【以下ニュースソース引用】
正月太り解消には高たんぱく食「体重別・1日の必要たんぱく質が一発で計算できる表」
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年末年始に増えた体重に焦り、極端なダイエットに走っていないだろうか。
間違った食事制限では、かえって痩せにくい体になってしまう。
ではどうすればいいのか。
鍵を握るのはたんぱく質だ。
AERA 2024年1月15日号より。
【図表】体重に掛け算するだけ! 必要たんぱく質速算表はこちら
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年末年始の“食っちゃ寝”で体の重さを感じる。
思い切って体重計に乗ると、やはり。
帳尻を合わせるため極端なダイエットに走ろうとするのは、これで何度目だろうか。
朝はコーヒー、昼はおにぎりかサンドイッチ一つ、夜はノンオイルドレッシングのサラダ──。
そんな食事制限のやり方に警鐘を鳴らすのは立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡さんだ。
「栄養もロクにとらない食事制限を続けると、かえって痩せなくなる」という。
「米やパンを抜きすぎて糖質が不足すると血糖値が下がります。
すると人間の体は血糖値を維持するため筋肉の一部をアミノ酸に変換し、エネルギーとして使います。
ここでたんぱく質が入ってこないと新しい筋肉が作られず、分解されっぱなしになるわけです。
食事制限で一時的に体重が減っても、筋肉が失われたことで基礎代謝が下がり、リバウンドしやすくなります」
■たんぱく質で熱産生
基礎代謝とは、体温の維持や臓器の活動のために消費するエネルギーのこと。
人間が消費するエネルギー量の6~7割が、生きているだけで消費される。
残り2~3割が運動に伴う代謝(通勤などで単に体を動かす+スポーツなど)。
食事による代謝(後述)が1割ほどだ。
「全体の6~7割を占める基礎代謝量の内訳を見ると、約20%が筋肉によるもの。
筋肉は使われていない間も熱を生み、体温を維持しています」
筋肉が減るとエネルギーの消費効率は低下する。
その結果、太りやすく痩せにくい体になってしまう。
「たんぱく質や各種栄養素が不足すると食事の満足感も得られにくくなります。
その結果、食べすぎてしまいがちです」
食べすぎていないのに、若い頃よりふくよかになった人もいるだろう。
これは加齢と運動不足、食が細くなり自然とたんぱく質の摂取量も減ることなどにより筋肉が落ち、太りやすくなるためだ。
人の筋肉量は25歳から30歳にかけてピークを迎え、70代にピーク時の半分まで減るというデータもある。
加齢による筋肉の減少を「サルコペニア」という。
自覚症状を感じにくいが、生活習慣病の一因に。
心筋梗塞、脳卒中、糖尿病のリスクが高まる。
サルコペニアが進行すると筋肉や骨、関節が弱り、「立つ・座る」などの日常動作が難しくなる「ロコモティブシンドローム」につながる。
転倒しやすくなり、骨も折れやすくなり……。
厚生労働省は「たんぱく質の摂取不足が最も直接的に強い影響を及ぼし得る疾患」として、前述のサルコペニアに加え「フレイル」を挙げている(「日本人の食事摂取基準〈2020年版〉」、以下同)。
フレイルは加齢により身体能力が低下し、健康障害を引き起こした状態。
そこまでつらいことにならずとも、たんぱく質の不足は皮膚のたるみ、肌荒れ、髪のツヤ喪失、薄毛などにつながる。
要するに“老けて見える”わけだ。
■「老け見え」を防ぐ
「逆にいえば、たんぱく質をとることで筋肉、血管、内臓、肌、髪、爪などあらゆる部位に好影響をもたらすわけです。
健康維持のため、減量中でも意識してたんぱく質をとりましょう」
藤田さんは、たんぱく質をとると消費カロリーが増える(痩せやすくなる)データも見せてくれた。
ここで重要なのが「DIT(Diet Induced Thermogenesis=食事誘発性熱産生)」だ。
DITとは、食後に体が消化・吸収・代謝する過程で熱が発生すること。
モノを食べると体があたたかくなるのはDITの作用によるものだ。
「たんぱく質の場合、摂取エネルギーの約30%がDITで消費されます。
糖質のDITは6%、脂質は4%。つまりたんぱく質の熱効率は糖質の5倍、脂質の7.5倍もあるわけです」
だからといってたんぱく質だけを重視し、糖質や脂質をまったくとらないのはダメ。
「筋肉の維持に糖質や脂質も必要です。
体重を健康的に減らしたいならたんぱく質は意識して多くとる。
糖質や脂質は通常より控えめに。これが一番いい」
ダイエットが必要ない人も、健康と若さ維持のためたんぱく質はたっぷり摂取してほしい。
■たんぱく質の目標量
さて「たっぷり」とはどのくらい?
