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長生きをして、何をしたらいいのか──。「老い」の達人が明かす死ぬまで満足な生き方の準備

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現代ビジネス

写真提供: 現代ビジネス

 

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 「老いが怖い」と思っている人へ、「老い」の達人が初タッグで、「幸齢者」になる秘訣を語り尽くします!! 

 

 大べストセラー『80歳の壁』著者の精神科医・和田秀樹さんと、90代のいばら道を痛快に切り開く評論家・樋口恵子さんが、『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』で伝えたいこととは…!? 今回樋口さんは、満足できる老後には3つの「しょく」があるといいと言います。また長い老後をどう生きるかを、40代から考えていた『思考の整理学』の著者外山滋比古さんのアイディアも参考になるでしょう。

 

 前編記事<高齢者は「正常値」至上主義の医者にかかってはいけない。

 

和田さんが樋口さんに語る医療の非常識​>

 

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【写真】高齢者は「正常値」至上主義の医者にかかってはいけない

長生きをして、何をしたらいいのか

樋口恵子先生

 

 樋口 ある方が、医師に「長生きしますよ」と言われたそうです。

 

その方、途端にあわてふためいて、「どうしましょう。そんなに長生きして、何をしたらいいのかしら」と。

 

  何をして生きていくかって、ずいぶん哲学的な問いだと思いませんか。

 

これから社会に出る若い学生さんだったら、何の仕事をして食べていくかという意味合いが強いと思いますが、高齢になってからの「何をして生きていくか」という自問は、もっと根源的な問いかけのようにも思えます。

 

  和田 いちばん大事なことですよね。

 

高齢期に要介護にならないように、認知症にならないようにということはよく語られますが、「何をしたいか」という問いかけはあまりされません。

 

でも、本来は、これをやりたいという意欲や目標があって、介護サービスや医療はその意欲や目標を応援するためにあるんだと思うんです。

 

  高齢期に何をしたいか?

 

 何でもいいと思います。

 

仕事でも、趣味でも、ボランティア活動でも、自分が楽しんでできることなら何だっていい。高尚なことでなくてもいい、異性にもてたい、というのでもいいじゃないですか。

長野を長寿県にした3つ目の「しょく」

Photo by iStock

 

 樋口 命を支えていくうえで、3つの「しょく」が大切だと私は思っています。

 

1つは「食」。生きているかぎり、食べることから引退できないですものね。

 

2つ目は「触」、つまり、ふれあい、人とのつながりです。

 

そして、3つ目が「職」。

 

仕事ですね。元気なうちは働いて、少なくてもいいからお金を得る。

 

これは人にとって大きな喜びです。

 

また、ボランティア活動をして社会とつながりを持つことは、収入と同じくらい価値のあるものを得られます。

 

この3つの「しょく」があって、なおかつ昼寝つきの生活ならば、なかなかいい高齢期ですよね。

 

  和田 長野県は、長寿県として知られていますが、長生きに貢献している大きな要因をご存じですか。

 

実は、働くことなんです。

 

長野県は高齢者の就業率がダントツに高いのです。

 

農業県なので、高齢になっても農業をしながらうまくすれば一生働くことができます。

 

自分の裁量でできる小規模の田畑があって、それを維持して働くことで、お金も得られる。

 

それが働き甲斐となって温泉に行ったり、おいしいものを食べたり、孫にお小遣いをあげたりしているんです。

 

これが心と体の健康にはとてもいいんですね。

 

  樋口 高齢者にとって、働けるというのは本当に大きいことだと思います。

 

農業というのは懐が深くて、ある程度ヨタヘロになっても、それなりに働くことができます。 

 

 聞いた話ですが、長く農業をやってきた男性が92歳になっても田んぼをやっているそう。

 

要介護2で、両手に杖をつきながらゆっくり歩くのがやっとという状態ですが、大型の農業機械に乗り込むのを家族が介助してあげると、機械の操作や運転はお手のもので田植えや稲刈りができる。

 

でこぼこした畑のなかを歩いたりするのはできないけれど、まるで車いすがわりに畑を走り回っているそうです。

 

農繁期になると「畑が忙しいから、デイサービスは休む」とそわそわしだして。

 

自分の仕事や役割を持っているというのは老いに対して強いですね。

 

  和田 農業をしている地域ではそういう方も多いでしょうね。

 

長野が長寿県にのし上がったときに、その理由は昆虫を食べているからではないかという珍説がありました。

 

長野は海なし県なので魚が食べられず、しかたなく昆虫がタンパク源になったとはいえ、その後昆虫食は減っているのに、むしろ長生きになっています。

 

  また、みんなが山歩きしているからだという説も浮上しました。

 

結論から言えば、今、長野の人たちは山歩きするどころか一家に1台以上車がある家も珍しくなく、それがなければ生活できなくなっているわけです。 

 

 長野は高齢者の就業率が全国でもダントツに高いので、やはり働くというのは長生きにつながることが考えられます。

 

仕事も、結婚も二毛作?

