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高齢者は「正常値」至上主義の医者にかかってはいけない。和田さんが樋口さんに語る医療の非常識

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現代ビジネス

写真提供: 現代ビジネス

 

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 「老いが怖い」と思っている人へ、「老い」の達人が初タッグで、「幸齢者」になる秘訣を語り尽くします!!

 

  大べストセラー『80歳の壁』著者の精神科医・和田秀樹さんと、90代のいばら道を痛快に切り開く評論家・樋口恵子さんが、『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』で伝えたいこととは…!?

 

 人生100年時代を快適におくるために、医療の常識を疑うことも大事です。

 

たとえば、「正常値」至上主義。どうやったら元気になるかを考えなければいけないときに、塩分とか、脂肪分とか、病気のリスクになるものを「引き算」することでかえってフレイルになる危険性も……。

 

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  【写真】「老い」の達人が明かす死ぬまで満足な生き方の準備

高齢者をヨボヨボにする医療

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 樋口 和田先生より若い世代の医学教育は、どんなふうに変わったんですか?

 

   和田 たとえば、内科医であればひととおりのことはできなきゃいけないとか、聴診器もちゃんと当てないといけないという発想から、ある時期から検査データがいちばん大事という「正常値」至上主義の医学教育に変わってきました。

 

  そもそも正常値というのは、平均値を中心に高低95%の人の数値のことです。

 

この範囲に収まらないと「異常」ということになります。

 

けれど、数値は本来、人それぞれです。

 

若い人と高齢者では違いますし、体質や環境、性別や体型、職業によっても違います。

 

正常値なのに、病気になる人もいますし、異常値でも、病気にならない人もいるのです。

 

数値が「異常」だから、長生きできないというエビデンスはありません。

 

その人の正常が、ほかの人の正常と同じとはかぎらないのです。

 

  もっと言えば、80代まで元気に生きてこられた人は、それ自体がエビデンスでしょう。

 

検査データが「異常」であっても、その人には正常ということです。

 

なのに、数値が異常だからということで薬を服用したら、かえってよくない結果になるのは予想できるでしょう。

 

  実際、高血圧と診断された高齢者が降圧剤で無理やり血圧を下げた結果、低血圧になってフラフラしている。

 

人間は低血圧になると、頭がフラフラしたり、体がだるくなったりして、活動量が下がります。

 

高血圧はワルモノというイメージがありますが、人間は活動すると血圧が高くなります。

 

100メートル走ればたいてい血圧は200ぐらいまで上がります。

 

栄養状態が悪かった昭和30~40年代は150ぐらいで血管が破れていましたが、今は栄養状態が改善し動脈が破れなくなったので、無理に血圧を下げなくてもいいのです。

 

  おまけに、塩分は控えましょう、脂っこいものは控えましょう、肥満の人は運動して痩せましょうと言われ、高齢の患者さんはストレスを抱え、ますます元気を奪われていきます。

 

私は「高齢者をヨボヨボにする医療」と言っています。

 

  それでも医者は、心筋梗塞や脳卒中になりたくなかったら血圧を下げましょうと言うわけですが、薬で心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げられるかは、日本では大規模比較調査がないので本当のところはわからない。

 

それよりも、「正常値」至上主義の治療によって意欲や活力を奪われてヨボヨボになることのほうが、高齢者にとっては痛手だと思いますね。

 

  樋口 「さじ加減」という言葉がありますように、医者は患者さんひとりひとりの状態に合わせて、薬を加減していると思っていたのですが、今の医療はそういうことが難しいのですか?

 

   和田 いいご指摘だと思います。

 

高齢者というのは体中で老化が進んでいます。

 

たとえば、動脈硬化がある程度進んで、血管の内部が狭くなっている人に、血圧が高いからといって降圧剤で血圧を下げてしまうと、血流の勢いがなくなり、狭くなった血管のなかを血液が流れにくくなってしまいます。

 

その結果、酸素や糖分が十分に届かず、頭がぼーっとする、意識が飛ぶといったさまざまな症状を起こします。

 

脳にダメージも大きく、認知症を進行させるおそれもあるでしょう。

 

そのため、高齢者は血圧や血糖値を正常値よりも高めにコントロールするほうが、健康になれると私は思っているのです。

 

80歳過ぎたら健診は受けなくていい

樋口恵子先生

 

 樋口 私もこれまで検査データの結果に一喜一憂していましたが、「正常値」であることと、体の調子がいいということは、実感としてつながりませんね。

 

和田さんは「80歳を過ぎたら、老人健診は受けなくてもいい」と健康寿命の記事でおっしゃっていましたがもう少し教えてくれませんか。

 

  和田 老人健診を含めて、具合も悪くないのに検査をして異常データが見つかったときに、それをいじったほうがいいのか、いじらないほうがいいのか、わからないのです。

 

