23日 am 7時

助産師に、陣痛促進剤を使うという説明を受ける。

ああ、やっと使ってくれるのね。ビバ促進剤!

30分に10ccずつ量を増やす。

子宮口は7センチ開いているので、お昼には生まれるでしょうとの説明。

まだお昼まで4時間もあるじゃないの。

陣痛促進剤の影響で、さらに痛みが増してくる。

たった4時間。でも私にとっては長い4時間。

今まで耐えた痛みをもう一回1からやり直し。

でも、ゴールのないマラソンに、ゴールが見えた。

その後、ダーリンと一緒に深呼吸をして痛みを必死に逃し、

お昼近くなって、やっと陣痛もピークを迎えた。

陣痛の間隔を感じないほどずっと痛みが続く。

助産師さんに内診をしてもらうと、

子宮口は十分に開き、赤ちゃんの頭が触れるようになった。

23日 am 11時50分

いよいよ分娩室へ移動になった。

夢にまで見た分娩室。ああ、何人もの妊婦さんが、

私より後に来て、私より先に出て行った分娩室。

やっとは入れるのね。いきめるのね。産めるのね!

よし、思いっきりいきんでさっさと産んでやる。

気合充分。痛みも吹っ飛んでやる気まんまんだった。

陣痛室で1度、いきみ方の練習をして分娩室まで歩いて移動。

こんなに痛くて死にそうなのに、

死ぬどころか歩いてしまう自分を誉めてあげたい。

頑張れ、私!

分娩台へ上がり、呼吸法を教えてもらう。

「陣痛が来たら、深呼吸を2回して、おへその辺りを見ながらいきんでください。」

陣痛が来た。

合わせていきむと、助産師さんに褒められる。

いきめると陣痛は痛くない。

不思議なことに、分娩室では痛いことは一つもなかった。

「赤ちゃんがお腹の中でウンチをしてしまったので、早く出します。

会陰切開しますね。」

2回いきんだ後、麻酔をしてバチンと切る音がした。

3回目にいきむと、

「はい、もう赤ちゃんの頭見えますよ。

いきまないで、はっはっはっって息を吐いてください。

赤ちゃん出てくるから頭上げて見てみて。」

助産師さんの声に合わせて息を吐くと、

ブリンっと紫色の赤ちゃんが出てきた。

胸の上に乗せてもらったソラが、小さな声を出している。まだ泣かない。

吸引のためにすぐ連れて行かれ、処置すると大きな泣き声が聞こえた。

「おめでとうございます。女の子ですよ。よく頑張りましたね!

時間は12時22分!」

2006年4月23日12時22分。

あなたが私と繋がっていた最後の時。

そして、今まで生きてきた中で一番感激した瞬間。

ああ、ソラも頑張っていたんだ。

無事に産まれてきたんだ。

長かった陣痛に、ソラも一緒に耐えていたのだと思うと涙が止まらなくなった。

愛しいという感情が一気に溢れてきて、心は達成感でいっぱいだった。

先生や助産師さんに、泣きながら「ありがとうございます。」と何度も言った。

股を開いたままですが。

産んだ瞬間、痛みも疲れも一気に無くなり、助産師さんに

「胎盤を見せてください。」とリクエストした。

胎盤は、私の子宮側は赤かったが、

赤ちゃん側の胎盤は、本に書いてある通り青い色をしていて綺麗だった。

処置室の方にダーリンとお母さんが入って、ソラと会っていた。

あなたが産声を上げた時、ダーリンとお母さんは、

嬉しくて、そしてほっとして涙が出たんだよ。

ダーリンは、ソラの足の長さに驚いたみたい。

私も処置を終え、車椅子に乗って分娩室を出ると、

ダーリンは力強く「ありがとう。」と言ってくれた。

ありがとうと言いたいのは私のほうだよ。

36時間私をずっと支えてくれ、

弱音を吐く私を抱きしめてくれた。

ダーリンがいなかったら、私はきっと頑張れなかった。

本当にありがとう。

あなたと、この長い陣痛を乗り越えたことは、

私にとって素晴らしい出産の思い出となった。

二人でやり遂げた大きな成果。

出産後に思えば、それは本当に楽しく素晴らしい経験だった。

そして、精神的な部分で大きく私を支えてくれたお母さんには、

心から感謝している。

分娩室を出て、すぐにソラに会うことが出来、

さっきまでお腹の中にいた我が子を抱くことが出来た。

それは、言葉では言い表せないほどの喜びだった。

小さくて柔らかい、温かなあなたを抱いた瞬間を、

私はきっと、いつまでも忘れないだろう。

産まれてきてくれて、本当にありがとう。

私のところにきてくれて、ありがとう。

小さな声を出しているあなたが、愛しくて愛しくてたまらなかった。

病室に行くとお父さんがいて、「頑張ったな。お疲れさん!」と声をかけてくれた。

みんながソラに会えるのを楽しみにしていた。

ずっとずっとあなたが産まれてくるのを待っていた。

ベッドに横になると、助産師さんがソラを連れてきて、初めての授乳をした。

「わぁ、うまいうまい。上手に吸いますね~。」

助産師さんがソラの吸いっぷりを絶賛し、我が子を褒められ私も嬉しかった。

食いしん坊ぶりに、母は満足。

助産師さんの言うとおり、産んだら痛みは嘘のように消え、

会陰切開の傷なんて、陣痛の苦しさに比べたらちっとも痛くなかった。

事実、私は助産師さんもびっくりする最短記録で産後のお通じを済ませ、

「縫ったところが切れても、病院だからまた縫ってもらえるでしょ。」

と言って助産師さんを閉口させたのだった。

出産後、お昼を持って来てくれたが食欲はなくて

カレーに少し口を付けたけれど、

ソラが無事に生まれたことの満足感で胸が一杯で喉を通らなかった。

そして、友達にさっそく携帯で出産の報告をし、

お祝いのメールをもらったりしてとても嬉しかった。

その日は夕食もほとんど食べられず、10時の消灯とともに爆睡した。

陣痛は長かったけれど、長かった分、充実感もいっぱいのお産だった。

楽しかった。

終わってみると、心からそう思う。