帰り道 ― 。

「ったく・・・・。なんで走ったりすんだよ」

「えっ。あ、ちょっと・・・・」

勇人に訊かれた一花は、なんと言っていいのか

分からず口ごもる。

心臓はいまだにうるさいほど大きな音を

立てている。

先ほど見た水樹の姿が、何度も何度も頭の中で

フラッシュバックしていた。

少しだけ身長が伸びて、体格もあの時より

がっしりとしていた。

“少年”という表現がぴったりだったあの頃とは

違い、大人の男性の顔になっていた。

自分を見てひどく驚いていたのを思い出し、

胸が痛くなった。

(やっぱり水樹は、私のことなんか忘れちゃって

たのかな。今さら会ったって、困るだけだよね)

考えれば考えるほど、落ち込んでいく。

勇人はそんな一花を見て何かを感じている

ようだったが、それ以上は追求しなかった。

家に帰ると、母が台所から飛んできた。

「一花!学校、どうだった?」

「うん。久しぶりで緊張したけど、友達も出来たし

楽しかったよ」

笑顔で答えると、母は安心したようにホッと深い

息を吐いた。

(お母さんには絶対言えないよね、水樹と

会ったこと・・・・)

それにしても、どうして水樹は高校に来ていた

のだろう。

あの時は動揺して考える余裕などなかったが、

少し冷静になった今、気になって仕方がない。

式の時には見かけなかったので、教師では

ないだろう。

(もし、また会っちゃったら、どうしたらいいの)

あんなに会いたかったはずなのに、いざとなると

恋しさよりも不安のほうが大きくなる。

今の水樹の気持ちは ― 。

それを考えると、一花は怖くてたまらなかった。