美奈子

推定22

私とその彼は、お互いなぜか惹かれあうものがあり、
出会ってから付き合うまでは、そう時間がかからなかった。

住んでいるマンションにもよく行ったし、
彼の両親や親戚にも会った。
付き合い始めてすぐに彼が体調を崩して入院したため、
お見舞いに行った時、ご両親に紹介されたのだ。

でも、少しおかしいなと思っていた。
やけに調理器具や調味料の充実しているキッチンだとか、
部屋のインテリアとか、
ご両親のちょっとよそよそしい態度とか。


彼は、ごく普通に私と出会い、
ごく普通に恋に落ち、
ごく普通の恋愛期間を過ごしていました。
でも、ただひとつ違っていたのは、
そう、彼は既婚者だったのです。


隠してたのか!ふざけんな!


とか、当時の私は思わなかったのです。

私はその事実を、彼と付き合い始めて1ヶ月後
奥さんの登場によって知ることになりました。

そうです。

奥様が私と彼の待ち合わせ場所にお越しになったのでございます。

後からわかったことですが、
彼は奥様と離婚を考えており、
奥様はゆっくり考えたいからと、実家に戻っていたのです。

その時期に私は彼と出会い、
お互い予想もしないほど
急展開な盛り上がりで愛し合ってしまったのです。

しかし!

奥様にしてみれば私は、
離婚という二人のデリケートな問題を抱えた大切な時期に
奥様不在の二人の部屋に勝手に上がりこんだ、
ずうずうしい女なのです!

私だって、知らなかったんだよー
などという言い訳は通用しないのです。
ビバ!ワイフ!
奥様は今無敵です!


そんなもの、怒りに震えた人の前では、
嘘にしか聞こえないのです。

もうね、会ったときから奥様は怒り満面です。
平常心を保とうとしているのが余計に怒りに凄みを加え、コワイのです。
もはや私は蛇ににらまれた蛙!
食べるなら、一気にお願いよー!