【以下ニュースソース引用】
SEKAI NO OWARI『ターコイズ』に感じた胸騒ぎの正体
![](https://www.asahicom.jp/and/data/wp-content/uploads/2021/09/32c8d04468a49be15b4c5d72f36314fe-2.jpg)
![いしわたり淳治](https://www.asahicom.jp/and/M/wp-content/uploads/2019/02/forweb_ishiwatarijunji_pic.02jpg.jpg)
作詞家・音楽プロデューサー
1997年にロックバンドSUPERCARのメンバーとしてデビューし、オリジナルアルバム7枚、シン …
音楽バラエティー番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で披露するロジカルな歌詞解説が話題の作詞家いしわたり淳治。
この連載ではいしわたりが、歌詞、本、テレビ番組、映画、広告コピーなどから気になるフレーズを毎月ピックアップし、論評していく。今月は次の6本。
1 “首を飾る君のネックレス”(SEKAI NO OWARI『ターコイズ』作詞:Fukase)
2 “にんにく、にんにく”
3 “お風呂が嫌いというか、お風呂に入らないのが好き”(ビスケットブラザーズ 原田泰雅)
4 “常識を疑え”(桑田真澄)
5 “死語”
6 “止まってる時計は1日に2回正確な時間を指す”(伊集院光)
日々の雑感をつづった末尾のコラムも楽しんでほしい。
![SEKAI NO OWARI『ターコイズ』に感じた胸騒ぎの正体](https://www.asahicom.jp/and/data/wp-content/uploads/2024/01/kotobagari-32_01_z06_1.jpg)
KIRIN氷結のCMで俳優の高畑充希さんとSEKAI NO OWARIのメンバーが楽曲『ターコイズ』を演奏して歌っている。
CMは「首を飾る君のネックレス」と歌うところから始まるのだけど、その歌詞を耳にするたび、なんだか少し胸が騒ぐ。
この胸騒ぎの正体は何なのだろうと考えた時、このサビの一行目だけを切り取って聞いた時、ものすごく当たり前のことを歌っているように聞こえるからなのだと思った。
これがもし、たとえば「首で“光る”君のネックレス」や「首で“揺れる”君のネックレス」という具合に、その瞬間のネックレスの描写が歌われていたら、おそらく違和感なく聞こえたはずである。
でも、唐突に「首を飾る君のネックレス」と言われると、そもそもネックレスは首を飾る物なので、ネックレスというアクセサリーの機能を説明をしているように聞こえて、「えっ? 今、何て?」となるのだ。
塩って塩っぱい、みたいな感じというか。
もちろん、この歌を全編通して聞けばこの歌詞の “君の”の部分が重要であることはすぐに分かる。
でも、サビの入り口だけを切り取られると、この違和感が生まれて、妙にハッとする歌詞に聞こえる。
そう感じるのは、私だけだろうか。
実は、あえて当たり前のことを書く、みたいな手法は作詞ではよく使われている。
古くは南沙織さんの『17才』などもそうかもしれない。
最後に「私は今 生きている」と歌われるけれど、これも意地悪くいうならば、当たり前である。
生きているから、歌っているのだから。
でも、「私は今 生きている」と歌うことで、その瞬間、間違いなく、格段に命の輝きが増して聞こえるのだから、言葉というのは不思議だ。
つくづく面白いなと思う。
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12月17日放送のCBCテレビ『ドーナツトーク』でのこと。「あなたの知っている都市伝説は?」という街頭インタビューで、ある女性が「私の地域だと、なくした物を捜すときに、にんにく、にんにく……って唱えるとなくした物が見つかるっていう都市伝説がありました。
なくした物は、魔女が隠してるからって言われてて、魔女がにんにくを嫌いだから、にんにくって言うと、出てくるよって。
物をなくしたとき、頭をよぎって、心の中で唱えてます」と答えていた。
