小田桐は亮に向き直ると、深々と頭を下げた。
「どんな理由があったにせよ、父があなたに
したことは許されないことです。いまさらですが、
父に代わって謝罪します」
「そ、そんな・・・・」
亮は、慌てて顔を上げるように言った。
「悪いのは俺の父です」
しかし小田桐はうなだれたまま、押し黙っている。
そこで久弥が、またしても驚くべきことを
言い出した。
「僕の父は、すべて知っていたんですね」
亮が目を丸くさせて久弥を凝視する。
「院長先生が!?」
「はい・・・・」
久弥の代わりに小田桐が答える。
「事件の後、私は体調を崩した母と母の実家の
近くに引っ越しました。でも、やはり父をあそこまで
追い詰めた野神不動産になんとか復讐したいと。
しかし特に妙案も思いつかず悶々としている時に、
ある居酒屋で藤原病院の院長と会ったんです。
院長は医師の男性とと2人で来ていたのですが、
だいぶ酔っていたらしく話題がだんだんと
野神社長に対する不満へと変わっていきました。
医師はさすがに酒は入っていないようで、院長の
言葉に適当にあいづちを打っている風でした。
半時間ほど過ぎた頃に、多分病院からだと
思うのですが呼び出されたらしく医師は店を出て
行きました。
その後しばらく1人で飲んでいた院長が会計を
すませて店を出ようとしているのを見て、
私は慌ててあとを追いました」
いつの間にかあたりはすっかり闇に包まれ、
公園の入り口にある街灯がぼんやりと灯りを
ともしていた。
冷たい空気に、3人が吐く白い息が浮かぶ。