気が付くと、一花(いちか)は真っ白な世界にいた。
自分以外は何も存在しない、真っ白な空間 ―
歩いても歩いても真っ白な世界が続くだけで、
本当に前に進んでいるのかどうか分からない。
どれだけ歩いただろう。
ふと向こうの方に、光のようなものが見えた。
いったい何の光なのだろうか。
そこに向かうことがいいのか悪いのか、
はっきりとした確信はない。
それでも一花の胸の中では不安よりも希望が
大きくふくらみ、歩く速度が自然と速くなる。
光は近づくほどに強さを増し、まぶしくて目をあけて
いられないくらいだった。
そんな強烈な光を浴びながらも、何かに急かされる
ように前へ前へと進み、やがてその強い光に
身体全体が包まれると同時に、突然意識が
奪われた・・・・
再び意識が戻り目をあけると、白い天井が見えた。
(また、白い世界?)
けれどそうではなく、今度はちゃんとした部屋に
いることが分かる。
そしてここが病室のような所で、自分がベッドに
横になっているということも。
身体がまるで石にでもなったように重く、腕には
点滴の針がささっていた。
(いったい、どうなってるの?)
なぜ自分がこんな状態になっているのか、
皆目見当がつかない。
必死に記憶の糸をたぐりよせようとしたが、
いっこうに何も思い出せなかった。
(誰か ― )
助けを呼ぼうと身体を起こしかけた時、部屋のドア
から誰かが入ってきた。
「・・・・え?・・・・い、一花?」
母が、信じられないという顔でこちらを見つめて
いる。
(おかあ、さん・・・・?)
そう、そこに立っているのは間違いなく母だった。
しかし、一花の心の中で“何かが違う”と
感じている。
何が違う?どこが違う?
漠然とした違和感だけが胸に広がる。