先ほども言いましたように、具合がいいのに薬を飲み始めることで、悪くなる可能性があります。 

 

 私自身は、80歳を過ぎたら、具合が悪くないのに受ける老人健診は必要ないと思っています。浴

 

風会で学んだことのひとつに、前に述べましたが、「知らぬが仏」というのがあります。

 

浴風会では年間100例ほどの解剖をしていましたが、85歳以上で体にがんのない人はひとりもいませんでした。

 

日本人の3分の1はがんで亡くなりますが、残りの3分の2はがんがあっても知らぬが仏で、結果的に別の原因で亡くなっているんです。

 

  アルツハイマー型認知症もそうです。

 

脳の検査をしたら、残念ながら85歳を過ぎると、やっぱり全員にアルツハイマー型の変性が見つかります。

 

もちろん、多い人と少ない人がいて、一定量多くなると認知症ということになります。

 

でも、やっぱりそれだって、ふつうに生活できるなら、知らぬが仏のほうが、僕はいいと思います。

 

わざわざ自分で病気を探して、早期発見、早期治療ができたといっても、本当にどれだけ効いているのかが私にはわかりません。

 

  ただし、80代でも90代でも、具合が悪いとか、症状によって生活に支障が出ているという場合は、検査を受けて、必要な治療を受けることが大切です。

塩分や脂肪分など我慢しても長生きできる証拠なし

和田秀樹先生

 

 樋口 「長生きはしたくない」という人の気持ちをよく分析してみると、「好きなものを我慢してまで長生きしたくない」とか、「治療のために自由を奪われてまで長生きしたくない」という人も多いのではないかと思います。

 

命を長らえることと、それによって大切に思っていることを犠牲にすること、その両方をてんびんにかけているわけですね。

 

  私は延命治療については、娘と意見が一致しており、苦痛除去以外の延命治療はしないということにしています。

 

でも、通常の健康管理においては、専門家である医師の言うことは尊重してよく聞くほうだと思います。

 

  和田 日本の医者は、長生きしたかったら、塩分や脂肪分やいろんなものを控えなさいと我慢させるのですが、我慢したからといって長生きできる証拠はないんです。

 

もしかしたら、我慢のし損かもしれない。その極端な例が、この数年続いた新型コロナ対策です。

 

  樋口 コロナのときは本当に大変でした。

 

講演はすべてなくなるし、どこへも出かけられませんでした。

 

この間に、若い人はコロナ太りだ、ダイエットしなきゃ~と言っていましたが、高齢者では足腰が弱ったり、頭の回転がにぶったり、コロナにはかからなくても、命を縮めたのではないでしょうか。

 

  和田 コロナ対策では、各国で対応の差が浮き彫りになりました。

 

たとえば、北欧のスウェーデンではまったく自粛政策をとらないで集団免疫を獲得するという方法をとりました。

 

日本では、その方法はよくないと批判したわけです。

 

  では、なぜスウェーデンが自粛政策をしなかったのか。彼らは高齢化率が欧米でもトップクラスであるため、高齢者を外に出させないようにする自粛政策をすると、要介護高齢者を増やしてしまうということをきちんと理解していたんでしょう。

 

フィンランドも、一時的なロックダウンはやりましたが、なるべく短い期間にとどめました。

 

ところが、日本はスウェーデン以上の高齢化率29%なのに、足かけ3年以上も自粛政策を続けていたのですから、はっきり言って高齢者にヨボヨボになれと言っているようなものだと僕は思います。

 

高齢になったら「引き算」より元気の素を足す

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 樋口 高齢者が、ヨボヨボになるのではなくいきいきするような医療って、難しいことなんですか。

 

  和田 年をとればとるほど、体力のベースラインがちょっとずつ下がっていくわけですから、今よりどうやったら元気になるかを考えないといけません。

 

塩分とか、脂肪分とか、病気のリスクになるものを「引き算」するのではなく、栄養や運動といった元気になるものを「足し算」するんです。

 

そういう発想の切り替えが必要になると思います。 

 

 東京都医師会や日本老年医学会も、年をとったらメタボ対策よりもフレイル対策を重視して、栄養と運動が大事と言っています。

 

肉や魚、卵、牛乳、豆などしっかりとタンパク質をとり、筋肉を動かす習慣をつくることで、いくつになっても歩けるようにしましょうというものです。

 

  また、加齢とともに減っていくセロトニンや男性ホルモン、女性ホルモンなどを生活習慣やホルモン補充療法などによって足し算し、元気のボトムアップを図るというのも、足し算の医療です。

 

 続きは<長生きをして、何をしたらいいのか──。

 

「老い」の達人が明かす死ぬまで満足な生き方の準備>にて公開中。

 

和田 秀樹(精神科医)/樋口 恵子(評論家・東京家政大学名誉教授)

 

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