保健室を出てそのまま帰ろうとして、
鞄を教室に忘れてしまったことに気付く。
さすがに知晴ももう帰ってしまっているだろうと
思ったのだが、知晴はまだ教室に残っていた。
「あ・・・・」
亮の姿を見た知晴は、バツが悪そうに
ゆっくりと立ち上がった。
亮の方もどういう態度をとっていいか分からず、
黙って立ち尽くすしかなかった。
先に沈黙を破ったのは、知晴だった。
「ごめん!」
そう言うと、亮に向かって深々と頭を下げる。
「俺が勝手なこと言ったせいで、亮に迷惑
かけちゃって・・・・。本当にごめん」
心底すまないという風にうなだれる知晴を見て、
亮は泣きたい気持ちになった。
知晴は全然悪くないのに。
全ては亮のせいなのに。
それなのに知晴は、どうしてここまで優しくして
くれるのだろう。
「もう、いいよ、知晴・・・・」
涙をこらえながら、亮はそっと知晴のそばに近寄り
声をかけた。
「知晴の言ってることは、正しいと思う。
俺たちが嫌がれば嫌がるほど、真堀が喜ぶだけ
だもんな」
ゆっくりと顔を上げた知晴は、少し驚いた顔を
していた。
「許してくれるのか?」
「許すも許さないも、悪いのは俺だから」
「や、でも・・・・」
「いいから!」
まだ何か言いかける知晴の言葉をさえぎり、
亮はできるだけ明るい表情をつくった。
「学園祭、頑張ろう」
そう言うと、知晴にやっといつもの笑顔が戻った。
「おお!真堀が引くぐらい、すげぇ舞台にしようぜ」
さっきまでのしょんぼりした態度はどこへやらという
感じで、元気いっぱいに意気込む知晴に、
亮は思わず笑ってしまった。
しかしその笑顔はすぐに曇ってしまう。
知晴は幸いそんな亮には気付いていないようで、
「じゃ、帰るか」
と言って先に歩き出す。
知晴の背中を見つめながら、亮はある決心を
していた。
このままでは、知晴の高校生活は亮とともに
いじめられるだけになってしまう。
知晴は本当はもっと楽しい学園生活が
送れるはずなのに。
だから ―
学園祭が終わったら、知晴を解放する。