和田秀樹先生

 

 和田 そもそもある年齢になると退職しなければいけないというのは、年齢差別です。

 

最近は一部の企業で定年を撤廃し、働く意欲のある70代は働きつづけられるというところが出てきました。

 

それでもまだまだ一部の動きです。

 

  僕は実は発達障害があり社会適応が下手で、37歳で常勤の医者を辞めました。

 

そのときに、とにかく和田秀樹という名前で食えるようになろうと、チャレンジし続けてきました。 

 

 東京大学医学部を出ている人たちは、その当時はみんな教授を目指してガツガツと競争していましたから、僕はほとんど落ちこぼれとしてバカにされていたんです。

 

けれど、63という年齢になってくると、教授を目指していた同級生たちが「和田はいいよな」と。

 

病院長になった友人も70歳の定年までにはまだ時間はありますが、それでも「おれたち、これからどうしようか」とぼやくんです。

 

  やっぱり、肩書がなくなったときにどうするかということを、早くから考えて生きてきたほうが賢いと思うんですよね。

 

定年で会社に追い出されてどうしようというのではなくて、次の人生、どう生きるか。やってやろうじゃないかと思えるくらいの意欲は、自分で持っておきたいものです。

 

『思考の整理学』の著者外山滋比古先生は40代になるころ、本業は学者ですが、一生続けられる仕事は何かを考えたそうです。

 

その結果、物書きがよいと考え、晩年まで働くことができました 

 

 また、人生二毛作という考え方も提唱されています。二毛作とは、一年のうちに同じ畑で別の作物を収穫すること。

 

会社員なら、定年退職などを機に、まったくやったことのない仕事を始めると、人生がおもしろくなるというのです。

 

生き方も、会社勤めのときはまじめ人間でやってきたら、定年後はタレントの高田純次さんのように、柔軟なテキトー精神で生きてみるというのも、二毛作と言えるでしょう。

 

 ついでに言うと、僕は結婚も二毛作があってもいいと思います。

 

熟年離婚が増えるなか、子育てをする結婚と、老後を一緒に楽しめるパートナーとの結婚というような二毛作の結婚観が普及すれば、高齢期の楽しみが増えると思っています。

「人間、死んでからだよ」

Photo by iStock

 

 樋口 初めからライフワークや老後をどうするかという計画を持っていなかった人でも、人や社会とかかわっているなかで、自分にできることが見つかることがあります。

 

  高齢者に参加してもらいたい集まりなどを企画しますと、わりと女性は気軽に参加してくれるのに対して、昔から男性は腰が重いと言われてきました。

 

けれど、よくよく男性に話を聞いてみると、人の役に立ちたいという意欲が高いのです。

 

  北海道にはNPO法人札幌微助人倶楽部という組織がありますが、立ち上げの中心になったのは、ボランティア活動に熱心な男性だったといいます。

 

このNPOは会員制の有償ボランティア組織で、家事援助や通院介助、話し相手、除雪や庭仕事、パソコン支援、通院や買い物などの移送サービスなどを展開しています。

 

私は、この「微助人」という言葉がいいなと思って、ずっと注目しているんです。 

 

 この会に限らず、ちょっとした助け合いをしたいという男性はたくさんいるので、そうした男性をうまく引き出して、ボランティアの輪を広げたら楽しくなると思いますね。

 

女性はどちらかというと、おしゃべりするだけで人とつながれますが、男性は意義のある活動とかでないと引っ張り出せないんですね。まじめなんです、男の人は。

 

  和田 精神科医の土居健郎先生は、晩年、「人間、死んでからだよ」とよく言っていました。

 

土居先生は2009年に89歳で亡くなるまで、生涯現役を貫いた方でした。 

 

 当時私はまだ若く、この言葉の意味が理解できませんでしたが、このごろ、何となくわかってきたように思います。

 

つまり、生きているときは他人の評価なんて気にせず、自分の思うようにやれ、評価は死んだあとからついてくるという意味ではないかと思うのです。

 

  何を生きがいとするかは自由。

 

何であろうと、力を尽くせるものを持っているのは、すばらしいことです。

ユーモアが介護保険制度創設の梃子になった

 和田 脳は楽しいことが大好きです。

 

特に、良好な人間関係には明るいユーモアがあふれていて、いい空気が流れています。

 

樋口さんは、長年、さまざまな方たちと協力し合って、介護の社会化の実現に取り組んでこられましたが、何か秘訣のようなものはあるんですか? 

 

  樋口 今、ユーモアとおっしゃいましたが、人との関係はユーモアが大事だと思います。 

 

 私にユーモアを教えてくれたのは、小学校から大学までずっと一緒だった友人です。

 

「蛍の光」なんかをひょうきんな替え歌にしたり、先生の特徴などを替え歌にして、まわりの人を笑わせていました。

 

いいなと思って、彼女を真似しているうちに、いつのまにか私もクセになってしまいました。

 

  介護保険制度の創設に取り組んでいたとき、みんなで都はるみの「北の宿から」を替え歌にしたんです。

 

「あなた生きてもいいですか~ 長生きしてもいいですか~ 家族だのみの介護では~ 老いの心はやすみません かいご~ほけんは~まぼろ~しでしょう~」って大勢の集会で、即席で歌ったんです。

 

そしたら、加藤シヅエ先生が聞いていて、「あなた生きてもいいですか、長生きしてもいいですか」というところで、思わず涙がこぼれました、とお葉書をくださって。

 

次の集会で、「加藤先生からこんなお葉書をちょうだいしました」と発表して、またみんなでワーッと盛り上がりました。 

 

 こちらは、自分の考えがどうしたら伝わるか考え、シャレや語呂合わせなどをひねり出すのですが、そうしたことを先輩たちはあたたかく見守ってくださった。

 

加藤先生は90代になっても情報を自ら集めて、集会に足を運んで発言してくださり、若いモンを励ましてくださいました。

 

先輩たちのお導きのおかげだと感謝しながら、私も同じように、さりげなく後輩たちを応援したいと思っています。

 

和田 秀樹(精神科医)/樋口 恵子(評論家・東京家政大学名誉教授)

 

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