【以下ニュースソース引用】

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで

ARTS & CULTURE

 

エミ・マイヤーさん(左)と、すみれさん
中津海麻子

中津海麻子

 ライター

執筆テーマは「酒とワンコと男と女」。日本酒とワイン、それらにまつわる旅や食、ペット、人物インタビ …

 

葛西亜理沙

葛西亜理沙

 フォトグラファー

横浜生まれ。サンフランシスコ州立大学芸術学部写真学科卒業後、写真家・坂田栄一郎氏に師事。その後、 …

 

シンガー・ソングライターのエミ・マイヤーさんが書き下ろした新曲「Golden Child」は、アーティストとして、母親として、これからの未来を生きる子どもたちへの温かく、強い思いとメッセージが込められている。

 

日本語バージョン「ゴールデン・チャイルド〜旅立ちの時〜」をエミさんと一緒に歌うのは、俳優でシンガーのすみれさん。

 

親友である二人が語る、子どもへの思い、子どもとしての親への思いとは。

 

――お二人は親友とのことですが、「なれ初め」は?

 

エミ 共通の友人が手がけたプロジェクトのイベントで初めて会いました。

 

10年ぐらい前だったと思います。そのあと、すみれちゃんがオーガナイズするチャリティーイベントにオファーしてくれて。

 

すみれ あのとき一緒に「What a Wonderful World」を歌ったよね?

 

エミ そう! 私は歌えるキーが限られてるんだけど、すみれちゃんはその幅が広くて、本当にすごいなって。

 

何より歌声が素晴らしくて感動しました。

 

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで

 

すみれ チャリティーイベントへの出演をお願いしようと決めたとき、それまでエミが歌った曲を聴き、私も感動しました。

 

歌にも歌声にもソウルがある。

 

で、打ち合わせを兼ねて一緒に練習したよね。カラオケボックスで。

 

エミ したした。あれが日本で1回だけ行ったカラオケなんだ(笑)。

 

それで意気投合し、プライベートでも仲良くなっていきました。

 

すみれちゃんは、日本と世界、両方を自分の中に持っている。

 

日本と海外を行き来してきた私にとっては、一緒にいてすごく気楽で落ち着く存在です。

 

すみれ 私も英語の方が楽だし、とはいえ日本語と英語がミックスすることもあって、その感覚もエミとはすごくフィットするんです。

 

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで

 

――親交を深めてきた10年あまりの時間の中で、お二人とも母親になりました。

 

子育てのことなど話したりしますか?

 

エミ 以前から「子どもを産むってどんなイメージ?」とか「何人ほしい?」とか、そういう話はしてたよね。

 

すみれ ママとしてはエミの方が先輩だから、息子がお腹(なか)にいるときは相談したことも。そ

 

うそう、ベビーベッドもプレゼントしてくれたよね!

 

エミ うちの娘たちが使ったもので、できれば捨てたくなかったから、誰かが大事に使ってくれたらいいなって思ってたんです。

 

すみれ わざわざ持ってきてくれて、すごくうれしかった。

 

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで

 

――そんなお二人が今回、新曲「ゴールデン・チャイルド」をリリースしました。

 

どのような経緯、インスピレーションから曲が生まれたのでしょうか?

 

エミ コロナ禍の間、曲をたくさん作りました。

 

そんな中ですみれちゃんと何か共作できないかなと考えるようになり、頻繁にメッセージのやり取りをしていたんです。

 

すみれ 私がインスピレーションを受けているアーティストや曲を色々送ったよね。100曲ぐらいかな(笑)。

 

エミ そう。それを全部聴いて、漂っている雰囲気を感じ取り、そこにすみれちゃんの人生で起きていること、すみれちゃんが育ったハワイの風景、暖かさ、優しさなどを取り込んで、曲を作っていきました。

 

さまざまな食材を組み合わせて料理を作るイメージです。

 

その上で、よく共作している幼なじみがLAにいて、彼と行きつ戻りつで仕上げた曲をすみれちゃんに送って、「気に入ってくれたら歌ってほしいな」とお願いしたんだよね。

 

