~鬼の子~ 第六話
「あれ?もしかして転校生?」
少年は人懐っこい笑顔を浮かべ、千波に問いかける。
うなずいて見せると、彼はこちらに身体を寄せてきた。
「ねえねえ。名前は?」
白石龍馬は千波のことを知っている風だったが、この
少年はそうではないらしい。
噂になっているというのは、嘘だったのだろうか。
「黒澤千波です」
そう名乗ると、少年はまたキラキラとした瞳で微笑んだ。
「千波ちゃんかぁ。可愛い名前だね。あ、オレは
安曇収(あずみしゅう)。よろしくね!」
少年のあまりのフレンドリーな態度に気後れしつつも、
千波も「よろしく」と応えた。
放課後 ―
クラスメイトの誰よりも早く教室を出て行く詠士を慌てて
追いかける。
「こ、古森くん・・・・」
あっという間に小さくなっていく背中に言葉をかけると、
詠士はゆっくりと振り向き驚いた顔をした。
そして、
「俺に話しかけるな」
と言って鋭い視線を向けたと思うと、早足で去っていく。
千波はその姿をただ呆然と見つめるしかなかった。
「・・・・なによ。・・・・なんなのよ」
今度は本当に瞳から涙がこぼれてきた。
皆が注目していることに気づいていたが、千波は涙を
止めることができなかった。
すると、ふいに誰かに後ろから肩を叩かれる。
誰か確認しようと後方へと顔を上げると、1人の女生徒
が立っていた。
ロングヘアですらりと背の高い、なかなかの美少女
である。
「気にすることないよ」
少女は優しい声で千波にそう言った。
「あいつ、誰にでもあんなだし。それに多分今のは・・・・」
そう言いかけて止めると、スカートのポケットからハンカチ
を取り出して千波に差し出した。
「私、あなたと同じクラスの武部静香(たけべしずか)。
ねえ、よかったら一緒に帰らない?」
静香という少女の誘いに、千波はこくんとうなずいた。
生徒たちの好奇の目から逃げ出したいという気持ちも
あったし、静香ともっと話をしてみたいという気持ちも
あったからである。
校門を出るまで、2人は黙って歩いた。
学校から少し離れた頃、千波は静香に思い切って
尋ねてみた。
「あの、どうして古森君は皆から避けられてるの?」
静香は一瞬困惑した表情になった後、こう答えた。
「それは・・・・あいつが鬼の子だからよ」