【以下ニュースソース引用】

災害や事故の当事者じゃないのに感じる「不安や緊張」、「あなたの心が弱い」から?…3つの対処法

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読売新聞オンライン

 

 能登半島地震や航空機の衝突事故など大きな災害や事故が続いた2024年の年初。被災や事故の当事者ではなくても、心が沈んでしまいがちだ。

 

そんなとき、どうしたらいいのか、トラウマケアの専門家に話を聞いた。

 

(デジタル編集部 古和康行)

 

  【図解】ひと目でわかる「不安」を解消する三つの方法

 

「心が弱いから」ではない

大きな災害や事故が続くと心が沈んでしまいがちだ。そんなとき、どうしたらいいのか

 

 「当事者でなかったとしても、不安や緊張、無力感などで心が落ち着かないのは生き物として誰にも起こりうる、自然なこと。決して、心が弱いから起きる現象ではありません」。

 

そう語るのは、トラウマケアの専門家で児童精神科医の小澤いぶきさんだ。

 

 大災害などが起きると、社会や集団が「当たり前にそこにある」と思っていたことが失われ、集団としての痛みが生まれやすかったり、ストレスを感じやすくなる状態になったりする。

 

それを「コレクティブトラウマ(集合的トラウマ)」と呼ぶという。

 

 例えば、災害で家族を失った人のニュースを見て、自分が家族と過ごす日常の姿と重ねて、その悲しみに共感する。

 

航空機の事故を見た時に、安全運行が当たり前と思っていた飛行機に自分が搭乗した時のことを想像して、恐ろしくなる。

 

小澤さんによると、「当たり前」と思っていたことが崩れ、その喪失感が社会全体で共有されるような出来事があると、広い範囲で個人や集団に痛みが生まれる可能性があるという。

 

 広い範囲に影響が及ぶような、コレクティブトラウマとなりうる出来事があると、どうなるか――。

 

当事者でなくても、ニュースや情報に触れるにつれて、不安感や無力感を感じたり、気分がそわそわしたり、イライラしたりするという。

 

小澤さんによると、このような状態は、時間をかけて和らいでいき、通常なら数か月のうちに平常な状態を取り戻す方向に進む。

 

 だが、地震や事故の場合は、ニュースや緊急地震速報などによって、出来事が起こった時に感じたような恐怖を再び感じたり、不安になるような状態に引き戻されることも多いという。

 

では、どう対処すればいいのだろうか。

不安を解消する3つのポイント

 一つ目は「自分が続けられそうな日常の日課を続けること」。

 

 トラウマは、当たり前だと思っていたことが自分の選択と関係なく、突然喪失するという「安全の喪失の体験」とも言える。

 

そのため、例えば、お茶を飲む、体を動かす、無理のない範囲で家事や仕事、通学など日常のルーチンを一つずつ丁寧に繰り返していくことが大切だ。

 

明日も今日と同じ生活が続く」という、自分に関わることを自分で選んでいるという安全感と、明日も日常があるという安定感を取り戻していくことにつながる可能性もあるという。

 

 二つ目は「情報から適切な距離をとること」。

 

 大きなショックを受けると、頭からそのことが離れなくなる場合がある。

 

ニュースやSNSの情報に触れるたびに緊張したり、不安を感じたりすることがある。

 

自分では意識しなくても、「思いがけずエネルギーを使っていることが多い」という。

 

のような時には、メディアから離れることが重要だ。

 

本を読んだり、体を動かしたりと、自分にとって取り組みやすい方法で、意識的に情報から離れる時間を設ける必要があるという。

 

一方で「災害情報など安全のために欠かせないニュースもある。情報を遮断するのではなく、『定期的に離れる時間をつくる・つらい時は離れる』ということを心がけてほしい」。

 

 三つ目は「可能な範囲で自分をケアする時間をつくること」。

 

 日々の中で、ストレッチをしたり深呼吸をしたりして、身体的にも緊張の和らぐ時間をつくることが大切だという。

 

「普段と違う状況が起こった時は、自分でも気付かぬうちに体が緊張していることがあるから」という。

SNSや子どもとの向き合い方は…

 SNSとの付き合い方にも注意が必要だ。

 

小澤さんらがまとめた「子どもとの関わりかた」など(抜粋)

 

 小澤さんは「センセーショナルな映像や写真、断片的な情報との関わりには注意が必要」と警鐘を鳴らす。

 

X(旧ツイッター)の投稿などを巡っては、「反射的にリポストしたくなることもあるかと思います。

 

普段と違う状況の中で緊張状態が続いていたり、疲弊したりしているサインかもしれません」と指摘する。

 

 一方で、安全情報や状況の改善に必要な知恵を共有することなど、予防に必要な情報を共有したり、寄付したりすることは、「当事者の方々のニーズに合っている場合、被当事者ができる大切なことの一つです」としている。

 

 子どもとの関わり方については、「遊ぶこと」「子ども自身が自分で選択する機会があること」の重要性をあげる。

 

小澤さんによると、大きな災害を経験したり、ニュースに触れたりした子どもは、「津波ごっこ」「地震ごっこ」をして遊ぶこともあるという。

 

「子どもは、ごっこ遊びを通じて、自分なりに事態を受け止め、対処しようとしている。

 

『不謹慎だ』といって止めるのではなく、見守ることも必要だ」と小澤さんはいう。

 

 一方で、ごっこ遊びが「死」を連想させるなど、痛みの強い終わり方を繰り返している場合には、一緒に肯定的なパターンを考えたり、本人のやりたい違う遊びをしたり、必要な時は専門家に相談したりと注意してみていく必要がある。

精神科医でも「ザワザワ」

小澤いぶきさん

 

 能登半島地震が発生した1月1日。小澤さんも実家がある山梨県に帰省していた。

 

精神科医として対処法は心得ていたが、地震のニュースに触れ、「地震の大きかった地域の方々のことを考えて、大きな痛みを感じたり、必要なことは何か、できることはないかと、緊張状態が続いたりしたという。

 

また、翌日の航空機事故に触れた時も、亡くなった方のことや、その事故の渦中にいた方々のことを想像して心が痛み、ザワザワしたという。

 

 その後、子どものケアに取り組む小児科専門医らに呼びかけて、1月4日に「地震やいつもと違うニュースなどにふれる皆さまへ」という、体やこころのケアについて重要なポイントをまとめた文書を発表している。

 

その一方で、「精神科医の自分でも、大きな災害や事故のニュースに触れて動揺したり、心が痛んだり、ザワザワしたりする気持ちもあった」という。

 

だから、「当事者でなくても、不安や心配に心が押しつぶされそうになることは起こりえます。

 

心は変化するものだということ、それぞれに力があることをきちんと知り、適切な関わりをもつことが重要です」と話した。

 

プロフィル

 

小澤いぶき(おざわ・いぶき)

 

 認定NPO法人PIECES代表理事。児童精神科医。精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。

 

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