容疑者の住んでいたところは、亮の家から

さほど遠くない場所にあった。

おそらく工場と家が隣り合わせになっていたの

だと思われたが、すでにそこは野神不動産に

よって駐車場に変えられていた。

辺りも雑居ビルやマンションが建ちならび、

事件当時とはだいぶ様相が変わっていることが

うかがえる。

「まいったなぁ。これじゃ、当時のことを知ってる人

なんて見つからないかもしれないな」

久弥は困った顔で周囲を見回した。

「とにかく、手当たり次第聞いてまわるしかないね」

久弥の提案に亮もうなずき、とりあえず目につく

店や通りすがりの人などに尋ねて歩いた。

そんな中、亮はさきほどの記事を思い出していた。

容疑者の名前は、月村康夫。

当時45歳だった。

年齢はともかく、月村という苗字は知晴とは

全く異なる。

それを知った時、亮は心底ホッとした。

もちろん、知晴に対する疑惑が晴れたわけでは

ないが、それでも可能性はだいぶ薄くなった。

聞き込みを開始して少し経った頃、マンションの

1階にあるコンビニエンスストアの店長から

思わぬ収穫があった。

その店長は数年前まで酒屋を営んでいた

らしいのだが、月村康夫とは近所づきあいが

あったと言うのだ。

店長は商品を棚に補充しながら、久弥の質問に

快く答えてくれた。

「月村さんは本当にいい人でねー。事故のことを

聞いたとき、本当にショックだったよ」

そう言って、悲しそうに目を伏せる。

「あの、その月村さんのご家族は今どちらに?」

「事故の後、奥さんが体調を壊されてね。

確か、息子を連れて実家の近くに引っ越した

はずだよ」

「息子!?」

今まで黙っていた亮が急に大声を出したので、

店長はビックリしていた。

だが、そんなことに構ってはいられない。

「その息子さんの名前、分かりますか?」