病室に戻ってきた母から、明日精密検査を
受けることになったとの報告があった。
それから落ち着いたらリハビリも始めるとの
ことだった。
母と花音が帰った後、一花はサイドテーブルに
置かれたカレンダーに目をやる。
今日は2月1日。
事故があったのは、4月10日だと叶は言った。
その日いったい何があったのか。
おぼろげにだが、一花の頭に断片的に
浮かび上がる映像がある。
真夜中、自転車を漕いでどこかへ向かう自分。
点滅する信号と横断歩道。
曲がってきた大きなワンボックスカーが自分に
迫ってくる。
そこまで思い出したところで、ひどい頭痛に
襲われてうずくまった。
だが、はっきりとは思い出せないまでも、
自分がどこに向かっていたか、なぜ夜中に
出かけたのか、見当はついている。
なぜなら、4月10日は一花の誕生日だからだ。
きっと自分はある人に会うために出かけた。
「水樹・・・・」
うずくまったまま、もう会えない恋人の名を呼ぶ。
大人になっていた妹。
少し年老いた母。
自分だけが、何も変わらない。
水樹が恋しくて、会いたくてたまらない。
いつかこの想いも薄れていくのだろうか。
彼が、自分から去っていたように ―