私は初めて聞いたけれど、周りの友人知人に聞いてみると、何人かは何となく聞いたことがあると言っていたから、それなりに有名な言い伝えなのだと思う。
ドラキュラがにんにくを嫌いなのは聞いたことがあるけれど、魔女もそうだったとは知らなかった。
その名前を言うだけで有効なら、にんにくの入った食べ物、たとえば焼き肉、ギョーザ、ペペロンチーノを食べた後などは、絶対に物をなくしたりしないに違いない。
この呪文は見えない物にも効き目があるのだろうか。たとえば青春時代の夢、出会った頃の恋心、家族への思いやりの気持ち、みたいな物はどうなのだろう。
ある日、家で夕食を食べていると、息子たちが食べながらふざけてばかりいて、ひじがコップを倒し、牛乳がテーブルと床に広がった。
さすがに怒りたくなったが、この腹立ちは、おそらく魔女が私の大切なやさしい気持ちを隠したからに違いない。
ひとつ大きく息を吐き、ゆっくりと立ち上がり、にんにく、にんにく……とつぶやいて冷蔵庫を開け、買い置きのキムチを取り出し、ギギギっと奥歯でかみ締めた。
すると、あら不思議。
なくしたはずのやさしさが返ってきて、怒りはどこかへ行ってしまった。
にんにく、にんにく。信じるか信じないかはあなた次第です。
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12月14日放送のテレビ朝日『アメトーーク!』の「もっとやれるはずだったのに…2023反省会」でのこと。
2022年キングオブコント優勝のビスケットブラザーズ原田泰雅さんが、自身の一年の活動を振り返り、風呂に入らないのをカミングアウトしてからさらに人気が落ちたと話した。
そして、「お風呂が嫌いというか、お風呂に入らないのが好きなんです」と笑った。
よく長所と短所は表裏一体という話を耳にする。
たとえば、“人の意見に流されない”は長所だけど、“マイペース過ぎる”は短所。どちらも同じ性格のことを言っていても、言い方で印象が大きく変わる、といった類の話である。
基本的に、文末がネガティブな言葉で終わるよりも、ポジティブな言葉で終わった方が、相手に良い印象を与えることができる。
「汗をかくのが嫌い」は拒絶された印象を与えるが、「汗をかかない遊びが好き」は遊びに誘われることは嫌でないような印象を与える。
冒頭の原田さんの言葉はこのロジックでは拭い切れない何かがあるけれど、基本的には、ネガティブをポジティブに言い換える練習はしておいて損はないなと、あらためて思った。
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12月14日放送のTBS『週刊さんまとマツコ』でのこと。
元プロ野球選手の桑田真澄さんとMattさんが親子で共演していた。
幼い頃から野球が上手だったMattさんに無理に続けさせなかったことについて、桑田さんは「彼が二十歳になった時にも伝えてるんですけど、自分の人生だから好きなように、充実した人生を歩みなさい、と」そういう思いで接してきたのだと話した。
それでも、Mattさんの容姿がどんどん変化していくのは親としては心配もあったようで、「それ、大丈夫か?」という言葉は父として掛け続けてきたと笑った。
続けて、桑田さんは「まあ、野球やりながらも、常に常識を疑うっていう考えを持ってやってきましたんで。
これが常識って言われるけど、本当に常識なのか、っていうのは自分の中では常に問題意識を持って過ごしてきたんですね。
やっぱ、時代が流れると、今は(野球も)真逆の指導法ですよね」と、殴られない日はなかったという自身の青春時代の部活動を振り返った。
男性がメイクをすることも常識になった今、自分のスタイルを貫き続けるMattさんが、「小さい頃から常識を疑えって言葉ばっかり聞いたんで、疑いすぎたのかしら〜」と、口元を隠して笑う姿が印象的だった。
常識を疑うだけならたぶん誰でもできる。難しいのは、常識を疑ったあと、それに基づいた行動を、自分を信じてやり続けることだと思う。
画面に映った親子のほほ笑ましいやりとりは、 父が息子に望んだ“充実した人生”のひとつの素敵な形に見えた。
「しごって、何ですか?」
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先日、若者たちと話していたときのことである。
