亮自身、どうして泣いているのか分からなかった。

ただ、いつも正直で隠し事などないと思っていた

知晴が、急に遠い存在に見えて淋しかった。

(自分は隠し事してるくせに・・・・)

そう自嘲しながら、あふれる涙を拭う。

久弥はしばしそんな亮を優しく見守った後、

いつものように温かい紅茶を淹れてくれた。

「すみません。いつも弱音ばっか吐いちゃって」

亮が謝ると、久弥は静かに首を振った。

「いいよ。亮ちゃんが男だったら、『メソメソして

んじゃねぇ』とか言ってたかもしれないけど、

女の子はそれぐらいしおらしい方が可愛いと

思うよ」

聞き慣れない“可愛い”という単語にくすぐったさを

感じながら、落ち込んでいた心がほんの少し

救われた気がした。

その時。

突然、久弥が何かに気付いたように立ち上がり、

勢いよくドアを開けた。

「どうしたんですか?」

驚いた亮が目を瞬かせる。

久弥は、廊下に出した顔を左右に向けながら、

「いやー、今誰かがここにいたように思えて・・・・」

と確認作業をしながら答える。

が、すぐに戻ってくると安堵の表情を見せた。

「気のせいだったみたいだな」

亮もホッと息をついた。

そして、やはり久弥には先ほどの知晴との

やりとりを話しておこうと思った。

久弥も話題にしたことはないものの、亮の誘拐に

ついては知っているはずだった。

なにせ、今ボディガードをしている小田桐を

亮の父に紹介したのは久弥の父、藤原医院長

だからである。

話を聞き終えた久弥は、うーんと唸って腕組み

したまま考え込んだ。

「どう思いますか?」

亮の探るような視線に対し、久弥は意外な

推測をした。

「もしかしたら、加害者の関係者なのかも

しれないな」

「えっ!?」

「いや、一概にそうだとも言えないけど。

少なくとも永瀬君は野神家とはなんの関係も

ないし、亮ちゃんの周りの人間、例えば

雪子さんとかタエさんがぽろっと誰かに

話したとしても、それが永瀬君の耳に届くとは

考えにくい。だとしたら、加害者側の人間に

よって情報を得た可能性が高いんじゃないかな」

久弥の言葉に、亮は今までにないほどの

大きな衝撃を受けた。