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで

 

すみれ 最初は「Apple Never Falls Far From The Tree」という仮題で曲が送られてきました。

 

エミのピアノも歌声も、そして世界観も本当にすばらしくて、わぁステキだな、って。

 

やり取りの中で「ララバイ的な曲がいいね」と話していたこともあり、息子にも歌ってあげたい、聴かせたいと思いました。

 

子どもを守ってあげるという歌だけど、いつかは旅立ちの日が来る……。

 

私と息子だけでなく、私と母のストーリーも込められているようで、母との日々にも思いを馳(は)せました。


曲は英語バージョンと日本語バージョンがあり、プロデューサーであるエミからは「日本語の方を歌ってほしい」と言われました。

 

私自身は会話するのも歌うのも英語の方が楽なのに、この曲に関しては不思議と日本語バージョンの方がスッと入ってきた。

 

言葉って不思議だな、って。

 

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで

 

エミ 普段は英語の方がストレートで、私からすると日本語はちょっと抽象的、詩的だったりするんだけど、この曲に関しては日本語バージョンの方がまっすぐ入ってくるかも。

 

そこがララバイ的なのかもしれません。

 

――エミさんはこの曲を通し、「伝えたいのはいつの時代でも親と子、その間にある繊細な共感や違いについての感動」と語られています。

 

どんな場面でそれを感じられたのでしょうか?

 

エミ 二人の娘は5歳と3歳なのですが、長女は私によく似てるんです。

 

音楽好きで曲作りが好きなところや、時々、想像の世界に入り込んでふわふわしてるところも(笑)。

 

その長女が日本の幼稚園に通い始めたとき、私が海外育ちだから日本のシステムには合わないんじゃないのかなとすごく緊張しました。

 

そこで「インターナショナルスクールにする?」と聞いたら、娘は「この幼稚園がいい!」ときっぱり。

 

さらに「そのまま日本の小学校に行きたい」と強く言うのです。

 

私に似てるから苦手かも、というバイアスを勝手にかけていたと気付かされました。

 

それは同時に、感動でもあった。

 

似てる部分もあれば、娘とはいえ私とは別の人間で異なる部分もある。

 

もちろん全力で支え、守りますが、彼女たちを人としてちゃんと尊重したいと思うようになりました。

 

すみれちゃんとお子さんはどう?

 

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで

みれ うちの息子は私とは全然違うの!

 

 イヤなものはイヤ、とはっきり言う。

 

まだ1歳なのに(笑)。私はどちらかというと気を遣い過ぎちゃうタイプで、息子も気遣いしないわけじゃないんだけど、すごく意志が強いんです。

 

まだ幼くて「ママ、ママ」って甘えんぼだけど、とはいえ、私とは別の人格を持った一人の人間なんだな、と最近強く感じています。

 

エミ この間、「Golden Child」のMVの撮影にきてくれたよね。

 

うちの娘たちは年下の男の子がうれしかったみたいで、一緒に遊んだり、お弁当食べさせてあげたり。

 

二人とも盛り上がっちゃって「弟ほしい!」とか言い出した(笑)。

 

すみれ かわいいお姉ちゃんたちにチヤホヤされて、ハーレム状態(笑)。

 

息子もすごくうれしかったみたい。

 

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで
 

――まだまだ無邪気なお子さんたちですが、曲の中では「旅立ち」についても触れています。

 

エミ 私はシアトルで育ち、その後親元を離れ、LAや日本で活動してきました。

 

両親に「さびしくなかった?」と聞いたら、母は「旅立ってくれることは親としていい役割を果たせたということだから」と。娘たちもいつかは私のもとから旅立っていく。

 

それはさみしいことですが、母のようにその日までしっかりサポートしてあげたい。

 

そんなことをふと考えることはあります。

 

すみれ そうだね。

 

曲のなかの「旅立つだろう」という歌詞は、私はまだまだ心の準備ができていなかったので、歌っていてちょっと切なくなっちゃった。

 

