花組トップスター、柚香光さんが退団を発表されました。


8月15日。時はお盆の最終日。



私の魂は勝手にご先祖様の帰途に同行し、彼岸の辺りをウロチョロしておりましたが、


“ええ加減にせい!”


…と、ご先祖様につき戻されて、ひとまずフラフラと此岸に戻ってまいりました。



来るべき時が来ただけ。

覚悟はいつだってしていた。

しかし、そんな覚悟など、この衝撃の前には脆くて何の意味もなさない事を思い知りました。


泣いてみたり、呆然としてみたり、落ち込んでみたり、変に冷静になってみたり、やたら前向きな心持ちになってみたり…

ひと通り色んな感情が押し寄せるものの、いまだに自分の心の在り処がよく分からないような、今はまだそんな感じです。


それでもこうやって、退団発表の日を皮切りに、

退団会見の日、

退団会見の放送が流れる日、

あんな日、こんな日…と、

1つずつ心に墓標を立てながら、

1つずつ心に命日を増やしながら、

最後、来年の5月26日には、宝塚ファンとしての1つの最終形態が完成するんだろうな…

と、漠然と思ったりしています。



「贔屓」と呼べるスターに出会った全ての宝塚ファンの先達は、皆さんこんな思いを経験しながらご贔屓の卒業を見送ったのかと思うと、尊敬の念以外ない。


おまえがたえた苦しみなら…

わたしもたえてみせよう


(誰?)





今はまだ、感情をうまく言葉にできないので、

とりあえず退団記者会見の雑感だけ、ザックリ語っていきたいと思います。




唐突ですが、1人目の相手役・華優希さんの退団会見の際、自分のブログでこんな事を書いていました↓。


会見で語られる退団理由が、真実の全てでない事は、みんな何となく分かっている。


それでも、
退団を決めた理由、相手役への思い等、
その人の宝塚への思いの中核になるようなものが、
会見で語る言葉や、見せる姿、表情には自ずと滲み出るものだと思う。

だから、退団理由に関して様々な憶測が飛び交ったところで、

結局は、答えは退団会見の中にしかない。
そう思います。」



自分の過去のブログなど、恐ろしくて恥ずかしくて普段は滅多に読み返さないのですが、


割とマトモな事言ってんな、自分…。

(自分で言うなよ)



柚香さんの退団が発表されてからも、動揺の中にあってもまず、何はともあれ、まず!

会見の様子を知りたいと思いました。

そこできっと、分かることがある、と。


そうして各社のネット記事と、タカラヅカニュースで流れる会見の映像を待ちました。



会見の柚香さんは…綺麗でした。


清々しい…というのとは違う気がするけれど、柚香さんらしい、穏やかで、どこまでも優しい空気の流れる会見だったな、と。


舞台上では今や、絶対王者の貫禄を見せるスーパートップスターだけれど、


「緊張しています」の言葉の通り、最初は緊張も垣間見えて、はにかみ屋で引っ込み思案で純粋な女の子「れいちゃん」が、そのまま大人になったような、飾らない素顔の柚香さんを強く感じた。



上記の自らの引用ではないけれど、誰の会見にも“言えない事”は必ずある。

けれど、その制約の中でご本人が選んだ言葉にこそ真実がある、そう思います。


そういう意味でも、いかにも柚香さんらしく、嘘のない言葉で誠実に語ってくださった会見だったな…と感じました。



まず、柚香さんに限った事ではなく、どなたの退団会見でも思う事ですが、

各社のどのネット記事よりも、一番温度が低くて無味乾燥なのが、公式ホームページの記者会見記事…なのは、何故なんでしょうね(笑)。

そこはもう慣れましたけど。



ネット記事では、退団理由の核心とも取れる「まだ見ぬ自分に会ってみたい」といったような見出しがそこかしこで踊っていました。


けれど個人的には、その前置きの部分

このまま精進を続けていきたい気持ちもあります(が、外の世界で知らない自分にも出会ってみたい)」

…こそが、重く響くところです。


当然の如くと言うべきか、

「精進を続けていきたい」も、

「まだ見ぬ自分に出会ってみたい」も、

公式ホームページの記事、タカラヅカニュースで流れた会見の映像共に、バッサリとカットされてましたね…。


まぁ…それが、

答えの全てなのかな、という気がしています。




そして、記事をひと通り読んで気づいたのは、柚香さんが、何度も何度も「お客様」という言葉を繰り返して口にしている事でした。


「お客様に感謝」「お客様の笑顔」「お客様とのつながり」「お客様の応援」「お客様の拍手」「お客様のお顔」「お客様」「お客様」「お客様」……。


自らのファンへのメッセージを聞かれた時でさえ、自分を熱烈に応援するファンへのメッセージというよりは、宝塚ファン、観客全体への思いを口にされていた。


(もちろん、私が読み逃している記事もあるかもしれないし、映像で流れなかった部分で、ご自分のファンへの感謝を語っておられたかもしれないけれど。)


そんな時くらい、ご自分のファンだけに向けて思い切り感謝を、パーソナルな思いを叫んだとしても、バチは当たらないと思う。

けれど柚香さんは、全てひっくるめて、「柚香光」ではなく「宝塚歌劇」を目当てに足を運ぶ観客全体に向けて、“お客様に感謝”と…。



その事に気づいた時、

今までに初日やら千秋楽やら、

テレビ画面で、スクリーンで、時には生観劇で見てきた、柚香さんのご挨拶が一気に蘇ってきた。


そうだ。

柚香さんはいつも、観客を丸ごと愛してくれていた。

いつもいつも、私達に「お客様」って呼びかけてくれた。

優しい声、可愛い声、嬉しそうな声、浮かれて楽しげな声、そして時には苦しい声で、


「お客様」、「お客様」、「お客様」…


と。



その声の記憶が一気に耳に押し寄せてきたら、もうたまらない気持ちになって、涙が溢れて止まらなくなった。



“あぁ、私の愛したスターは、やはり並大抵の人ではなかった。

何という素晴らしい人を、私は好きになったんだろう…。”

と、改めて思いました。





余談ですが、

つい可愛すぎて笑ってしまったのは、

こんな退団発表の場で「吊り目」を自認しちゃうところ。


あとは、

(ターニングポイントとなった作品を絞り切れずに)

記者さんに向かって

「ご飯食べに行きましょうか」

なぁんて言っちゃうところに、


“もぉぉ〜、記者さんまでこんな時にすら

タラシこんでぇぇチュー〜〜


ってなりましたし、


前のめりになって

“ドンドン出てきてしまうんです〜”

って笑ってる柚香さんに、会場の笑い声も重なって、

記者さん達のデレってるお顔まで見える様でしたよだれ



ザ・人たらし指差し



ひとまず、退団発表記者会見の感想は主にそんなところでしょうか。




まだまだこれから、色んな感情の浮き沈みを経験するのでしょうが、なるべく一つずつ、噛み締めていけたらな、と思います。



今はこれにて。