製造後60年前後経過した

古いピアノの部品交換をする場合、

問題点がいくつか出てきます。

 

特に木製のアクションレールを有した

個体の場合はそれが顕著です。

 

先日コンプリートした

イースタインの鍵盤に使われていた

厚みやサイズ違いのクロスもその一つ。

 

現在行っている

カール・ハートというピアノも

いくつか問題点に直面しています。

 

ピアノのエンジン部分であるアクションは

消耗部品の集合体といえ、

古くなればそれだけ

交換が必要な部品も多くなります。

 

長年使用していない場合も

経年劣化はあります。

使われている革やクロスは硬化し、

金属系のパーツも

金属疲労は避けられません。

 

ここのクロスは同じ厚みのモノを使えばいい。

 

ダンパーに使われている

クロス系のパーツは

厚みや素材が異なることが

多々ありますが

それほど大きな問題ではありません。

 

ここのクロスに革が使われていることがたまにある。

古い接着剤は必ずキレイに除去します。

 

 

現時点で問題は2箇所で

一つがウィペンヒールクロスという

鍵盤に一番最初に触れるパーツです。

 

そのクロスが現行のものと

異なる素材と厚みのものが使われている。

 

現行のクロスは厚みが3ミリなのですが、

このピアノのは5ミリ近いモノが使われてます。

しかもかなり長い。

長いのはカットすればいいのですが、

この分厚いクロスを取り外して

キレイに均すのがなかなか大変。

 

 

ぼっこり凹んだクロス。

 

通常このクロスは蒸気を当て

接着剤を溶かして除去するのですが、

この厚みなので蒸気を長く当ててると

諸問題が生じます。

ですのでカッターでカットします。

 

 

がこの残ったクロスを

キレイに取り除く必要があり、

これが通常のクロスと

比べ物にならにくらい時間がかかるアセアセ

 

どうやって取り除くのかは

人によってやり方が違うと思います。

僕のやり方はというと、

企業秘密ですw

って大したことでなく地道でオーソドックス

かつプリミティブな方法です。

 

本体側にかなりバッチリ残ります。

ここまでキレイに取り除く必要があります。

 

 

もう一つ直面している問題が

なかなか厄介です。

 

ジャックスプリングというパーツです。

アップライトピアノには

グランドピアノに使われていない

金属系のスプリングパーツがいくつかあり

そのうちの一つです。

 

簡単にいうとアップライトピアノの

タッチに関するハンディキャップを

補うパーツです。

 

このパーツは

一見問題ないように見えるようでも

50〜60年も経過すると

必ず金属疲労でバネ力が弱まります。

新旧二つのバネを並べて

指で軽く押してみるとその差は歴然です。

この差がタッチにすごく影響があるため、

UPの場合とても重要な役割を担っているのです。

 

ところが、

メンテナンス済みの中古ピアノでも

ここを交換していない場合が

なぜかすごく多いんです┐(´д`)┌

 

ジャックスプリング

 

でこのスプリングを交換する場合は

当然古いスプリングをまず取り除きます。

 

比較的簡単に取り除けるパーツです。

 

取り除くとこうなります。

 

汚いですが最終的に全部キレイにします。

 

 

で古い接着剤などを

キレイに取り除くとこうなります。

 

 

 

で何が問題かというと、

これもサイズです。

 

アッセンブリ本体側の

パーツをセットするための穴径が

小さ過ぎるのです。

この大きでは現行手に入る

新しいスプリングが

物理的に入りません。

 

小さいサイズの在庫は

もうかなり前に全部使ってしまい

今は手に入りません。

 

じゃどうするかというと

新しいサイズのスプリング径に合うように

削って穴の径を大きくするしか

方法はありません。

 

 

 

新しいスプリングに合うドリルで削る。

 

削って穴のサイズを拡げる。

 

ちなみにこれは真ん中の

丸いガイド役の木も削るパターン。

 

上がビフォーで下がアフター。

これで現行品が入ります。

 

 

下の写真は

真ん中のガイド役の木を

残すパターン

 

 

上がビフォーで下がアフター。

 

木が柔らかい場合はガイドごと削り

木が硬い場合は

ガイドの木を残すことが多いです。

 

ちなみに最近のピアノは

このガイド役の木がない場合が多い。

このガイドは何気に便利です。

 

すっぽり入るようになりました。

 

 

ここまで大きくしてやっと入ります。

これを88個やらなければなりませんアセアセ

 

ここはとても神経を使う場所なので

ガンガンやるわけにもいかず...

 

小さい径に合うスプリングの在庫をお持ちの方

もしいらしたらお売りくださいませませm(_ _)m

 

 

というわけで、

このような問題が発生すると作業時間は

数倍かかることになるわけです。

まあ古いピアノを直すためには

仕方ないことです。

 

 

 

 

 

今日も僕のブログを読んでくれてありがとうございましたm(__)m

 

OTO

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