でも、だからこそママっ子の時期をもっと楽しもう、って。もっと「今」を大切にしようと改めて思いましたね。

 

エミ 本当にあっという間に子どもたちは成長しちゃうから。

 

下の娘は3歳ですが、もう赤ちゃんっぽいふわふわのほっぺが消えつつあるんです。

 

普段は自分のMVに自分の子どもを出したりはしないのですが、このほっぺを残しておきたいと、「Golden Child」のMVに出演させました。すみれちゃんがいうように、「今」を大切に、そして残しておきたかったから。

 

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで

 

――お子さんを授かったことで、仕事との向き合い方やクリエーティビティーに変化はありましたか?

 

エミ まず、時間の使い方が大きく変わりました。

 

オンオフがはっきりして、創作に関する作業も限られた時間に集中して取り組むように。

 

正直、母親になりモヤモヤ感じている部分はあったし、今もあります。

 

新しいライフステージの私は何者なのか、何を着て、食べ、どういう話をすべきなのか――。

 

自分のことがよくわからない、見えない。

 

でもその分、自分以外の人のことはよく見えるような気がするのです。

 

だから、友達の曲を書いたり、アルバムをプロデュースしたりして、あえて自分から距離を置いてみる。

 

そういう意味では、クリエーティビティーの世界は広がっているように感じます。

 

すみれ 私はすっかり涙腺がゆるゆるになって、すぐ涙が出ちゃう(笑)。

 

エモーショナルになりましたね。

 

そういう意味では、演技をするときに息子のことを思うだけでこれまでとは比べものにならないほど気持ちが入る。

 

クリエーティビティーというのかは分かりませんが、表現力は豊かになったのでは、と思います。

 

エミ・マイヤー×すみれ いつかくる子どもの旅立ちの日まで

 

――「ゴールデン・チャイルド」、聴く人たちにどんなふうに届けたいですか?

 

すみれ お子さんがいる方はもちろん、いない方も、自分の親がこんなふうに思ってくれたのかな、なんて振り返ってもらえたら。

 

そして、これから自分の子どもができたらこんなふうに感じるのかと思いながら聴いていただけたらうれしいです。

 

何よりフォーキーでリラックスできるメロディーと、やさしくも強いエミの声にも癒やされるので、自分へのララバイとして聴いていただいても。

 

エミ この曲は、すみれちゃんとベビー、そしてすみれちゃんのお母さんと、三世代を思い浮かべて書きました。

 

なので、すみれちゃんが言うように、子どもとして、親として、さまざまな立場で聴ける曲だと思います。

 

高田漣さんのスチールギターの音色、そして、すみれちゃんの歌声と表現力が何よりステキなので、存分に堪能していただきたいですね。

 

PROFILE

 

エミ・マイヤー

 

京都府生まれ。1歳になる前にアメリカのシアトルに移住。07年にシアトル—神戸ジャズ・ボーカリスト・コンペティションで優勝。09年にアルバム「キュリアス・クリーチャー」でデビューし、iTunes Storeや多くのCDショップのJAZZチャートで首位を獲得。その作品は数々のCMでも披露されている。2児の母。

 

PROFILE

 

すみれ

 

東京都生まれ。7歳でハワイに移住。ハイスクール在学中の高校1年でモデルデビュー。米国・カーネギーメロン大学演劇学科に進学し、2011年、日本で本格的に活動を始める。17年全米公開の映画『アメイジング・ジャーニー 神の小屋より』では、オーディションを勝ち抜き、聖霊サラユー役に起用される。1児の母。

Golden Child

スチールギターの名手、高田漣をゲストに迎え、エミ・マイヤー自身がプロデュースし、英語版と日本語版をリリース。

 

日本語版「ゴールデン・チャイルド~旅立ちの時~」にはゲストボーカルにすみれを迎え、日本語歌詞は高田漣が手掛けた。


英語版「Golden Child」YouTube


英語版配信


日本語版配信

 

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