(事情・・・・やっぱり私の身に何か起きたんだ)
その後、医者と母は病室から出て行った。
数分経ってから、今度は母が看護師とともに
やって来た。
看護師はなぜか車椅子を持ってきて
一花のベッドの横につけた。
(何?これに乗れってこと?)
そんなことしなくても自分の足で歩ける。
そう思ってベッドから降りようとした瞬間、
「あっ!」
足に力が入らず膝から崩れ落ちてしまった。
「一花!」
母がかけつけ、そっと身体を支えてくれる。
「遠山さん、無理しないで」
看護師の女性も一花を抱え起こしながら、
ゆっくりと車椅子に座らせた。
(どうして?どうして足が動かないの?)
ショックで頭が混乱して、視界が暗くぼやける。
「とにかく、叶(かのう)先生のお話を
聞きましょう」
看護師はそう言って、車椅子を押してどこかへ
歩き出した。
母も一歩後ろに続く。
連れてこられたのは、病室のあるフロアの一番
奥の部屋だった。
今の一花たちのように、医者が患者やその家族
に病状などの説明をする部屋なのだろうか。
窓から柔らかな日差しが入る部屋には、
真ん中のテーブルをはさんで3人掛けのソファと
2人掛けのソファが向かい合って置かれている。
入って左奥に小さな本棚がすえられていて、
医学書などの本が並んでいた。
観葉植物なども置かれていて、患者がリラックス
して話を聞ける環境がつくられている。
2人掛けソファに座っていたさきほどの医者は
一花たちの姿を見ると立ち上がった。
「どうぞ。お母さんもご一緒に・・・・」
ソファに座るようすすめられ、一花は看護師と
母に手伝ってもらって車椅子からソファへ
座りなおした。
隣に母も腰を降ろす。
看護師は同席しないらしく、そそくさと部屋を
出て行ってしまった。
それを見届けた医者が、深刻な表情で
重い口をひらく。