少し、疲れてしまったようだ。

 

妻と子供と笑いながら仲良く暮らしたい。

ただそれだけが望みだったはずなのに。

 

出産後に豹変する妻に罵倒され、心を病んで、それを理由に妻に捨てられ、子供を連れて行かれ、残った自分という存在は一体何という残骸だろうか。最愛の人に敵だと言われ全てを壊されて、今後何を信じて生きていけばいいんだろう。

 

子供が半年で離婚って、人に言ったら絶対浮気とかギャンブルって思われるんだろうな。この前、正直に言ったら「デキ婚?」と言われた。正直に理由を言ったけど懐疑的な顔をされた。まさか服を畳まなかったから離婚されたなんて言っても誰も信じないよね(それだけではないけれど)出産前はめちゃくちゃ仲が良かったなんて言っても信じないよね。

 

本音を言えば、やり直したい気持ちはあると思う。でも、既に当人同士の問題を超えて親同士もいがみ合っている。そもそも、相手は自分の事を憎んでいるだろうし、そんな気持ちを持っているのは自分だけで、両家の誰もが離婚に賛成だ。

 

夢想する。まだアパートは解約して無くて、家に帰れば妻と子供が笑いながら出迎えてくれる。俺が見たのはギリギリ寝返りまでで、はいはい、つかまり立ちは見れなかった。初めて歩くところ見たかったな。初めてお父さんって呼んでくれる日を楽しみにしてたな。子供の成長という喜びを妻と分かち合いたかった。

 

妻が家を出ていってから、心の何処かでいつも期待していた。妻が「やり直すつもりはあるの?」「私も悪かったから、もう1度やり直したい」そんなありえない言葉を期待していたが、妻の行動や言動はいつも辛辣なものだった。今でも妻と話したいと思うが、もうそれが許される状況ではない。

 

これから先、俺はどんな人生を歩むんだろう。実家の父も母もずっと元気なわけじゃない。これから先の俺の人生に意味があるんだろうか。俺という存在は誰にも認知されること無く、ひっそりと消えていくんだろうか。考えてみれば、俺らしい似合いの最後かもしれない。オレという存在は、そもそもそういうものだ。だからこそ、自分を理解してくれる妻に出会えて、結婚して、子供が生まれて、夢みたいに嬉しかった。自分みたいな男に人並みの幸せが訪れたんだと信じられなかった。

 

もしこれから先に良縁に恵まれ再婚したとして、それは本当に俺が望んだ未来なんだろうか?望んだ世界の代替えでしかないんじゃないか?それでは心は満たされない。俺は今の妻と子供と生活をする事を何よりも望んでいた。それに今回の件で結婚、出産、子育てというものに恐怖を抱いた。どんなに仲が良くても何かのきっかけで簡単に壊れるし、壊れてしまえばあっけないものだ。

 

臭いセリフだけど永遠の愛なんてものはない。その時に、そう言う気持ちなだけだ。世界で1番大切な存在だと言っても、後々気持ちが変われば簡単に言葉を翻すし相手を罵倒するし離婚だってする。そんな雲みたいな曖昧なものを信じれば手痛いしっぺ返しを食らう。わたあめみたいな雲の甘さを忘れられずに生涯苦しむ。愛を継続するのは至難の業だ。

 

考えてみれば、元々俺は愛なんてものは信じてなかった。だけど、妻と知り合って、この人と生涯を共にしたいと思って結婚した。妻も同じ気持ちだと思っていたが、そうではなかったようだ。妻は仲が良い時は一緒にいても良いと思ってくれていたが、仲違いをすれば別れても良いと思っていた。俺にとっての妻より、妻にとっての俺は軽かった。

 

夫婦なんて言っても所詮は他人でしか無い。そんなものに何を信じれば良いんだろう?何を信じたら良いんだろう?そう、俺は妻に期待し過ぎていたのかもしれない。夫婦なんだから、自分が弱った時は正直に言ってもいいんだと思っていた。違ったんだ。妻には体調不良を悟られてはいけなかったんだ。俺は常に元気で、妻の望む理想の俺でなくてはいけなかったんだ。

 

出来る限りそうであろうとしたけれど、無理がいつまでも続くわけもなく、心が壊れてしまった。その時の妻の言葉は「そんなに弱いなら結婚しなかった」「なんでそんなに弱々しいの?」「(謝る俺に対して)このおーーー!(と言って俺に拳を振り上げる)」「本気で殴るわけ無いじゃん。イライラしただけ。」「この前の姿を見たらドン引きしたわ」「(体調不良を訴える俺に対して)今日は休んでいていいけど、明日もそうだったら許さないからね。」「病気の人とは一緒に生活できない!!」だった。これだけ書けばひどい妻かもしれないけれど、その10倍は優しい妻の記憶だ。思い出の写真もたくさんある。その記憶が俺を蝕む。

 

いずれにせよ、終わりは近い。その時、俺は何を思うんだろう。どんな選択をするんだろう。