【以下ニュースソース引用】
「足腰」や「記憶力」より先に衰えるものとは? 40代から要注意な老化を自己チェック
配信
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「老いが怖い」と思っている人へ、「老い」の達人が初タッグで、「幸齢者」になる秘訣を語り尽くします!!
大べストセラー『80歳の壁』著者の精神科医・和田秀樹さんと、90代のいばら道を痛快に切り開く評論家・樋口恵子さんが、『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』で伝えたいこととは…!?
足腰を衰えさせる、記憶力を低下させる、その引き金になるのが「意欲の低下です」と和田さん。
樋口さんがいつまでも若々しい秘密もそこにあるのかもしれません。
この回では、脳に起こる老化の重大事をふたりで語り合いました!
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【写真】「意欲」をよみがらせ老化を食い止める前頭葉の働かせ方
「サボっているのが楽ちん」は老化だった
和田秀樹 ところで樋口さん、最初に老化が始まるのはどこだと思いますか?
樋口恵子 さて? 40歳前から老眼になったという話も聞きますが、私はわりあい目のほうは大丈夫で、今でも新聞はメガネなしで読めますし……。どこかしら?
和田 答えは、「意欲」なんです。
年をとっても元気でいるために、筋力の低下や認知機能の低下を何とかして防ごうとする方が多いと思いますが、それよりも先に衰えるのが、意欲なんですよ。
樋口 意欲ねえ~。なるほど、衰えますなあ~。
和田 サボっているのが楽ちんだと感じ始めたら、僕はもう老いの始まりだと思うんですよ。
樋口 でも先生、私は昔から不精ですけど(笑)。
和田 まあね、そういう個人差もありますけどね。
個人的な見解ですが、やっぱりマメな人より不精な人のほうが老けやすいような気もします。
けれど、そういう個人差があったとしても、年をとっていくと総じて意欲は衰えていく。
不精じゃない人は不精になり、不精な人はますます不精になっていく傾向があります。
樋口 ちょっと怖いですね。
意欲の低下が全身の老化を一気に進める
和田 歩くのもだるい、頭使うのもだるい、人と会うのも、遊びに行くのも、ましてや仕事するのもだるいとなって、何もしないようになると、老化は一気に進みます。
逆に言うならば、意欲を保ち続けて、歩くことを続ける、頭を使い続ける、仕事を続けると、確実に老化は遅れると思います。
だから、ちょっとぐらい億劫に感じるからといって、簡単にいろんなものから引退しないほうがいいんです。
家事や仕事、運転、趣味……老化を遅らせたかったら、引退してはいけないと僕は思っています。
樋口 そうは言っても、億劫なものは億劫なんですよ。
ふうっ、おっくう~って、体中の細胞からため息が出ます。
和田 (笑)
樋口 俳優の草笛光子さんも89歳のとき、女性誌で「最近なんだか億劫になる」っておっしゃっていました。
やりたい気持ちはあっても、それを実現するにはさまざまな障壁がある。
それをあれやこれや考えると、本当に億劫でたまりません。
和田 89歳の草笛さんが最近になって億劫になってきたというのは、別の意味で驚くべきことです。
ふつう意欲の低下は40歳くらいから始まり、70歳くらいで目立ってくるんです。草笛さんがいつまでも若々しい理由は、つい最近まで意欲があったからではないでしょうか。
樋口 「年とって、楽しいことなんて何もない」「いっそ早くお迎えに来てほしい」などとボヤいている高齢者はたくさんいます。
まわりの人も受け答えに困ってしまいますが、こういう発言が増えるのも、意欲と関係があるんでしょうか。
40代ころから前頭葉が衰えだす
和田 大いにあります。
もしかしたら、老人性うつを発症している可能性がありますが、うつではない人でも高齢になると、意欲とかかわりの深い脳の前頭葉の働きが低下していきます。
意欲がなくなって、日常に楽しみを見つけられないために、「早くお迎えに来てほしい」という発言になるのでしょう。
前頭葉は、側頭葉や後頭葉に比べて成熟するのが遅いのに、衰えていくのは早いと言われています。
画像診断すると、40代ごろから萎縮が見えるようになり、放っておくとどんどん萎縮が進んでいくのが確認できます。
これは病気ということではなく、老化にともなう現象なのです。
もの忘れをしたり、記憶力の低下が始まって、多くの方は脳が老化したなと心配したりするのですが、実はそれ以前に、前頭葉では老化が進み、それによって意欲の低下が起こります。
つまり、順番としては先に「覚える意欲」が低下し、その後、記憶力も低下していく。
