12月24日 ―

街はキラキラしたイルミネーションで彩られ、

幸せそうな人々の顔があちこちにあふれている。

そんな中、暗い顔をしたカップルが1組。

「そろそろ時間、だよな?」

「・・・・うん」

駅前の大きなクリスマスツリーの前で

2人は立ちすくんだまま、時間だけが無情に

過ぎていく。

今日は亮が横浜へと旅立つ日。

雪子はすでにひと足先に向こうに着き、

荷物の整理をしてくれている。

新しい学校の手続きなどの関係で

亮も今日の夕方には東京から出発しなければ

ならない。

そしてそのタイムリミットが目前に迫っていた。

「あ、そうだ!」

何かを思い出したように知晴はコートのポケットを

探ると、1枚の紙切れを取り出した。

「ほら、これ」

知晴からそれを受け取り目を通した亮は、

驚きの声を上げた。

「48位!?知晴、すごい!」

それは、期末テストの結果を記載した用紙だった。

左から順に各教科の点数が記され、一番右側に

学年での順位が載っている。

「だろ?ってことで・・・・」

「うん!絶対同じ大学、行こう!」

知晴が言うより早く、亮が笑顔でうなずいた。

知晴もいつもの明るい笑顔を返す。

その後、再び沈黙がおとずれる中、亮は足元に

置いていたボストンバッグを拾い上げる。

「・・・・じゃあ、そろそろ行くね」

「・・・・ああ」

淋しそうな顔の知晴を見ると、少し胸が痛んだ。

必死に涙をこらえて手を振り、だんだん小さくなる

知晴の姿を瞳に焼きつける。

やがて知晴が見えなくなると、柱の陰に隠れ

思いっきり泣いた。

大丈夫。二度と会えなくなるわけじゃない。

そう思っても、後から後から涙が流れる。

我に返ると、通り過ぎる人たちが怪訝な目で

こちらを見ていることに気付き、恥ずかしさが

こみあげてきた。

ごまかすように、足早にホームへ向かう。

やって来た電車に乗り込み座席に腰を下ろした

亮は、そっと左の手首の腕時計に目をやった。

知晴からのクリスマスプレゼント。

自分は何も用意してないと言うと、

「いいよ。スカート姿の亮が見れただけで

嬉しいから」

知晴はちょっとニヤニヤしながら言った。

(そういえばスカートはいたのって、学園祭の

演劇の時以来かも・・・・)

タータンチェックのスカートのすそをつまみ、

フッと微笑んだ。

(お芝居、けっこう楽しかったな・・・・。

またやってみたいかも)

発車のベルが鳴り、電車がゆっくりと動き出す。

車窓から、流れる景色を見つめながら

亮は心の中で思った。

今度お芝居をする時は、幸せな結末の

ロミオとジュリエットがいいな ―

その時ふと、ロミオとジュリエットの衣装を

まとった知晴と自分が、ガラスの向こうに

見えた気がした。








~END~