辻村はいたずら電話の件で少し緊張がほぐれたのか、
ぽつぽつと話し始めた。
「浪人して以来、悶々とした毎日を送ってました。
以前から女装には興味があって、でもなかなか勇気が出なくて。
ある時、ネットで思いきって女性用のワンピースを買ってみたんです。
それを着たら、なんだかすごく気分が良くなって、勉強のストレスも
吹き飛んだんです。
それから時々女装して・・・・・・。
夜なら目立たないかなと思って、近所を歩いてからアパートに戻った所で
茜さんに会ってしまったんです。
茜さんはすぐに僕だと気付いたようで、でもさほど驚いていませんでした。
その後親しくなったから聞いたんですが、茜さんの大切な人も、
僕と同じなんだと言っていました」
その時、アリスの身体が少し揺れた。
今の話の中に、何か重要なヒントでもあったんだろうか。
辻村は気にせず話し続ける。
「それから、茜さんが撮影で使った服を買い取ったものをくれたり、
いっしょにゴハンを食べに行ったりするようになりました。
白石さんと会ったのも、偶然同じお店で食事したのがきっかけです」
そう言いながらも、辻村はけっして白石専務を見ようとはしない。
白石専務もまた、目を逸らしたまま押し黙っている。
再び気まずい空気が流れたため、オレはどうにかしようと話題を
事件へと戻そうと試みた。
「あの日、倉田さんの部屋に来ていた人に、心当たりは?」
「え・・・・・・う~ん。茜さんはあまり、友達を家に読んだりはしないので。
ただ、もしかしたら話していた大切な人、だったのかもしれないです」
辻村の答えを聞いたアリスが、
「どうしてそう思ったんですか?」
と聞き返した。
「実は、あの日白石さんに会って、本当のことを話すつもりだったんです。
前の日に、そのことを茜さんに相談したら、『白石さんが蒼太くん自身のことを
気に入ってくれているんだったらきっと大丈夫だよ』って。
それから、『私も、大切な人にそう言ってあげようと思ってる』って」
どういうことだろう。
今いちピンとこなかったが、アリスは何か思いついているようで、
妙にスッキリとした表情をしていた。