厚労省は、1日に必要なたんぱく質に関して「推定平均必要量」「推奨量」「目標量」という基準を公表している。
「推定平均必要量および推奨量は『最低限必要なたんぱく質量』で、目標量は『生活習慣病予防を見据えた理想的な摂取量』ととらえてください。
目標量の下限値は、2015年基準で全体の13%がたんぱく質になるように記されていました。
これが20年版では50歳以上で14%、65歳以上で15%にアップ。
たった1~2%と思うかもしれませんが、実際にたんぱく質をとる量で考えると大きな変化です」
国が示す1日のたんぱく質目標量をまとめた。
活動量「普通」の40代男性で88~135グラム、同女性67~103グラム。
参考までに、皮なし鶏むね肉1枚・約250グラムのたんぱく質は約58グラム、卵1個の可食部が5~6グラムと算出できる(文部科学省「日本食品標準成分表〈八訂〉」増補2023年、以下同)。
体重が軽い人と重い人では必要なたんぱく質にも差が出る。
そこで藤田さんが最新データを元に、体重と活動量による必要たんぱく質量の計算式を作ってくれた。
名付けて「藤田式・必要たんぱく質速算表」。
体重に所定の数字を掛け算すればいい。
活動量の低い男性は体重×1.32グラム、女性1.27グラム。
活動量が多い人は体重×1.62グラム(男女の区別なし)。
65歳以上の男性は体重×1.36グラム、女性1.30グラムだ。
「65歳以上は、64歳以下(の活動量の低い人)より積極的にたんぱく質をとることをおすすめしています」
素朴な疑問を一つ。
今80キロだが、70キロに減らしたい。
この場合、80キロで計算すればいいのか。
それとも「なりたい体重」
──この場合70キロで計算すればいいのだろうか。
「ダイエット中でも今の体重を基準にしてください。
筋肉の減少で体重を落とさないほうがいい。
減らすべきなのは余計な脂肪ですから。
たんぱく質、糖質、脂質の中で優先してカットすべきは脂質です」
たんぱく質を過剰摂取すると腎臓に悪いという意見もある。
腎機能が低下した人に低たんぱく食が推奨されるためだろう。
この健康リスクについて、藤田さんは「エビデンス(根拠・裏付け)は無い」と語った。
■腎機能低下のリスク
「8年分の学術誌を追跡調査しました。
その結果、実はたんぱく質の摂取が少ない人こそ腎機能低下のリスクが高いと結論づけられていることがわかりました。
高齢者を対象とした研究でも『たんぱく質の摂取量による腎機能の差はなかった』と報告されています」
たとえば水や醤油でも、とんでもない量をとると死ぬ。
常識的な範囲なら、たんぱく質のとりすぎを心配しなくていい。
唯一注意すべき点があるとすれば、腸の健康だ。
「たんぱく質の過剰摂取は、腸内細菌のバランスを乱すリスクがあります。
ヨーグルトなどの乳酸菌と、食物繊維を含む食材も組み合わせ、腸の健康も考慮した食生活を心がけましょう」
藤田さんはたんぱく質を「毎食こまめに」摂取することを推奨している。
「朝食には卵料理、チーズ、ヨーグルト。昼食もざるそばやおにぎりだけで済ませるのではなく、肉や魚を含んだメニューを選びましょう。
コンビニやスーパーで手軽に買えるたんぱく質優秀食材はゆで卵、サラダチキン。
プロセスチーズは不足しがちなカルシウムも一緒にとれます。
魚肉ソーセージも意外に高たんぱく質です」
たとえばマルハニチロの「おさかなソーセージ」1本で6.1グラムのたんぱく質入りだ。
(ジャーナリスト・古田拓也、編集部・中島晶子)
※AERA 2024年1月15日号より抜粋
古田拓也,
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