ワグナーメンテナンスは続くよ

どこまでも。。

 

ということで非効率的な世界に

どっぷりと浸かる工程に入っております。

 

来る日も来る日も

まったく同じ作業の連続となっております。

長い階段を1段目から遥か上の方を

眺めるようなかんじでしょうか。

 

過去にも何度か書いていることですが、

ピアノメンテナンスのヘビーな部分は

交換しようとする部品のほぼ全てが

88個=鍵盤の数

あるということです。

 

例外は音を止めたり解放したりする

ダンパーというアッセンブリで

それは大体70個前後と少し少なめです。

 

弦と密着しているダンパーフェルトは意外と丈夫で

交換する頻度としては少ない部類です。

 

ダンパーフェルトは虫食い被害さえなければかなり持ちます。

 

ダンパーで交換することが多いのはクロス類です。

 

このワグナーはクロスでなく珍しく革が使われていた。

スプリングが擦れる部分に穴が開きかかってます。

剥がした後は古い接着剤をキレイに取り除く必要がある。

 

今回は革でなく耐久性のあるクロスを使います。

ダンパーレバークロスも交換頻度は高い。

 

 

ダンパーアッセンブリには他にも

スプリングやセンターピンといったパーツが

ダンパーの数分だけ使われているのですが、

交換頻度としてはそれほど多くない部類です。

 

 

ダンパースプリングを交換しない場合はこの部分を必ず磨きます。

 

ダンパーで交換頻度として高いのは

上記2種類のクロス類です。

それを70個×2=140個交換します。

 

アップライトピアノの場合、

ウィペンというアッセンブリには

センターピンが2箇所使われています。

これを全て交換すると

88個×2=176個となります。

 

 

ちなみにこの動画のように

ジャックを動かしキィキィ雑音がする場合、

潤滑剤を使って雑音が消えたとしても

結果ジャック自体の動きが速すぎる場合は

センターピンを交換する必要があります。

ブー

 

新しいピンに交換して

ジャックの動きを確認し

ゆっくり動くレベルになれば

ピンをカットします。

OK

 

 

このスプリングを交換する場合も

もれなく88個あります。

※85鍵盤の場合は85個。

 

スプリング系は経年劣化で交換する場合は

"バネ感"を均一にする必要があるため

基本的に88個すべて交換するのがセオリーです。

 

 

60年以上経過している個体なの金属疲労によりでさすがにバネ力は弱まる。

ガチガチに固まった接着剤を取り除くのが一番大変な作業アセアセ

唯一救いなのは古い個体の場合

スプリングをセットしやすい形状になっているものがある。

この形状だと新しいスプリングを一発で真っ直ぐにセットでき、かつ倒れにくいOK

 

 

ウィペン2箇所のセンターピンを交換する場合は

前後金属部の磨き作業効率は格段に上がる。

 

ちなみにこのスプーンもほとんど交換の必要がないもの。

キラキラ

 

ハンマーアッセンブリに使われている

バットスプリングは僕の場合

大掛かりなメンテナンスの時は

必ず交換するようにしています。

これも88個あります。

 

バットフレンジのセンターピンも

88個あります。

 

 

鍵盤の連打性(戻り)をサポートする

ブライドルテープは劣化すると

外す時このように先端のチップが破れます。

今回は劣化度が激しくテープ側も破れた..

 

このテープも88個あります。

 

 

どのパーツも大切なものですが、

特にセンターピンは

アクションを円滑に動かす

という意味において

特に大切な要の部分になります。

 

新しいセンターピンはこの出っ張った部分をカットします。

 

 

 

ハンマーが弦を打って深く入った溝を

ヤスリで削るファイリングという作業も

もちろん88個やります。

 

低音2本弦の弦溝。右三つはアフター。

 

 

このファイリングは削るだけでなく

ハンマーをアイロンで熱したり

硬くなったハンマーを針で刺したりと

やることが何気に多い工程です。

これもハンマー各88個分

2度=176回繰り返します。

 

 

 

今回は交換しませんが

この革製のパーツも

交換する場合は2箇所あるので

88個=176個交換します。

 

 

 

また鍵盤に使われている

ブッシングクロス交換の場合は

1鍵盤につき2箇所クロスが使われているので

88個×2=176個交換します。

 

この鍵盤ブッシングクロス交換は

クロス交換の中でも手間がかかる部類。

 

※写真は過去の仕事からのものでワグナーのではありません。

 

 

とにかく何が言いたいのかというと

ピアノのメンテナンス代は

ほぼほぼ手間代ということです。

 

かつてないほど

部品代も高騰しているのは事実ですが

技術代や部品代というより

これはもう間違いなく手間代なのです。

 

部品交換自体の技術は

もちろんそれなりの経験は必要ですが

慣れれば特段威張るほど難しいことを

行なっているわけではありません。

必要なのは忍耐と情熱でしょうか

アクションの調整や

キレイに弦を調律するほうが

よほど難しいです。

 

とにかくこの各々88個との

戦いなわけで、

その金額といっても

過言ではありません。

 

各工房によって

ピアノメンテナンスや

部品交換の料金に大きな差があるのは

その手間を各技術者がどう考えているか、

とうことなんだと思います。

 

手間というのは

違う言い方をすれば"時間"です。

自分の時間を人にどれだけ

リーズナブルに提供できるか

その考え方の違い、

ということです。

 

 

 

 

 

今日も僕のブログを読んでくれてありがとうございましたm(__)m

 

OTO

工房

古いピアノの修理

メンテナンスのご相談はこちらからどうぞ