覚える気力がないから、覚えられなくなるということです。
この前頭葉は、意欲のほか、思考、創造、理性などにかかわっています。
怒ったり、泣いたりするような原始的な感情ではなく、より高度で人間的な、好奇心や感動、共感、ときめきといった微妙な感情を担っているんですね。
この部分が衰えると、意欲が低下したり、感情のコントロールが利かなくなったり、想定外の出来事に柔軟に対応するのが難しくなったりします。
僕は、人間という種が、ここまで勢力を拡大し、変化に対応しながら生き残ってこられたのは、この前頭葉が発達したからではないかと思っています。
脳の大きさだけでみると、クジラなど人間より脳の大きい動物はいますが、前頭葉がこれほど発達しているのは人間の特徴です。
大きな前頭葉があったからこそ、人間は地球の環境の変化や、社会や価値観の変化、技術革新などの変化にも対応して生き延びることができたのではないでしょうか。
好きなことをしている人はうまく老いる
樋口 年をとると、変化に対応して生き残るための脳が衰えてしまう。
だから、新しい技術や世の中の変化についていけず、取り残されたような気分になるんですね。
意欲の低下は、記憶力の低下以外にどんなことを起こすんですか。
和田 意欲の低下は、いろんな老化を進めます。
歩くのが億劫、外出するのが億劫だといって家のなかに閉じこもってばかりいると、足腰の筋力が弱くなってしまいますね。
はじめは「歩かない」状態が、足を使わないことで「歩けない」体になっていくのです。これを廃用症候群と言いますね。
外出しなくなると、人と会って話したりする機会も減ります。
人と話すには脳を使いますし、楽しく話すにはいろんな話題に興味を持っていたり、話の組み立ても練らなければなりません。
人と会って話す、これだけでもかなり脳の老化予防になるのです。
なのに、意欲が低下してしまうと、外出も、人と会う機会も減って、要介護状態へとまっしぐらなのです。
樋口 やっぱり、人間がいきいきと活動するおおもとは、意欲なんですね。
和田 高齢になってもいきいきしている人は、病気にならないように健康に気を使ってきたという人よりも、好きなことをやって生きていて、気がついたら90歳を過ぎていたという人のほうが多いのです。
車いすになっても、多少のもの忘れがあっても、やりたいことをやるという意欲があれば、心は若々しく、はたから見ても楽しそうにしています。
そうやって最後までやりたいことをやって生きた人は亡くなるときに「あれをやっておけばよかった」と後悔することなく、自分の人生に納得してこの世を去れるように思います。
しかし、今の高齢者を見ていると、そういう人のほうが少ない。
体はまだまだ元気なのに、「もう年だから」と早くも人生から引退してしまっている人も多くいます。
せっかく長生きの時代になったのに、人生を楽しまないなんてもったいないことだと思います。
前頭葉の老化度を自己チェック
和田 前頭葉が衰えてくると、気づかないうちにある行動パターンに陥ります。
それは、表に挙げた、昔と比べていろいろ試すことに腰が重くなった、行きつけの店しか行かない、行きつけの店の同じ料理ばかり食べている、いつも同じ道を通って帰る、同じ著者の本しか読まない……などのワンパターンの行動です。
どうでしょうか、思い当たりませんか。
ワンパターンの行動は、予期せぬ出来事も起きません。
初めてのことにドギマギしなくていいですし、失礼な対応をされてカチンとくることもない。
前頭葉を使わなくてもいいので楽ちんなんですが、これが前頭葉の機能の低下を進めてしまいます。
樋口 年をとって頑固になるっていうのも、新しいやり方に対応できないことへの防衛反応みたいなものなんですね。
なのに、まわりからゴチャゴチャ言われて責められると、感情を抑え込めなくなって怒りを爆発させちゃう。
和田 高齢者が突然キレるというのも、前頭葉の機能の低下とかかわっています。
こんなことを言ってはいけないとか、怒ってはいけないというブレーキが緩んでしまうのが原因なんです。
高齢者が特別怒りっぽいということではなくて、以前だったら抑えられた怒りを、抑えにくくなるということなんですね。
樋口 私もついこのあいだ、怒りではないけれど、心の底にある願望がつい口から出ちゃって、あわわと焦りました。まわりに気づかれずにすんでよかったんですけれど、それもブレーキが緩んでいるんだわ。
気をつけなくちゃ。
続きは<「意欲」をよみがらせ老化を食い止める、和田流・前頭葉の働かせ方、樋口流・他力本願作戦>にて公開。
和田 秀樹(精神科医)/樋口 恵子(評論家・東京家政大学名誉教授)
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