安曇がそこまでその女の子を好きだったと思うと、
史織の心までもがそのどす黒い感情に
囚われそうになる。
そして気付かされる。
やはり自分はまだ彼のことが好きなのだと ―
ふいに溢れそうになった涙を、史織は必死で
押しとどめた。
「その時にさ、彼女が自分の想いのために誰かを
殺めてしまった気持ちが、少しだけ分かる気が
したんだ。もちろん、すぐにそんな考えは否定した
けど・・・・。
それから、だんだん2人を見ても平気にはなって
きたけど、今度は人を好きになるのが怖くなった。
いつか人を好きになった時、自分も誰かを
傷付けてしまうんじゃないかって・・・・」
そこで安曇はあらためて史織の顔を見つめた。
「だから、君から逃げた」
「収、ちゃん・・・・」
まっすぐに向けられるその眼差しに、史織は混乱
する。
安曇が言わんとしていることを心のどこかで理解
していても、その期待をセーブしようとする気持ちが
はたらく。
史織はただ黙って、安曇の瞳を見つめ返した。
やがて、安曇の唇がゆっくりとひらく。
「君を、これ以上好きになるのが、怖かったんだ」