推定16歳
アキラ君からの手紙


高校に入学してから付き合った、アキラ君からの手紙だ。


手紙の内容によると
私はアキ君が好きで、どうしようもなく好きで、、
アキラ君が、他の女の子が好きになってしまうんじゃないかと心配で、
不安な気持ちを手紙に書いて、彼に渡したらしい。

そのことに対する返事をくれたのだ。

なかなか、いじらしいじゃないか>自分!

しかし、私は今も昔もいらぬ心配の多い女だ・・・。


私とアキラ君は、友達の紹介で出会い、私の一目惚れだった。

男の人に素直になれず、甘えることが出来なかった私が
唯一、素直に接することが出来た家族のような大切な存在だった。

当時から私は、起こってもいないことを不安に思って
心配することがよくあった。
アキラ君とは順調にお付き合いが進み、なんの問題もなく過ごしていたのに、
あまりにも幸せすぎて、その幸せが怖かったのだ。

アキラ君は、本当に私を大切にしてくれていたので
また、そう感じさせることがとても上手だったので
いつか、その幸せはなくなるんじゃないかと不安で怖かった。

私は自分に自信がなかった。
だから、その幸せが自分に見合っていないような気がして、
いつか幸せが壊れた時のショックを和らげようと、
心がその幸せを拒否したのかもしれない。

何度も彼の心を確認してしまう。
好きだといわれても、幸せに過ごしていても、
自信がなくて、相手の心を試してしまう。

自分というものをしっかり持ち、
素直に自分を表現することが、とても難しかった昔の私。
自分らしく生きることが、全く見えなかったあの頃。


私の不安に対してアキラ君は、こんな風に答えてくれている。


美奈子の不安はよくわかる。
俺も同じ気持ちになる時があるから。

でも俺は、美奈子のことが好きだから、美奈子を信じているよ。
俺はずっとずっと、永遠に美奈子を愛し続けるよ
。」



すみませんが、読んでいて大変恥ずかしいですけど!

永遠に」という言葉を安易に使うあたり、若さを感じる。



しかし、残念ながらこの手紙に書いてある永遠は今ない。


アキラ君は今、中学の後輩と結婚し、
1児のパパとして奥さんと子供の人生を抱きしめている。


私たちは、私が20歳の時にお別れすることを決め、
その後、"時々会うイトコのお兄ちゃん"のような感覚で、
友達付き合いが続いている。

家族ぐるみで付き合っていたからか、別れても縁は切れなかったし
お互い切ろうとすることはなかった。
今は完全に、“親戚友達”だ。


私たちは、人として大きく成長する過程に人生を共にした。
だからこそ、お互いの人生において、
互いが大切な思い出、存在になっていることは間違いないが
私たちはあの頃と同じように、お互いを思うことは出来ない。


人の気持ちは絶対に変化するものだ。
気持ちの変化に気がつかず、怠慢に付き合うから永遠の愛は存在しなくなる。

常に相手と向き合うこと。
相手が今、何を感じて、何を大切に思っているのか。

疲れているのか、元気なのか、何を楽しいと思っているのか。
一人でいたいのか、話を聞いて欲しいのか。
離れている時も相手を気遣うことが出来るのか。

相手を見つめること。
相手の心を軽くする言葉を知っていること。

簡単なようだが、
やっぱり続けることは難しい。