最寄り駅を出ると、並木道は満開の桜で
彩られていた。
「綺麗・・・・」
そう呟くと、隣にいた史織も「うんうん」とうなずく。
その時ふいに ―
『桜って、なんか不思議な力持ってそうじゃねぇ?』
頭の中に声が響いた。
『不思議な力?』
『何ていうか・・・・なんか、奇跡を起こしそうな力
っていうか』
『うーん。なんとなく、分かる気がする、かも』
『“かも”かよ・・・・』
『クスクス・・・・』
遠くで、自分の笑い声が聞こえる。
まるで白昼夢を見たような感覚に襲われ、
一花の足が止まった。
少し先を歩いていた勇人が振り返り、心配そうな
表情でこちらに走り寄る。
「一花?大丈夫か?」
「一花ちゃん・・・・?」
史織も心配して、一花の顔をのぞきこむ。
「だい、じょうぶ・・・・。ちょっと立ちくらみしただけ
だから・・・・」
「でも、なんか顔色悪いよ」
額に手を当てて背中を丸める一花に、史織が
そっと寄り添う。
勇人は腕時計に目をやると、
「俺はこいつとゆっくり行くから、高橋は先に行って
遅れるようだったら先生に事情を説明しといてくれ」
史織にそう指示した。
「うん、分かった」
史織は「無理しちゃダメだよ」と一花に優しく声を
かけてから、2人を置いて先に学校へ向かった。
(一花ちゃん、大丈夫かな?)
落ち着かない気持ちで足早に歩いていると、
わき道から出てきた男性とぶつかりそうになる。
「!」
「あっ!すみません」
男性はペコリと頭を下げた。
それから、今史織が向かっているのと同じ方角へ
立ち去った。
(誰だろ?でもけっこうカッコよかったかも)
しばらく男性の姿に目を奪われていた史織は、
自分の状況に気づいて再び学校へ急いだ。