それからの日々はゆるやかに過ぎていった。
自宅で本を読んだりDVDを観たり、たまに外に
散歩に出かけたりしているうちに、肉体的にも
精神的にも落ち着きを取り戻していった。
そうして迎えた4月9日 ―
一花は部屋の姿見の前で、セーラー服の
リボンをキュッと締めた。
今日から再び、高校に通うことになったのだ。
両親は無理して行くことはないと言ってくれたが、
一花自身、どうしてもちゃんと高校を卒業したい
と思った。
新光病院の叶医師の口添えもあって、以前
通っていた高校にまた通えることになった。
玄関先に出ると、すでに勇人(はやと)が来て
待ってくれていた。
「ごめん、待った?」
「別に。今来たとこ」
実は、今日から通う高校には勇人も通っている。
母に同行してもらう予定だったが、勇人の両親が
どうせ同じ学校に通うのならいっしょに行けば
いいのではないかと提案したのだった。
「勇人!お姉ちゃんのこと頼んだよ!」
一花の背後から顔をのぞかせながら、
花音が声を張り上げる。
勇人はうるさそうに顔をしかめ、
「わかってるよ・・・・」
と不機嫌そうに言った。
それから2人で歩き出したものの、なんとなく
気まずい空気が流れる。
ついこの間まで小学生だった勇人の、
大人びた横顔を見上げて複雑な気持ちになる。
「勇人、ゴメンね・・・・。もしかして迷惑だった
んじゃない?」