「そういえば、女子力って言葉も全然聞かなくなったね。時代だねえ、すっかり死語だもんなあ」と私が話すと、「しご? しごって、何ですか?」と、若者の中のひとりに聞き返された。彼は“死語”という言葉を初めて聞いたらしい。
驚いたのはこちらである。まさか“死語”が死語になっていたとは思わなかった。
たしかに、言葉の流行のサイクルは加速の一途をたどっていて、全世代が共通して使うような明確な“流行語”みたいなものは、明らかに年々減ってきている気がする。
2023年のユーキャン新語・流行語大賞はアレ(A.R.E.)だったけれど、プロ野球とプロレスの話をしたらオジサン認定とすら言われる昨今、若者でその言葉を使っている人に出会ったことはない気がする。
若者たちは、同世代の仲間たちが普段使っている言葉でしゃべっているだけで、仮に最近まで頻繁に使っていた言葉が、ある時から使われなくなったからといって、それにわざわざ “死語”などと大袈裟に名づける感覚自体、よく理解できないのだろう。
彼らの日常には、“懐かしい言葉”はあっても、“死語”はないのである。
彼らに死語を説明しようと、その場でスマホに“しご”と打ち込むと、“死後”や“私語”は出てきても、“死語”は結構後ろの方にならないと、変換の候補にも上がってこなかった。思いがけず時代を感じた瞬間だった。
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12月31日深夜放送のテレビ東京『あちこちオードリー』でのこと。
2023年にお笑いコンビのジョイマンが再ブレークしたことについて、伊集院光さんが「止まってる時計は1日に2回正確な時間を指すけど、10分進んでる時計、10分遅れてる時計は一生正しい時間は指さないじゃない?」と言った。
仕事の打ち合わせをしていて、狙うはレッドオーシャンか、ブルーオーシャンか、みたいな話になった時、私もよく似たようなことを考える。
それは、新しい何かを生み出す仕事に携わるすべての人がそうだと思う。
流行の背中を追いかけても、やっと追いつく時には、肝心の流行の方が失速していることのほうが多い。
それなら最初から流行とは違うことをやるべきなのだが、まだ誰もやっていない何かに照準を定めて、虎視眈々とやり続けるのは、体力的にも精神的にも大変なことだ。
そして、いつの日かようやく流行の兆しをつかめたとしても、前述の時計の例えで言うところの“止まっている時計が正確な時間を指す”のは、ほんの一瞬だけなので、その瞬間から時代と共に正確に動き続けられる体力と精神力を手に入れておかなくては、またすぐに時代に置いていかれてしまうのだ。
未来をどう考えて、いま何をするべきか、そんなことが凝縮されている一言だと思った。
<Mini Column>こいつぁ春から縁起がいい
初夢は、一番縁起がいいのは富士山、二番目にいいのは鷹、三番目にいいのは茄子の夢なのだそう。
山梨県や静岡県に住んでいる人たちと、私のように富士山から離れた地域で暮らしている人とで、夢に富士山が出てくる確率、レア度は全然違うと思うのだけれど、それでも縁起の良さは一緒なのだとしたら、何だかちょっと不公平だと思わざるを得ない。
そして、これにはまだ続きがあって、四扇、五煙草、六座頭と続くらしい。
残念ながら富士山も鷹も茄子も扇も煙草も座頭も、私の普段の暮らしとはどうにも縁遠い。
そうなるとこの先、何度新年を迎えようとも縁起のいい初夢など、見ることはなさそうである。
でも、それではちょっとさみしい。
なので、そもそもどうしてこれらが縁起が良いとされているのかを調べてみたい。
諸説あるようだが、富士山=日本一、鷹=百鳥の王、茄子=成す、扇=末広がり、煙草=(煙が)上にのぼる、座頭=毛がない(怪我ない)、という感じらしい。
なるほど。
ということは、それぞれの理由に基づいて、事前に自分の暮らしの身近なものに置き換えておけば、私も縁起のいい初夢を見ることができるのかもしれない。
というわけで、来年から初夢は、一トヨタの自動車ならどれでも(日本一の自動車メーカー)、二矢沢永吉さん(ロック界のスーパースター)、三那須高原(成す)、四すゑひろがりず(末広がり)、五ドローン(上にあがる)、六E.T.(毛がない)というルールに決めた。今から来年の正月が楽しみで仕方がない。