知晴と出会ったのは常秀学園に入学して

すぐのことだった。

“野神”と“永瀬”で前後の席になったことが

きっかけのひとつでもあるが、

本当に親しくなったのはもっとずっと後の話である。

知晴は明るく気さくな性格で

クラスの皆ともすぐに打ち解けた。

そんな知晴は亮にも積極的に話しかけてきたが

自分の正体を知られることを恐れていた亮は

彼に対してそっけない態度ばかりとっていた。

しかし知晴は気分を害する様子もなく、

いつも笑顔で接してきた。

当初は高校生活で友人をつくる気などなかった

亮だが、彼の人柄を知るうちに彼に対する

警戒心が少しずつ和らいでいった。

そんな中、今日のように貧血で倒れてしまった亮を

知晴が保健室に運んでくれたことがあった。

その時、大げさなくらい亮を心配する知晴の姿に、

亮は初めて友人という存在の温かみを感じた。

それ以来、何かにつけて自分のことを気にかけて

くれる知晴に、いつのまにか心の鎖が解けていき、

いまでは親友と呼べる存在へと変わった。

しかし、知晴と親しくなればなるほど、男だと

偽っていること対する罪悪感が重くのしかかる。

このまま、知晴に本当の事を黙っていていいのか

どうか。

極力考えないようにはしているものの、

彼の優しさに触れるたびに胸が痛む。

亮たちが自分たちの教室に戻ると、クラスメイトが

無遠慮な視線を投げかけてきた。

「見学しててもぶっ倒れるって、どんだけ身体

弱いんだよ」

どこからか、嘲笑まじりの言葉が聞こえる。

無愛想な亮の態度に、クラスメイトたちはあまり

良い印象を持っていない。

そのうえ亮の家が日本でも指折りの資産家だと

知ると、彼らはいっそう反発を強めた。

「そんなに身体弱いんだったらさ、家で家庭教師に

勉強教えてもらってれば?」

また誰かが挑発的な言葉を吐いた。

その言葉を聞いた知晴が、1歩前に進み出る。

「やめろよ・・・・」