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「尊厳死」を巡る厚労省の思惑とリビング・ウィル(生前の意思)の必要性を考える(和田秀樹)

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日刊ゲンダイDIGITAL

和田秀樹氏(C)日刊ゲンダイ

 

和田秀樹 笑う門にボケはなし】 

 

 私が老人医療に携わるようになった1980年代は、尊厳死のような考え方があり、苦しそうな高齢者に「人工呼吸器をつけますか?」と家族に確認すると、「十分頑張ったのでこれ以上は無理をさせたくありません」といったことを返されることがありました。そういったやりとりで、医療者側は医療を手控えることになるわけです。

 

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 その尊厳死の流れに乗ったのが当時の厚生省(現・厚労省)でした。

 

尊厳死が議論される前はなるべく延命する方向でしたが、少子高齢化の急速な進展もあって医療費が膨張。

 

国の財政が苦しくなってきたからといって、「医療費が高いので延命治療をやめましょう」とはいえません。

 

そこで、話のすり替えで尊厳死の考え方を支持したのです。

 

  さらに厚労省は“最期は病院から自宅へ”という「在宅死」という言葉まで持ち出しました。

 

世論をそちらに誘導した背景があるのです。 

 

 そんな中、コロナ禍が襲い、そんな流れを吹っ飛ばしてしまいました。

 

コロナ病棟では、家族の意思も確認せず、ECMO(エクモ、人工心肺装置)や人工呼吸器につながれる患者が相次ぎました。

 

コロナ禍によって、望まない延命治療で尊厳死が無視されていることも、一部ではあるのです。 

 

 数多くの高齢者に接してきた私は、長生きを重視する高齢者より、いまある人生を楽しむことを重視する高齢者の方が元気で幸せそうに思いますが、もし最期まで自分らしくと思うなら、延命治療の流れが一部で見られる以上、終末医療に関する「リビング・ウィル(生前の意思)」を示しておくことは悪くないと思います。 

 

 ただし、延命治療をいらないと考えていた人が、入院したら「やっぱり延命してほしい」と申し出ることは珍しくありません

 

寝たきりになっても生きていたい、点滴を受けたいなどという話はよくあるのです。 

 

 リビング・ウィルは一度書いたら終わりではなく、気持ちの変化によってその都度書き直すことが大切です。

 

どんなことを書いておくか。詳細は、日本尊厳死協会のHPを参考にするとよいでしょう。

 

  私は詳細なリビング・ウィルなど書いていませんが、延命のために血圧や血糖値を下げる、好きな酒をやめる、塩分を控えるなどは拒否しています。

 

死ぬ間際に意識がなくなってからのリビング・ウィルより元気なときにどう医療と向き合うかの方がよほど大切だと思います。

 

 (和田秀樹/精神科医)

 

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