生きていても仕方がない……という極端な発想に向かってしまうのです。
彼らの目には、幸せな家庭を持って暮らしている人や、きちんと仕事に就けている人が、「アイツらは運が良くていいな」と映っており、自分のことを「自分は運に見放され、神様にも見捨てられた人間」と思い込んでしまいます。
自己愛が満たされていないと、ひがみっぽくなったり、攻撃的になってしまうこともあるため、余計に孤立することになります。
凶悪事件に発展するほど追い詰められるのはレアなケースですが、人に対して優しくなるだけでなく、心のコンディションを整えるためにも、自己愛を満たすことは軽視できない大事なポイントといえます。
和田 秀樹 :精神科医
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