野神邸に到着すると、小田桐は亮を降ろしてから

車を車庫へと納めた。

それから屋敷の入り口に設置されたセキュリティー

システムに暗証番号を入力すると、ガチャリと

音がして門がゆっくりと開いた。

暗証番号は週に1度変更され、その番号は

両親と亮、そして小田桐にしか知らされない。

つまり、身内以外で知っているのは小田桐ただ

1人ということになる。

正直言って、亮はどうしてそれほどまでに

父が小田桐を信用するのか分からなかった。

10年前、突然彼を雇い、それからずっと亮の

警護を任せっきりにしている。

確かに彼は内密にしなければいけないことを

ベラベラとしゃべるタイプではないが、それでも

この男にそれほどまで信頼を寄せる理由が

気になって仕方がなかった。

思わずじっと小田桐を見つめていると、彼が

少しだけ不思議そうな顔でこちらを見つめ返した。

驚いた亮は、慌てて目を逸らす。

その時 ―

「亮」

背後から誰かが自分を呼ぶ声がした。

瞬時に小田桐が亮の背中に回り、かばうような

態勢をとる。

「やだなぁ、そんなに警戒しなくても大丈夫だって。

俺、いちおう身内だよ?」

苦笑いを浮かべるその少年に、亮は小さく

話しかけた。

「・・・・もしかして、昂生(こうせい)?」

「もしかしなくても、そうだよ」

少年はニコッと笑うと、ゆっくりと亮に近づく。