一見無表情な父ではあったが、その瞳に
やや不機嫌さを含んでいることに気付く。
「今日、常秀学園の理事長から電話があって
昂生が来週から編入することになったらしい」
「えっ!!」
驚いた亮が、思わず声を上げる。
さっきここに訪れた時は、そのようなことは
何も言ってなかった。
「あいつ、いつ日本に戻ってきたのか知らないが
わざわざお前の通う高校に編入するなどと
厄介な真似をしおって・・・・」
苛立ちを隠せない父に対し、亮はただ黙って
うつむく。
昂生の帰国を知っていたという後ろめたさと、
父が昂生を毛嫌いすることに対する反発が
心中に渦巻いている。
昂生は、たまに手を焼くことはあるが、
決して悪い奴ではない。
父はただ、弟への嫌悪に息子の昂生を
巻き込んでいるだけなのである。
「とにかく、あいつに気付かれるようなヘマは
するんじゃないぞ」
それだけ言うと、父は亮の返事を待たずに
その場を立ち去った。
(あの人は、いつもそう・・・・)
自分の主張だけを人に押し付けて、相手が
どう思うかなんてちっとも考えてやしない。
亮は、握った拳にグッと力を込めた。
物心がついた時から、父に対する感情は
憎しみだけであった。