亮はその時、学園祭の帰りに小田桐が誰かと
電話で話している姿を思い出した。
あれはもしかしたら、藤原院長からの電話
だったのかもしれない。
「じゃあ、あなたはもう復讐する気持ちはない
んですか?」
久弥が問うと、小田桐はくるりとこちらに
向き直った。
「いえ・・・・。私の復讐は、目前まできています」
その言葉に、亮は久弥を顔を見合わせた。
(どういう意味?)
真意をはかりかねている2人に、小田桐は
こう言った。
「あさって発売の週刊誌に、野神社長が
娘を息子と偽っているという記事が載ります」
「え・・・・」
「なんだって!」
呆然とする亮の横にいた久弥は、小田桐に
近付き彼の胸ぐらをつかむ。
「どういうことだ!?」
「大学時代の友人が出版社につとめていて、
彼に会って亮さんの事をすべて話したんです」
「お前っ・・・・!」
いまにも小田桐に殴りかかりそうになる久弥を
亮は慌てて止めた。
「久弥さん!落ち着いて!」
亮の声で我に返ったのか、久弥は小田桐を
つかんでいた手を放した。
小田桐はまっすぐに亮を見つめ、
「亮さん・・・・。明日中に家を出てください。
マスコミに見つからないよう、どこか安全な
場所に隠れてください」
いつもより強い口調でそう言った。
その目がとても真剣みを帯びているので、
亮は戸惑いながらも小さくうなずく。
小田桐がマスコミにリークしたのは、決して
軽い気持ちからではない。
なぜだかそう信じることができた。
「それならいい場所がある。僕たち家族が
以前住んでいた所がいいと思う。あそこなら
マスコミにもバレないだろうから」
気持ちを落ち着かせるようにしばらく
じっと黙っていた久弥がふいにつぶやいた。
さっきまでの興奮した様子はもう消えていて、
いつもの彼に戻っていた。
久弥の提案を承諾した後、そっと小田桐へ
視線を移すと、彼は悲しそうに微笑んだ。